コロナ禍で生まれたニーズと潮流。北欧『Design Matters』の議論

コロナ禍で生まれたニーズと潮流。北欧『Design Matters』の議論

2021/11/26
テキスト
ジョージア・ロンバルド
編集:柏木良介 リードテキスト・編集:後藤美波

北欧のデザイントレンド。パンデミックによる社会の変化をどう反映している?

アースカラーと天然素材、自然回帰

最後に、北欧にフォーカスして現在のデザイントレンドを見ていきましょう。パンデミックによって北欧の人々の多くは自宅で過ごす時間が増え、自然とのつながりを再発見する機会も増えました。このような自然回帰は家具やインテリアデザイン、ファッションだけでなく、これらの製品を販売するアプリやウェブサイトのUIに至るまで、数多く見られるようになりました。

アースブラウン、ベージュ、ナチュラルクレイ、落ち着いたサーモンピンクなどのナチュラルカラーと、木、土、布、植物繊維などの天然素材を使用していることがこのトレンドの特徴です。自然の要素を自宅やデジタルインターフェースに採り入れることで、北欧の人々は自然とのつながりとスタイリッシュな外観を両立させています。UIでは自然の色合いと幾何学模様の組み合わせを目にすることが多く、インテリアブランドのBolia、Ferm LIVING、Louis Poulsen、Muutoはその好例です。

プロダクトにおける「自然回帰トレンド」
プロダクトにおける「自然回帰トレンド」
ウェブデザインにおける「自然回帰トレンド」
ウェブデザインにおける「自然回帰トレンド」

サステナビリティーのためのデザイン

自然回帰のトレンドと同様の考えで、サステナビリティーを意識したデザインの傾向も強まっています。北欧ではリサイクルショップやフリーマーケットはとても人気があります。古着の売買を手がけるアプリやオンラインショップもたくさんあり、スウェーデンのSellpyやTradera、デンマークのTrendsalesはその代表例です。デンマークで開発されたRewearitはユーザー同士の古着の貸し借りを可能にするアプリです。ほかにも、食品ロスを防ぐアプリの人気も高まっており、TooGoodToGoやEat Grim、Simple Feast、Karma Lifeなどがあります。

服の貸し借りをできるデンマークのアプリ「Rewearit」
服の貸し借りをできるデンマークのアプリ「Rewearit」
食品ロスを防ぐアプリも北欧では人気
食品ロスを防ぐアプリも北欧では人気

フィンテック企業のUIに見る美的なミニマリズム

北欧のデザインは清潔感のあるミニマルなアプローチに定評があり、シンプルなラインと光の空間を重視しつつ機能性と美しさを併せ持っています。このミニマリズムは多くの北欧フィンテック企業の最新UIに顕著に現れています。金融取引は重要な問題で、ましてやパンデミックのために予測がつかない状況においてはなおさらです。混乱のもとを徹底的に排除することは、誤解を招くリスクを最小限に抑えながらメッセージを伝える賢明な手段となるのです。Pleo、Klarna、Lunar、Anyfinはその好例です。

 
フィンテック企業のウェブサイト、UIデザイン例
フィンテック企業のウェブサイト、UIデザイン例

生々しく飾り気のなさを装うブルータリズム

ブルータリズムは1950年代に出現した建築様式です。一般的に、荒々しさを残した打ちっぱなしのコンクリート、奇抜な形、重厚感のある素材、まっすぐなライン、そして小さな窓が特徴です。ブルータリズムは機能主義とシンプルさを大切にする思想から生まれた運動で、戦後の復興が求められた世界に受け入れられていきました。

現在のデジタルデザインにおけるブルータリズムは、生々しさ、無作為、飾り気のなさを意図的に装うスタイルです。建築物でもデジタルデザインでも、ブルータリズムは人工物や軽薄さに対する反動を表現しているため、パンデミックの最中やパンデミック後にこのトレンドに新たな人気が出るのも不思議ではありません。GANNIやAcne Studioなどの北欧のファッションブランドや、広告制作会社、コンサート会場、保険会社のウェブサイトなどにも数多く見られます。

ブルータリズム的なウェブデザイン例
ブルータリズム的なウェブデザイン例
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イベント情報

『Design Matters』

Design Matters(デザイン マターズ)はコペンハーゲンで毎年開催される「デザイナーによる、デザイナーのための」デザインのカンファレンス。2015年に始まって以来、世界中からデザイナーが集まり、デザインに関する動向を共有するだけでなく、インスピレーションを与える場として発展してきた。来場者は年を追うごとに増え続け、2019年には1,000人ほどのデザイナーがコペンハーゲンに集まった。

プロフィール

ジョージア・ロンバルド
ジョージア・ロンバルド

『Design Matters』コミュニケーション部門責任者。デンマーク・コペンハーゲンを拠点に、ブランディング、デザイン、戦略の領域を行き来してコンテンツを制作。イタリア・ヴェネチア出身で、日本学の学位と経営学の修士号を持つ。デザインとテキストおよびビジュアルでのコミュニケーションへの情熱からキャリアを歩んできた。
豆知識:これまでに6か国に住み、「ONEコンドーム」のデザインコンテストで5回受賞経験がある。おしゃべりなブリティッシュショートヘアの猫を飼っている。

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