コロナ禍で生まれたニーズと潮流。北欧『Design Matters』の議論

コロナ禍で生まれたニーズと潮流。北欧『Design Matters』の議論

2021/11/26
テキスト
ジョージア・ロンバルド
編集:柏木良介 リードテキスト・編集:後藤美波

リモートによる共同作業のニーズが高まる。3Dデザインプラットフォーム「Gravity Sketch」の急成長

オルワセイ・ソサンヤ氏がCEO兼共同創業者を務めるGravity Sketchは、直感的に操作できる3Dデザインプラットフォームです。Gravity Sketchを使えば、複数の異なる分野からなるチームがさまざまなデジタルツールを駆使してVR(仮想現実)で創作活動を行なったり、コラボレーションしたり、プロジェクトを見直したりすることができます。『Design Matters 21』で同氏は、パンデミック中いかにコネクティビティー(ネットワークによって互いにつながっていること、接続のしやすさ)とリモートコラボレーションへのニーズが高まったかについて論じました。

実際、ユーザーはすでに普及していたFigma(デザインツール)のようなコラボレーションツールを使いこなせるようになると、自宅でも効率よく作業を続けるために、より多くのことを求めるようになります。製品、輸送、エンターテインメントなどに携わる3Dデザイナーはその傾向が顕著で、空間を共有して協働できる手段を必要としています。Gravity Sketchがこの2年間に目覚ましい成長を遂げ、2020年だけで370万ドルの資金を調達することができた理由はここにあります。

Gravity Sketchイメージビジュアル
Gravity Sketchイメージビジュアル

パンデミックの影響で、デザインチームや技術チームを世界中に分散させて成長している多国籍企業が急増しています。こうした企業は全員が同じ場所で勤務していた頃と変わらない精度を実現するためにコネクティビティーを維持する必要があります。Gravity Sketchのようなツールが可能にする、質の高い、分散化された働き方は、デザイン会社が今後のビジネスで成功を収めるうえで絶好の手段となるでしょう。

問われる新しい働き方や労働倫理。Dropboxによる「バーチャル・ファースト」の試み

オンラインホワイトボードを提供するMiroのデザイン部門責任者ヴラド・ゼリー氏は、パンデミックによって、使用するツールやプロセスばかりでなく労働倫理も再定義されていると力説しました。

MiroやZoom、Slack、Googleドキュメントなど、私たちはこれまでよりはるかに多くのツールやアプリ、プラットフォームに依存するようになりました。このことは、ビデオ会議疲れやデジタル・バーンアウト(燃え尽き症候群)、意欲低下を招き、手順の煩雑化や生産性の低下につながります。企業やチームは絶えず変化する新しい環境にどのように適応すればいいのでしょうか? 労働慣習を再設計し、将来に備えて十分なレジリエンスを確保するには何をすべきでしょうか?

Miroはコラボレーション用のオンラインホワイトボードサービス

Dropboxのエグゼクティブ・エディトリアル・ディレクターのティファニー・ジョーンズ・ブラウン氏は、パンデミックを受けて同社はバーチャル・ファーストに舵を切り、チームの働き方を抜本的に改めたと語りました。

現在Dropboxの社員はリモートワークが基本。そのシステム化にあたって同社は、社内調査を実施し、リモートワークのポリシーに関する、以下の5つの目標を設定しました。

―企業のミッションを支える
―社員が自由かつ柔軟に働けるようにする
―人間的なつながりと企業文化を守る
―企業の健全性を長期的に維持する
―学ぶ姿勢を持ち続ける

従来の働き方との違いの1つは、個人が働きやすい時間帯に業務を行なう「ノンリニア」就業日を採用した点です。複数のタイムゾーンが重なる時間帯をコア・コラボレーションの時間に設定し、それ以外の時間帯は各従業員が自分でスケジューリングするよう推奨しています。

このように設定することにより、異なるタイムゾーン間で柔軟性が高まり、「コラボレーションの時間」と「個人の業務に集中する時間」とのバランスが取りやすくなります。Dropboxは従業員がより適切に時間を管理し、健康を保ちながら、バーチャル環境でより効果的にコミュニケーションを取れるよう、「バーチャル・ファースト・ツールキット」というガイドも作成しました。

Dropboxの「バーチャル・ファースト・ツールキット」。時間管理の仕方を解説
Dropboxの「バーチャル・ファースト・ツールキット」。時間管理の仕方を解説(サイトで見る
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イベント情報

『Design Matters』

Design Matters(デザイン マターズ)はコペンハーゲンで毎年開催される「デザイナーによる、デザイナーのための」デザインのカンファレンス。2015年に始まって以来、世界中からデザイナーが集まり、デザインに関する動向を共有するだけでなく、インスピレーションを与える場として発展してきた。来場者は年を追うごとに増え続け、2019年には1,000人ほどのデザイナーがコペンハーゲンに集まった。

プロフィール

ジョージア・ロンバルド
ジョージア・ロンバルド

『Design Matters』コミュニケーション部門責任者。デンマーク・コペンハーゲンを拠点に、ブランディング、デザイン、戦略の領域を行き来してコンテンツを制作。イタリア・ヴェネチア出身で、日本学の学位と経営学の修士号を持つ。デザインとテキストおよびビジュアルでのコミュニケーションへの情熱からキャリアを歩んできた。
豆知識:これまでに6か国に住み、「ONEコンドーム」のデザインコンテストで5回受賞経験がある。おしゃべりなブリティッシュショートヘアの猫を飼っている。

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