Teenage Engineering OP-1のシンセ革命 10周年を機に考える

Teenage Engineering OP-1のシンセ革命 10周年を機に考える

2021/12/03
テキスト・編集
山元翔一
イラスト:ケント・マエダヴィッチ 取材協力:三船雅也(ROTH BART BARON)、Kuro(TAMTAM)

ビョークやAviciiら世界的音楽家だけでなく、優れた電子楽器メーカーも輩出する北欧諸国

Teenage Engineeringを輩出した北欧とエレクトロニックミュージックのあいだには、長く、そして深い関係が存在している。

ビョーク(アイスランド)やAvicii(スウェーデン)を筆頭に、Pan Sonic(フィンランド)、トッド・テリエ(ノルウェー)、MØ(デンマーク)、近年ではSmerz(ノルウェー)など、ワールドワイドに活躍する北欧出身の音楽家やDJは珍しくない。

ポップスから実験音楽、EDMやディスコなどクラブミュージックまでをもひと括りには語れないが、ここで着目したいのは、北欧にはTeenage Engineeringのほかにも有力な電子楽器 / 音響メーカーも数多く存在していることだ。

トム・ヨーク(Radiohead)やAutechreによる使用でも知られ、テクノ / ハウスやヒップホップをはじめビートミュージックのシーンで絶大な信頼を得るシンセメーカーのElektron(スウェーデン)、レコーディングスタジオでも使用されるモニタースピーカーのメーカーであるGenelec(フィンランド)、大学の軽音サークルからプロの第一線の現場まで幅広く愛用されるシンセサイザーで知られるNord(スウェーデン)、ミニマルなデザインと環境に優しくサステナブルなプロダクトで知られるオーディオメーカーAIAIAI(デンマーク)などなど……世界中にユーザーを持つ電子楽器 / 音響メーカーが北欧にはいくつも存在している。

自ら何かを創造する行為、誰かのクリエイティビティーを解放する手助けになる優れたプロダクトを生み出すこと、あるいはひたすら高品質のものを追求するものづくりの姿勢ーー北欧諸国に根づくクラフトマンシップの精神と、これらの電子楽器 / 音響メーカーの存在は決して無関係ではないだろう。

Teenage Engineering代表のイエスパー・コーフーは、Elektronを一躍トップシンセメーカーに押し上げたMachinedrumとMonomachineにヘッドデザイナーとして携わったことで知られる

シンセサイザーは、すでに私たちの生活に身近なものとして存在している

シンセサイザーは、かつてイメージされたような、難解で、目が飛び出るほど高価で、限られた人のために存在する機械ではない。OP-1は10万円ほどするものの、Teenage Engineeringは1万円前後で手に入る安価だが興味深いPOシリーズというプロダクトも発表している。

Teenage Engineering POシリーズのデモ動画。より手軽に手に取れるPOシリーズは、「音楽のつくり手と聴き手のあいだにあるギャップをいかにして埋めるか」というイエスパー・コーフーとTeenage Engineeringのものづくり精神(※2)のひとつの結晶といえるだろう

そして何より、あなたがもしこの記事をiPhoneで読んでいるとしたら、すでにシンセサイザーを手にしているとも言える。iOSアプリ「GarageBand」を開いて10分も触っていれば、iPhone内に存在していた無数のシンセサウンドに出会うことだろう。

知らず知らずのうちに無数の人々がその手のなかに、音楽をかたちづくり、発表できる可能性を持ち歩いているーーいまはそんなことがすでに当たり前になった時代だ。

音楽を制作する人が増えれば増えるほど、音楽文化そのものの可能性は広がり、エミー・パーカーが語ったように「未来の声」が至るところで生まれるようになれば、この世界は少しずつ変化し、豊かになっていくことだろう。

きっと手段やツールは何でもいい。そして、シンセサイザーはそのもっとも身近な選択肢のうちのひとつなのだ。

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