AAAMYYYが映画から学ぶ、個人への想像力が争いなき世界へ導く

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編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

「善」の側にいることで安心して、「悪」を切り捨ててしまってもいいのか

犯罪が社会に対するSOSとしての側面もあるとして、そういった発信を行おうと罪を犯してしまった人のその後も、かなり厳しい。刑務所に入り更生に励む。前回のコラムでも参考文献として挙げた、岡本茂樹著『いい子に育てると犯罪者になります』(新潮社、2016年)の中で、岡本氏は「少年院の体質と、個々の教官の意識が変わらないかぎり、少年院における教育によって少年達が立ち直るのは難しいと言わざるを得ません。」と述べている。

岡本氏は刑務所での受刑者の更生支援に直接的に関わった臨床教育学博士であるが、彼は「反省文」の無意味さや「『形が整っていること』が評価の基準」であることなど、刑務所・社会への違和感を本書で明言している。例えば少年院で「私語厳禁規則」に則って抑圧的な環境を強いられる中で、受刑者たちが自発的に内省できるかといえばそんなに簡単なものではないだろうと想像できる。さらに、模範生でいることが最善と評価される刑務所において、のちに出所した人の再犯率が高いという現実は、根本的な更生が成されていないということと等しい。

だが実際、世間では責められる対象はーーその人が犯罪に至るまでに、どんな背景を持っていたとしてもーー犯罪者であり、刑務所を否定する意見は水面上になかなか表れない。もちろん、罪を犯してしまったことは擁護できるものではないが……しかし、我々に少しの想像力が備わっていれば、初期のSOSーー犯罪に至らないような迷惑行為かもしれないし、言葉かもしれないーーに気づいた時点で、彼らが罪を犯さないよう、手を差し伸べる行動に出られるはずだ。それが難しいのは、我々が振りかざす善という意識が、悪を生み出す環境を作っている可能性があるにも関わらず、その事実に蓋をして、表面的な善悪観で一刀両断することで安心しているように思う。

さらに、犯罪者には悪というレッテルが貼られ、レッテルを剥がそうと思っても、周囲からの偏見が邪魔をすることがある。例えば、雇用に支障が出たりいじめられたりする。バイアスで誰かを見ることのできる特権とでも呼ぶべき「善側に居る」優劣観が、意識せずともそこには生まれている。つまり規律は、善悪という概念を、善は優、悪は劣という優劣観を生み出す原因になり得る。

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作品情報

『幸せなひとりぼっち』
『幸せなひとりぼっち』

監督・脚本:ハンネス・ホルム
出演:ロルフ・ラスゴード

プロフィール

AAAMYYY
AAAMYYY(えいみー)

長野出身のシンガーソングライター / トラックメイカー。キャビンアテンダントをめざしてカナダへ留学、帰国後の22歳より音楽を制作しはじめ、2017年よりAAAMYYYとして活動を開始。2017年の『WEEKEND EP』を皮切りに、『MABOROSI EP』『ETCETRA EP』と3作品をカセットテープと配信でリリースしている。さらに、RyohuのゲストボーカルやTENDREのサポートシンセ、DAOKOへの楽曲提供やCMソングの歌唱、モデル、ラジオMCなど多方面に携わるなか、2018年6月からはTempalayに正式加入。2019年2月、ソロとしての1stアルバム『BODY』をリリースした。

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