AAAMYYYが『ぼくのエリ』を考察。社会的価値観に踊らされるな

AAAMYYYが『ぼくのエリ』を考察。社会的価値観に踊らされるな

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編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

※本記事は映画『ぼくのエリ 200歳の少女』、Netflixオリジナルドラマ『マインドハンター』本編の内容に関する記述を含みます。あらかじめご了承下さい。

連載2回目に選んだのは、本来嫌いだったはずの吸血鬼映画『ぼくのエリ 200歳の少女』

吸血鬼は昔から映画によくある題材のひとつだ。民話や伝説で多く登場する、狼男だとか魔女だとかと肩を並べる、いわゆる怪物である。最近では小説『トワイライト』シリーズや、小学校の図書館にあった『ダレン・シャン』が実写化されたのが記憶に新しいが、Netflixにも『ドラキュラ伯爵』『ヴァンパイア・アカデミー』『シャドウハンター』などさまざまな吸血鬼モノが揃っている。でも、ヴァンパイアは容姿が整っていて超人的な身体能力を持ち、頭脳明晰というエゴ的な設定が多く、これまでは敬遠していた。

AAAMYYY(えいみー)<br>長野出身のシンガー・ソングライター/トラックメイカー。キャビンアテンダントをめざしてカナダへ留学、帰国後の22歳より音楽を制作しはじめ、2017年よりAAAMYYYとして活動を開始。2018年6月、Tempalayに正式加入。2019年2月、ソロとしての1stアルバム『BODY』をリリースした。
AAAMYYY(えいみー)
長野出身のシンガー・ソングライター/トラックメイカー。キャビンアテンダントをめざしてカナダへ留学、帰国後の22歳より音楽を制作しはじめ、2017年よりAAAMYYYとして活動を開始。2018年6月、Tempalayに正式加入。2019年2月、ソロとしての1stアルバム『BODY』をリリースした(過去記事:AAAMYYYが語る、Tempalayに入るまでの道のりと正式加入の理由)。

そんな数ある吸血鬼モノの中で、私が今回選んだのは2010年に日本公開されたスウェーデン映画『ぼくのエリ 200歳の少女』(以下、『ぼくのエリ』)だ。主人公のオスカーは母子家庭で、学校ではいじめられ、どこにも居場所がない12歳の少年。いじめっ子にやり返せないまま、自分の部屋にナイフを隠し妄想の中の復讐にふける。

ある日、隣の部屋に親子が引っ越してきた。引っ越してきたばかりの少女エリと出会い、ふたりは次第に惹かれ合う。エリとオスカーは壁越しにモールス信号で会話をするようになり、学校でいじめられてばかりのオスカーは、エリに感化され、強くなるためのトレーニングを開始する。

その一方で、近所では奇妙な殺人事件が頻発していた。ある夜、町のアパートに住む男が目撃したのは、男を襲って血まみれになったエリだった。そしてオスカーも、エリが吸血鬼だという秘密を知ってしまう。

今回、『ぼくのエリ』を選んだのは、他の吸血鬼モノによくあるプロパガンダ的表現が無く、客観的に全てが映し出されているからである。私なりの解釈でこの映画をふたつのテーマから紐解いていきたい。ひとつ目は「コンプライアンスと表現の自由」、ふたつ目は「大人と社会が作り上げた教育観念への風刺」だ。

修正して公開された、ふたつのスウェーデン映画。根底にある「コンプライアンス」の存在

1971年に日本公開された『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー(邦題:純愛日記)』という、ロイ・アンダーソン監督の長編映画がある。Fikaの記事にもこの映画が取り上げられている。

『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』©2003 Studio 24 Distribution
Fikaの記事「LGBTや性教育の先進国、スウェーデンの若者文化を知る映画」でも紹介している。 / 『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』©2003 Studio 24 Distribution

劇中では14歳の少女アニカと15歳の少年ペールが、大人びた服を着てバイクを乗り回し、タバコをふかしながらウイスキーを飲み、一夜を共に過ごす。『ぼくのエリ』とも共通するのは、12歳から15歳くらいのアンダーエイジの恋や、すれすれの倫理観が描写されていることと、スウェーデン本国公開時ではノーカット無修正で放映されたが、日本では修正が施された上で上映されたことだ。おそらく、このふたつの映画が当時修正版で公開されたのは、「コンプライアンス」のためであろう。コンプライアンスは本来、企業による法令遵守を指す言葉だが、今回は「社会の倫理観や道徳観を守る」という広義の意味で使用したい。

現在はR指定表示やEXPLICIT表示(子どもに不適切な内容が含まれている可能性があることを消費者に警告するために、メディア製作者が発行するラベル)が導入され、過激なシーンや不適切とされる表現も、注意表記の元そのまま見ることができるようになってきた。欧米ではラジオで不適切な用語が流れるときは必ずピーと音がなる。

社会的背景がかなり影響するが、子どもの成長において悪影響を及ぼしたりするものや、映画配給会社にリスクが及ぶものを事前に阻止するために、コンプライアンスという考え方は存在する。『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』では未成年による飲酒喫煙や無謀とも思える行為、小児性愛犯罪への懸念、『ぼくのエリ』ではいじめや暴力犯罪などの助長を防ぐためだと考えている。

©EFTI_Hoyte van Hoytema
©EFTI_Hoyte van Hoytema
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リリース情報

Tempalay
『21世紀より愛をこめて』(CD)

2019年6月5日(水)発売
︎価格:2,860円(税込)
PECF-3234

1. 21世紀より愛をこめて
2. のめりこめ、震えろ。
3. そなちね
4. 人造インゲン
5. どうしよう
6. 脱衣麻雀
7. Queen
8. THE END(Full ver.)
9. SONIC WAVE
10. 未知との遭遇
11. 美しい
12. おつかれ、平成

AAAMYYY
『BODY』

2019年2月6日(水)発売
価格:2,547円(税込)
PECF-3222

1. β2615
2. GAIA
3. 被験者J
4. Z(Feat.Computer Magic)
5. ポリシー
6. ISLAND(Feat.MATTON)
7. 愛のため
8. All By Myself(Feat.JIL)
9. 屍を越えてゆけ
10. EYES(Feat.CONY PLANKTON)

プロフィール

AAAMYYY
AAAMYYY(えいみー)

長野出身のシンガーソングライター / トラックメイカー。キャビンアテンダントをめざしてカナダへ留学、帰国後の22歳より音楽を制作しはじめ、2017年よりAAAMYYYとして活動を開始。2017年の『WEEKEND EP』を皮切りに、『MABOROSI EP』『ETCETRA EP』と3作品をカセットテープと配信でリリースしている。さらに、RyohuのゲストボーカルやTENDREのサポートシンセ、DAOKOへの楽曲提供やCMソングの歌唱、モデル、ラジオMCなど多方面に携わるなか、2018年6月からはTempalayに正式加入。2019年2月、ソロとしての1stアルバム『BODY』をリリースした。

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