まるで日本の海鮮丼?デンマークの国民食「スモーブロー」レシピ

デンマークという国を凝縮したような国民的フード

北欧文化を家庭料理から楽しむためのレシピを紹介してきた本連載。最後となる今回はデンマークの伝統料理「スモーブロー」です。スモーブローは、デンマーク語で「バターを塗ったパン」という意味で、デンマーク以外の国々にも広まり、北欧ではよく食べられている具沢山のオープンサンドです。

10年以上前、私が初めてスウェーデン旅行をしたときも街のあちらこちらにスモーブローが食べられるオープンサンド屋さんがあり、スウェーデン語がわからなくても食べたい具を指差せば目当てのものが食べられるので、とても重宝したことを覚えています。

スモーブローはデンマークという国が凝縮されているなと思っています。まず、魚介から肉製品、野菜まで豊富な具が挙げられます。デンマークは北欧のなかでも一番南に位置しており、平坦な土地が多く、国土の60%ほどが牧場や農地なのだとか。特に畜産業が盛んで、牛乳や大麦のほか、豚肉の輸出はドイツ、アメリカに次ぐほどの生産量。加えていくつもの島で構成されているので、世界有数の漁業国ともいわれています。

しかし農業が盛んとはいえ、デンマークは寒冷地。野菜や果物の種類は少ないので、デンマークの人々は輸入品に頼っている面もあり、意外と南国の野菜や果物も好まれているようです。特にアボカドは、北欧で食べられているスモークサーモンやエビに合うので、よく使われています。アボカド好きも日本と共通していますよね。このように、スモーブローにのせる具材からも、お国柄を感じることができます。

北欧のオープンサンド「スモーブロー」は日本の丼ぶり的存在?

スモーブローはファストフード感覚でよくランチに食べられている料理です。デンマークは共働き率が高いのですが、退社時間が早く残業もほとんどないため夜は手間をかけて夕食を作り、家族でゆっくり過ごすのが常だそう。その代わりランチは簡単にスモーブローなどですますようなのです。スモーブローは日本でいえば、海鮮丼のような存在なのでしょう。

日本の海鮮丼のように、スモーブローもトッピングの具材はさまざま。デンマークは酪農と養豚が盛んなため、チーズにベーコン、ソーセージやレバーペーストがよく食べられていて、スモーブローにも使われています。海産物も豊富なので、メインの具材をサーモンに白身魚やエビ、加工品でオイルサーディン(塩漬けのイワシをオリーブオイルに漬けたもの)やアンチョビなどを選び、副菜の野菜や果物と合わせてパンにのせれば、デンマーク流スモーブローのできあがりです。

とっても簡単なスモーブローの作り方を、おすすめのトッピングで紹介します。

<材料>(すべてお好みの量)
☆基本の材料
ライ麦パン
バター

☆トッピングその1
ハム / チーズ / ベビーリーフ / トマト

☆トッピングその2
アボカド / 茹でエビ / ゆで卵 / マヨネーズ / ディル

☆トッピングその3
スモークサーモン / 紫玉ねぎ(スライス) / レモン / ケッパー / ディル

<作り方>
ライ麦パンにバターをたっぷり塗り、その上にお好みの量のトッピングをパンが見えなくなるくらいのせ、味つけが足りない場合は最後に塩をふる。

上から時計回りにトッピング1、トッピング2、トッピング3の盛りつけ例
上から時計回りにトッピング1、トッピング2、トッピング3の盛りつけ例

具材をのせるパンは必ず酸味のある「ライ麦」で

現地のスモーブローに使われているエビに近いもので、日本で入手できるものが甘エビです。刺身用の甘エビの殻をすべてむき、沸騰した湯でさっとゆがいてください。むいた殻は、炒めて香ばしくしてからお茶袋などにいれておくと、スープを作るときの出汁パックとして使えますよ。

スモーブローのポイントは少し酸味があり、みっちりとした質感のライ麦パンを使うところ(日本の海鮮丼でいえば、酢飯のような役割をしているのかもしれませんね)。もしライ麦パンが入手できず、バゲットなどで代用する場合は、バターのほかに酸味のあるマスタードを塗るとよいでしょう。具沢山なので、パンは薄切りのほうが食べやすいですよ。ナイフとフォークを使って一口大にカットして食べるのがデンマークスタイル。

写真映えもする華やかさで、ホームパーティーにもぴったり

盛りつけ方にもポイントがあります。具材は、パンが隠れるくらい多めにのせましょう。海鮮や野菜だけでなく、フルーツをチョイスしてもよさそう。お気に入りの組み合わせをいろいろと試してみるのも楽しそうですね。

色とりどりの具材を好きなだけ盛りつけられるとなれば、パーティー料理にもってこい。手巻き寿司パーティーのような気分で、家族や友人たちとスモーブローを楽しんでみるのはいかがでしょうか? 北欧らしい華やかなデザインのお皿やクロスを使えば、テーブルも賑やかになりますよ。

連載『北欧レシピ』

現地の暮らしを知るには、その土地の食文化や伝統料理にふれることが一番の近道ではないでしょうか。伝統を重んじる北欧諸国では、100年以上受け継がれている食習慣やレシピがたくさんあります。そんな北欧の家庭料理を日本の食卓で味わえるレシピを紹介していきます。

プロフィール
フルタヨウコ

料理家・編集者。料理家としてレシピ寄稿やワークショップなどで活躍するほか、デザイン関係の書籍やウェブで編集・執筆なども手がける。ウェブメディア『北欧、暮らしの道具店』を運営するクラシコムで社員食堂を担うほか、自由大学にて「朝ごはん学」の教授を務める。また、制作&プロデュースをするオリジナルジャムは毎回、即完売する人気アイテム。著者は『北欧のおいしいスープ』(新星出版社)など。



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「幸福度が高い」と言われる北欧の国々。その文化の土台にあるのが「クラフトマンシップ」と「最先端」です。

湖や森に囲まれた、豊かな自然と共生する考え方。長い冬を楽しく過ごすための、手仕事の工夫。

かと思えば、ITをはじめとした最先端の技術開発や福祉の充実をめざした、先進的な発想。

カルチャーマガジン「Fika(フィーカ)」は、北欧からこれからの幸せな社会のヒントを見つけていきます。

スウェーデンの人々が大切にしている「Fika」というコーヒーブレイクの時間のようにリラックスしながら、さまざまなアイデアが生まれる場所をめざします。

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