AAAMYYYが映画から学ぶ、個人への想像力が争いなき世界へ導く

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編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)
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同じ方向を向いているはずの人間同士が、なぜ争ってしまうのか

どうしたら人間が争いをせず平和に共存できるのかを、この映画を引き合いに出しながら考えていきたいと思う。私は近頃の情勢の中、とある友人の署名活動に賛同する投稿をSNS上でしたところ、さまざまな意見交換が繰り広げられ、さらに非常に興味深い展開を見ることになった。同じ目標に向かっているはずの人が、誰かの揚げ足を取っては別の論点で攻撃し合うという事象が発生したのである。

私の表現によって語弊が生まれたのは確実なので反省しているのだが、この論争は実に心身ともに疲弊する出来事であり、同時にもうひとつ、考えることがあった。世の中に存在する職業は多種多様だが、どうやら人々の感覚において全職業が存在意義のある職業ではないらしい。例えば芸術家、フリーランス、飲食業、ホステスやセックスワーカー……こういった職業に就く人は、もしかすると「下」に見られている可能性が浮き彫りになったのだ。どの職業種にも存在意義があり、いち人間同士として対等に接するべきだと思いたかったが、残念ながらそうではないのは、収入や体裁などの優劣観が引き金になっているのだろうか。

そもそも、なぜ人々は争い合ってしまうのか。この映画の主人公であるオーベという老人が生涯貫いて来た「規律」というものが、この違和感の原因究明の鍵なのではという憶測にたどり着いたのである。

『幸せなひとりぼっち』場面写真 / ©Tre Vänner Produktion AB. All rights reserved.
『幸せなひとりぼっち』場面写真 / ©Tre Vänner Produktion AB. All rights reserved.

「規律」の存在と、「善悪」にこだわりすぎてしまう私たち

私の引いた事典によると、規律とは「社会生活・集団生活において人の行為の基準となるもの、一定の秩序、きまり」とのことらしい。例えばゴミ出しのルールだとか細々したものから、交通規則、条例、大きくなると法律まで、さまざまな規律によって私たちの毎日の人間生活が保たれている。

我々は幼い頃から、家庭や学校や社会でこれを学びながら大人になっていくが、時代や環境の変化に応じて、規律自体も改良改正を重ねられてきたと信じている。オーベも、私の家族や親戚も友人も、はたまた世界中の多くの人も規律を守り生きてきた。

規律を守ってきたおかげで住みやすい現状があると言っても過言ではないだろうし、ありがたいものなのは確かだ。また規律の存在によって我々の持つ良し悪しの基準が生まれ、善と悪がはっきりと区分された。そうしなくては、悪しきものを正し、規律の範囲に矯正することができないからだ。しかし、そもそもこの善悪のラインを定義するということが、人々を歪ませる根本的な原因なのではあるまいか。

撮影:AAAMYYY
撮影:AAAMYYY

規律の上で右往左往する私たちは、より良い人間であるために、規律という概念に頑なになりすぎてしまう。なぜならば我々の誰しもが学校や家庭や社会で、良い人間であれ、誠実に生きよ、悪しきは正し改心せよ、と教育されてきたからだ。しかしその過程で、悪しき者になってしまう理由を究明することなく、教え込まれてきた善に当てはまらないものを排除するようになってしまった気がする。そして、排除によってより多くの悪を生み出してしまってはいまいか。

我々が持つ、犯罪者となった人に向ける意識を挙げるとわかりやすいかも知れない。幼少期にも現在でも、必ずまわりに何人か、いたずらっ子だとかいじめっ子だとか、この映画の主人公オーベのように変人として避けられる人だとかがいるだろう。それらの対象となる人は、例えば経済的に苦しい家庭で育っているかもしれないし、家族からの愛情を受けられずにここまで生きてきた可能性だってある。

そういった人が日々抱いている鬱憤は、窃盗や怠惰、陰口、暴力だったりとさまざまな形で表に出てくることがあり、ときとして社会や誰かに対する「SOS」なのかもしれない。しかし、事情がわからない人から見れば、それらの行動は「矯正されるべき悪」として映ってしまう。そこで我々の規律が振りかざされれば、日々のSOSを表現した人々はなおさらやり切れないだろう。

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作品情報

『幸せなひとりぼっち』
『幸せなひとりぼっち』

監督・脚本:ハンネス・ホルム
出演:ロルフ・ラスゴード

プロフィール

AAAMYYY
AAAMYYY(えいみー)

長野出身のシンガーソングライター / トラックメイカー。キャビンアテンダントをめざしてカナダへ留学、帰国後の22歳より音楽を制作しはじめ、2017年よりAAAMYYYとして活動を開始。2017年の『WEEKEND EP』を皮切りに、『MABOROSI EP』『ETCETRA EP』と3作品をカセットテープと配信でリリースしている。さらに、RyohuのゲストボーカルやTENDREのサポートシンセ、DAOKOへの楽曲提供やCMソングの歌唱、モデル、ラジオMCなど多方面に携わるなか、2018年6月からはTempalayに正式加入。2019年2月、ソロとしての1stアルバム『BODY』をリリースした。

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