あっこゴリラが語る「自分嫌い」だった頃 劣等感とどう向き合う?

あっこゴリラが語る「自分嫌い」だった頃 劣等感とどう向き合う?

インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:柴崎まどか 編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

「私はイケてる彼と付き合っている」みたいな感じでマウント取ってくる子とか、「マジしっかりしろよ」って猪木ビンタ喰らわせたくなる。

―昨年リリースされたメジャー1stアルバム『GRRRLISM』には、この映画に触発されて作った楽曲“GOOD VIBRATIONS × GEN(from 04 Limited Sazabys)”が収録されているんですよね?

あっこ:はい。<どんな時でもわたしのままでいいの>と、自分自身でいることの大切さを歌っています。自分に自信がなさ過ぎて、着ていく服が決められなくて「もう無理」と思って泣いたとか、嫌なことがあったときにご飯をめっちゃ食べて思考停止させて、「やべえ、明日こそしっかりしなきゃ」って思うんだけど、次の日も同じことの繰り返しになっちゃうとか、友人からそういう話を聞いて「すごい、わかる」ってなって。

私も自分のことがすごく嫌いで、「この服でいいのかな」「こんな音楽やってていいのかな」ってどんどん負のループに落ちていくことがよくあったので、そんな自分に刺さるような曲にしたいと思いながら書きました。なので、結果的に映画とは全く関係ない内容になっちゃったんですけど(笑)。

『GRRRLISM』収録“GOOD VIBRATIONS × GEN(from 04 Limited Sazabys)”を聴く(Apple Musicはこちら

―映画はあくまでも最初のインスピレーション元であり、そこからどんどんイメージを広げながら作ったということですよね。個人的には、<イケてる彼と付き合えたから持てた自信なんて / 自己愛の延長でしょ>というラインがすごく印象的で。

あっこ:ここは、大好きな山崎ナオコーラさんの『私の中の男の子』という本の一節からインスパイアされました。私、生理が遅すぎて自分のことを「女じゃない」と思っていた時期があって、小説を書いていたときにも男のペンネームを使っていたんですよ。「水疱瘡太郎」っていうんですけど(笑)。

でも、そんな自分ってダサいって思っちゃったの。「女である自分を受け入れなきゃ」って思い込んで、それで水商売をやってみるとか、モヤモヤを消すためにたくさん行動してみた果てで、そこを埋めてくれたのが、ナオコーラさんだったんです。

あっこゴリラ

あっこ:でも本当に、「私はイケてる彼と付き合っている」「私にはスペックの高い旦那がいる」みたいな感じでマウント取ってくる子とか、「マジしっかりしろよ」って猪木ビンタ喰らわせたくなる。

―(笑)。他者を拠りどころにした自己肯定って、その他者から否定された瞬間に崩壊してしまうから危ういですよね。自分への自信は自分を拠りどころにしておきたい。それは男性も一緒で、例えば車やカードのランク、年収などを拠りどころにした自信を、定年退職と同時に失ってしまう人はとても多いと聞きます。定年後の自殺率が高いのは、そこに大きな理由がありそうな気がするんですよ。

あっこ:いやあ、男も大変だと思う。でもさ、大事なのはそこじゃないんだよね、もっと頭使って考えないと。自戒も込めて。バシッとしないと!

自分の中に溜まっていたモヤモヤを吐き出すことも、ラップだったら肯定されるカルチャーに救われたんですよね。

―以前のインタビューであっこさんは、「ラップは自分を取り戻すための治療」とおっしゃっていました(「人生最大の勝負は何だった? 山田佳奈×増子直純×あっこゴリラ」)。自分を取り戻す、リセットするという意味では、あっこさんにとってラップは猪木ビンタくらいの衝撃があったのかなと。

あっこ:私は不良でもなければ学級委員でもない、喋るし明るいけど、コミュニケーションスキルが高いかといえば、そうでもない。中途半端な自分が大嫌いで、「どうにか変わりたい!」と思いながら、負のループからずっと抜け出せない、そんな10代を過ごしていたんです。

―ええ。

あっこ:ラップを始める前にHAPPY BIRTHDAYというバンドを組んで、ドラムを叩いているときだけは、そんな自意識を忘れられる気がしていたんです。でも、日常では自信もなくて、自分をいつも蔑んで、思考停止して、ヘラヘラして、そうやって居場所を探している自分が、嫌になっちゃった。

―バンドをやっていても「自分嫌い」の状態はずっと続いていたんですね。

あっこ:しばらくそんな感じだったけど、あるときボーカルが喉を壊してバンド活動がストップしてしまったんです。それで、暇だからラップを始めてみたら「あれ?こんな自分いたの?楽しい!」ってなって。

自分の中に溜まっていたモヤモヤを吐き出すことも、ラップだったら肯定されるカルチャーに救われたんですよね。中途半端で劣等感の塊だった自分が、「でもさ」って言える場所を見つけたんです。そこからの1年くらいはカウンセリングのようでした。

あっこゴリラ

あっこ:でも、初期は自分のことを全てさらけ出すほどの勇気はまだ全然なくて。結局のところ「自分嫌い」は治ってなかったわけです。それを隠してラップでメンタル武装しているわけだから、歌詞もバナナの値段とかゴリラの生態とかだし(笑)。「それを汗だくでラップしてる自分はなんなんだ?」みたいな。

―ラップでもまだ自分を表現しきれていないと感じていたのですね。

あっこ:そんな自意識にカタをつけて、ちゃんと丸裸の作品を出さなきゃマズいと思って。本当の意味で吐き出さないと、このまま一生苦しむ。早いとこ「解脱」しなければと思いながら作った前作『GREEN QUEEN』で、ようやくその入り口までたどり着いて、『GRRRLISM』のときには、「よっしゃ出すぞおーー!!」って気合いたっぷりで臨んだんです。

ただ、今振り返ってみると「まだまだやな」って思いますね。「解脱への道」はまだ遠い……(笑)。

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作品情報

『グッド・ヴァイブレーションズ』
『グッド・ヴァイブレーションズ』

2019年8月3日(土)から新宿シネマカリテほか全国公開

監督:リサ・バロス・ディーサ、グレン・レイバーン
出演:
リチャード・ドーマー
ジョディ・ウィッテカー
マイケル・コーガン
リーアム・カニンガム
カール・ジョンソン
エイドリアン・ダンバー
ディラン・モラン
配給:SPACE SHOWER FILMS
© Canderblinks(Vibes)Limited / Treasure Entertainment Limited 2012

出演情報

J-WAVE
『SONAR MUSIC』

毎週月曜日~木曜日21:00~24:00放送

イベント情報

『Flying Flags Vol.6』

2019年8月3日(土)
会場:仙台darwin
出演:
あっこゴリラ
Dos Monos
GAGLE
踊Foot Works(Minimal Live Set)

『SWEET LOVE SHOWER』

2019年8月30日(金)~9月1日(日)
会場:山梨県 山中湖交流プラザ きらら

『OTODAMA'18-'19~音泉魂~』

2019年9月7日(土)、9月8日(日)
会場:大阪・泉大津フェニックス

プロフィール

あっこゴリラ

ドラマーとしてメジャーデビューを果たし、バンド解散後、ラッパーとしてゼロから下積みを重ねる。2017年には、日本初のフィメール(女性)のみのMCバトル「CINDERELLA MCBATTLE」で優勝。その後、さまざまなアーティストとのコラボレーションも行う中、同年末、向井太一とのコラボ曲「ゲリラ」がSpotifyのCMに起用される。野生のゴリラに会いにルワンダへと旅をした模様を収めた「Back to the Jungle」、永原真夏と共にベトナムで撮影された「ウルトラジェンダー」、そして2018年に"再"メジャーデビューを飾り、台湾で撮影を敢行した「余裕」など、国内に限らず海外で制作したMVも話題に。さらに、同年12月1stフルアルバム「GRRRLISM」をリリース。女性の無駄毛をテーマにした「エビバディBO」、年齢をテーマにした「グランマ」など、世の中の"普通"を揺るがす楽曲を発表。その他、クリエイターを巻き込んでのGRRRLISM ZINEの発表や、2019年4月からJ-WAVE「SONAR MUSIC」でメインナビゲーターとして様々な発信をするなど、性別・国籍・年齢・業界の壁を超えた表現活動をしている。ちなみにゴリラの由来はノリ。

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