当事者・KORPIKLAANIに訊く、北欧はなぜメタルバンドが多い?

当事者・KORPIKLAANIに訊く、北欧はなぜメタルバンドが多い?

インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:伊藤惇 編集:山元翔一
2017/10/16
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「女性を排除する」という発想自体あり得ないんだよね。(ツォーマス)

― やはり同じ北欧でも違うのでしょうか?

ツォーマス:文化的にも経済的にもノルウェーは豊かだよ。フィンランドは貧しい時期が長かったから共働きの生活スタイルも当たり前で、男女とも同じくらい働く。女性が働かなかった時代なんてないんだ。

ずっと一緒に働いてきたから、「女性を排除する」という発想自体あり得ないんだよね。社会のなかで、非常に活動的な役割を女性が担ってきた。それにドイツ人やスウェーデン人みたいに金持ちになれるなんて、思ったことすらないんだ。

左から:ツォーマス・ロウナカリ、ヨンネ・ヤルヴェラ

―スウェーデンには、若い人たちがバンド活動しやすいよう国が支援する制度があると聞いたのですが、フィンランドにも似たような制度ってあります?

ツォーマス:ないね。一度だけ、アメリカツアーへ出かけたときに国の支援を受けたくらいかな。思うに、スウェーデンとフィンランドの大きな違いは、政府が音楽に対して理解を持っていて、ジャンルにこだわらず「ビジネスの一部」として捉えていることなんじゃないかな。

フィンランドでは、芸術にサポートなんかしていたら国がやっていけなくなってしまう。たとえば交響楽団への資金援助なんてフィンランドでは不可能なんだよ。ましてや俺たちみたいなバンドに、そういう援助を受ける機会なんてない。実は、今年は政府が文化に資金援助をする最後の年なんだよね。今後、国が支援として使えるお金から0.8%しか文化支援に使えないことにもなっている。

ヨンネ:芸術に関するものすべてで0.8%なんだ。フィンランドの場合、多くのお金はギャンブルから入ってくる。国がカジノなど、ギャンブルの施設を所有しているからね。だから政府の支援も、カジノ業界にいくことが多いんだ。そこが面白い場所なのかどうかは、俺にはわからないけどね。

ヨンネ・ヤルヴェラ

フィンランドには伝統的な形式のポエトリー(詩)が世界で一番多く残っているんだよ。(ツォーマス)

―KORPIKLAANIの音楽は、フィンランド神話をベースに民族音楽とメタルを融合した、非常にユニークなものですよね。そもそも、こうしたサウンドを目指した経緯は?

ヨンネ:ごく自然な流れだったんだよ。俺は民族音楽もメタルも好きだったから、好きなものを組み合わせてみたっていうだけ。音楽活動をはじめた頃は民族音楽しかやってなかったんだけど、2003年にバンド名をKORPIKLAANIにして、メタルを融合させたら一気に反響が大きくなって。2005年にはヨーロッパ中をツアーするようになるくらい、最初から評判は上々だった。ツアー三昧の生活になってからはもう、かれこれ8年近く経つね。

ツォーマス:このバンドには様々な側面がある。みんなで楽しむような曲もあれば、もっとダークでディープな曲もあるからね。伝統音楽でいうと、フィンランドには伝統的な形式のポエトリー(詩)があるんだ。独特の言語を用いて昔の神話を伝える「口承文化」だね。それがフィンランドには世界で一番多く残っているんだよ。

ツォーマス・ロウナカリ

ツォーマス:KORPIKLAANIの音楽にも、そうした形式のポエトリーを用いた曲があって、歌詞の一部は既存のポエトリーから直接引用もしている。もちろん、フィンランドの古代語を使って自分たちで書き下ろした曲もあるよ。だから俺たちの歌詞は、同じフィンランド人でも理解できないことがあるんだよね。歴史をたどってじっくり考えないと、理解できない部分がある。実はポエトリーとしては非常にハイレベルなことをやっているんだ。

―知的好奇心をくすぐる音楽なのですね。実際のところ、フィンランド神話というのは今のフィンランド人に、どのくらい浸透しているのでしょうか。

ツォーマス:『カレワラ(kalevala)』って知ってる? 今話したような口承説話をまとめたフィンランドの国民的な民族叙情詩なのだけど、それは一般常識となっているね。細かいところや正確なところまではわからなくても、誰もがその存在を知っているし、『カレワラ』に登場する人物や神々の名前、役割、キャラクターについては理解しているはずだよ。

フィンランドは森だらけで、それが普通のこと。(ヨンネ)

―ギリシャ神話やローマ神話のようなフィンランドの叙情詩を、メタルに落とし込んでいると。KORPIKLAANIはマイクスタンドに鹿のツノを取り付けてパフォーマンスしたりしていますが、それも神話やポエトリーに由来したものなのですか?

マイクスタンドに鹿の角が取り付けられているのが確認できる

 

ヨンネ:あれは単にクールだと思ってやってただけ(笑)。鹿はフィンランドでもっともありふれた動物だし、鹿の飾りものが普通に家にあるんだよ。そういう意味ではまあ、フィンランドを象徴するアイテムともいえるね。でもあの角、チリで失くしてしまったんだよね。ああいうの持ち込んじゃいけない国だったみたいでさ、税関で没収されちゃったんだ……。

―それは残念ですね……。鹿の角を飾ったりするのって、「バック・トゥ・ネイチャー」的な思想も関係しているのかなと思ったんですけど、どうですか?

ヨンネ:個人的には全くその通りだと思うよ。「バック・トゥ・ネイチャー」的な考え方は、KORPIKLAANI独自の歌詞を作るためにもすごく重要だと思っている。というかフィンランドは森だらけで、自然があるのが普通のことだしね。

ツォーマス:そう。フィンランドは決して「都会の文化」じゃないからね。ほとんどのフィンランド人はサウナハウスやコテージを持っているんだけど、冬の間に働いて金を貯めて、夏が来るとみんな自然に囲まれたコテージへと移動しそこで過ごすんだよ。みんなサウナハウスにエスケープして働かないから、7月は事実上の休業状態(笑)。

左から:ツォーマス・ロウナカリ、ヨンネ・ヤルヴェラ

―それって最高ですね。

ツォーマス:羨ましいだろ?(笑)

ヨンネ:俺も、自由な時間があれば家族と一緒に自然のなかでくつろぐ。自然と触れ合うことで充電するんだ。テニスをすることもあるかな(笑)。

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プロフィール

KORPIKLAANI(こるぴくらーに)

フィンランド産ヴァイキングメタル・バンド。1999年、SHAMANというバンド名で1stアルバム『Idja』を発表、同名バンドがいることが判明し、KORPIKLAANIに改名。2004年、『Spirit of the Forest』で日本デビュー(本国発売は2003年)。北欧トラッドを基本に、バイオリンや管楽器の大胆に導入、母国語で綴られる独特なメロディーラインとアグレッシヴなメタルサウンドの融合で一躍注目を浴びた。

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