
ふかわりょうが語るアイスランドと人生 臨機応変こそラクで楽しい
- インタビュー・テキスト
- 黒田隆憲
- 撮影:鈴木渉 編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)
「7崇拝」が強すぎることが、世の中の閉塞感を生み出していると思うんです。
―人生についてはどうでしょうか。明確な目標を立てて、それに向けて進んでいるのか、それともDJや生放送と同じように、ある程度の段取りは決めているけど、その都度、臨機応変に生きていこうと思っているのか。ふかわさんはどちらですか?
ふかわ:ベタな言い方に聞こえるかも知れないけど、僕は人生を「音楽」と捉えているんですよ。自分が今ハッピーか、そうじゃないかも、音楽でいうところの長調と短調の違いだったり、テンポの違いだったりすると思うんですよね。人も楽器であり、どのような音色を奏でるのか、誰とだったら美しいハーモニーが生まれるのか、みたいな。そんなふうに自分の人生を捉えると、もう少し余裕を持って生きられる気がします。
―確かにそうですね。何か辛いことがあったときに「今、自分の人生は短調の楽章に入ったのだな」と思えば少しは楽になるかも知れない。
ふかわ:そうなんですよ。落ち込んだときに、「辛い」「悲しい」「よくない」とは違う捉え方をしてみることは大切だと思います。とはいえ人生って基本的に辛いですよね(笑)。できる限りハッピーに過ごしたいけど、どうしてもそう思える瞬間って少ないじゃないですか。それってどうしてなのだろう? とずっと考えていたんですけど、僕はその原因が「7拍子」にあるんじゃないかと思っているんですよ。
―7拍子?
ふかわ:はい。1週間って7日単位、つまり7拍子じゃないですか。これがいけないと思っているんですよ。一度、5拍子にして欲しいとずっと思っていて。つまり1週間を「火・水・木・土・日」の5日単位にすれば、平日の3日間を3拍子のワルツで過ごすことができると思うんですよね。
―はははは!
ふかわ:ラッキー7なんて言い方もあるけど、「7崇拝」が強すぎることが、世の中の閉塞感を生み出していると思うんです。DJをやっていても、ずっと4つ打ちの曲ばかりかけていると場が硬直してくるので、途中でビートを変えたりしているんですけど、曜日もそうやってときどき変えてみたらいいんじゃないかって思うんだけどなあ。
―そういえば以前、ラジオ番組で「ふかわりょうという美味しいシチューができあがるのは55歳。おいしくなるのは58歳」とおっしゃっていたのも印象的で。
ふかわ:そんなこと言ってましたか(笑)。全然覚えてないけど、でも言いそうですね。人によって「食べ頃」の時期ってあると思うのですが、僕は55歳くらいな気がするんですよね。今46歳なんですけど、少なくとも20代のときの自分と比べると、世の中からの受け入れられ方、人々の眼差しも変わってきているような気がしていて。そもそもこの世界に入ったのも、若さで勝負をするのではなく、歳を重ねることが味や趣きになると思ったからで。
―そうだったんですね。
ふかわ:自分自身の根本的な価値観みたいなものは、20代の頃とそんなに変わっていないんです。でも、その表現方法や言葉のチョイスが、年齢と共に世の中と噛み合ってきているというか。若い頃は全く伝わってなかったことが、だんだん伝わりやすくなってきているんですよね。そりゃあ同じことを言っても、20代のときと50代のときでは伝わり方が違うのは当然で、そういうところがエンターテイメントの世界にはある。テクニック云々じゃなく、そういうものを超越した「人間力」みたいなものですよね。そういうものを僕は信じていたいんです。
書籍情報
- 『世の中と足並みがそろわない』
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2020年11月17日(火)発売
著者:ふかわりょう
価格:1,485円(税込)
発行:新潮社
- 『風とマシュマロの国』
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2012年3月29日(木)発売
著者:ふかわりょう
価格:1,760円(税込)
発行:幻戯書房
プロフィール
- ふかわりょう
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1974年8月19日生まれ。神奈川県横浜市出身。慶應義塾大学在学中の1994年にお笑い芸人としてデビュー。長髪に白いヘアターバンを装着し「小心者克服講座」でブレイク。後の「あるあるネタ」の礎となる。「シュールの貴公子」から「いじられ芸人」を経て、現在は「バラいろダンディ」のMCや「ひるおび!」のコメンテーターを務めている。また、ROCKETMANとして全国各地のクラブでDJをする傍ら、楽曲提供やアルバムを多数リリースするなど、活動は多岐に渡っている。著書に、アイスランド旅行記『風とマシュマロの国』など。