ふかわりょうが語るアイスランドと人生 臨機応変こそラクで楽しい

ふかわりょうが語るアイスランドと人生 臨機応変こそラクで楽しい

インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:鈴木渉 編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

予定調和になってしまうと途端につまらなくなってしまう。

―『世の中と足並みがそろわない』の中で、「最近はプレイリストを持たずにフロアに合わせてその場でDJをするようになり、それが仕事にも影響を与えるようになった」と書かれていました。その感覚は、予定を細かく立てずに行く一人旅の楽しさ、気ままさとも通じるところはありますか?

ふかわ:ああ、それもありますね。僕が本の中で言いたかったのは、綿密に作り込んだエンターテイメント作品の素晴らしさはもちろんあるけど、場合によっては作り込んでいない自然体に近いものを届けたいときもある。僕が今、生放送でやっているのはまさにそれなんです。ほどほどに予測を立てつつ、その場の状況に合わせて臨機応変に動くというか。

なんでもそうだと思うのだけど、自分がイメージしたものと違う現実が訪れたときに、あたふたしてしまうことってあるじゃないですか。そのときのリカバリー力、あたふたしないでいることってすごく大事で。そもそも現実なんて理想どおりにはいかないわけで、そういうものなのだという気持ちでいないと、余裕のない生活になってしまうんじゃないかなと思います。

ふかわりょう

―ただ、「世の中的にこれが正解、これこそが理想」と思い込んでしまって、どうしても正解や理想に期待し過ぎてしまうというか、そっちを追いかけてしまう人もいると思うんですよね。そういう場合、どうしたらふかわさんのように物事を俯瞰して捉えられるのでしょう。

ふかわ:たとえば地方へDJにいくと、あって当然だと思っていた機材がなかったりするんですよ。そうなったときに、最初の頃は「え、なんでないの?」みたいになっていたんですけど、もうキリがないなと悟って。そこであたふたするより、あるもので楽しんだ方が気持ちは楽じゃないですか。

―それって『風とマシュマロの国』の中で書いていた、「幸せは、手に入れることではなく、今存在しているものを感じること」ということや、最初におっしゃっていた自然との向き合い方にも通じますね。

ふかわ:そうなんです。むしろ、予定調和になってしまうと途端につまらなくなってしまう。文章を書くこともそうですよね。「なんとなくこういうことを書こうかな」と思っていても、いざ書き始めると思わぬ方向へ進んでいくことがあって。それがいいのか悪いのかは別として、目には見えない勢いやエネルギーがそこにはあるじゃないですか。そういうものを尊重したいんですよね。

―さっきの「使役」じゃないですけど、「ペンが僕に、それを書かせてしまった」みたいな(笑)。

ふかわ:そうですね。たとえばアイスランドでSigur Rósやビョークを観ていると、人間を介在して音が奏でられているような気がしてくるんです。「アイスランドでSigur Rósを聴いている」ともいえるし、「Sigur Rósを介在したアイスランドの音を聴いている」ともいえる気がして。

Sigur Rós“Hoppipolla“。アイスランドの雄大な自然の中で演奏するライブ映像

―とてもよく分かります。我々は、アーティストという「媒介」を通した作品を観ているという言い方もできる。

ふかわ:たとえばワインにしても、その土地の風土や気候によって味が変わるように、アイスランドで育ったSigur Rósだからこそ生まれる音というものは絶対にあるわけで。それは自然環境だけじゃなくて、ベトナム戦争があったことでジョン・レノンの“Imagine“(1971年)が生まれたことも、「時代がジョン・レノンを介した音になっている」ともいえますよね。

―ふかわさんご自身のクリエイティブはどうですか?

ふかわ:今挙げたアーティストと並べるのはおこがましいのですが(笑)、僕自身も今まで経験してきたことが材料になって作品が生まれている気はします。小さい頃に見ていたドリフや漫画、アニメ……そういうものが、ずーっと溜まってきているというか。

それと、10代の多感だった頃、渋谷のHMVでジャケ買いをしていた、「何か満たされない気持ちを埋めてくれる音楽はないかな」と貪るように探し求めていたあの頃に吸収していた音楽が、今になっても大きな材料になっている気がしますね。大人になってから吸収したことももちろん肥やしにはなっているけど、ものを作る尺度というか、物差しになっている根本は、10代のときに一度できたと思っています。

小西康陽︎とのユニット・ROCKETMANの“どうにかなりそう-highway mix-”

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書籍情報

『世の中と足並みがそろわない』

2020年11月17日(火)発売
著者:ふかわりょう
価格:1,485円(税込)
発行:新潮社

『風とマシュマロの国』

2012年3月29日(木)発売
著者:ふかわりょう
価格:1,760円(税込)
発行:幻戯書房

プロフィール

ふかわりょう

1974年8月19日生まれ。神奈川県横浜市出身。慶應義塾大学在学中の1994年にお笑い芸人としてデビュー。長髪に白いヘアターバンを装着し「小心者克服講座」でブレイク。後の「あるあるネタ」の礎となる。「シュールの貴公子」から「いじられ芸人」を経て、現在は「バラいろダンディ」のMCや「ひるおび!」のコメンテーターを務めている。また、ROCKETMANとして全国各地のクラブでDJをする傍ら、楽曲提供やアルバムを多数リリースするなど、活動は多岐に渡っている。著書に、アイスランド旅行記『風とマシュマロの国』など。

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