ふかわりょうが語るアイスランドと人生 臨機応変こそラクで楽しい

ふかわりょうが語るアイスランドと人生 臨機応変こそラクで楽しい

インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:鈴木渉 編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

手付かずの自然に包み込まれていると、だんだん恐ろしくなってくるんですよ、このまま呑み込まれてしまうんじゃないか? って

―昨年11月に出版された『世の中と足並みがそろわない』という本にも、「自然を愛するということは、単に自然を大切にするだけではなく、人類がその力には到底及ばないということを認識すること」と書かれていましたよね。

ふかわ:我々を取り巻く世界というのは、あくまでも人間の尺度で認識していることで、ある意味「都合のいい解釈」なんですよね。今は世界中がコロナ禍ですが、「果たして人間とウイルス、どちらが地球にとって脅威なのか?」という視点もある。善と悪のような、我々は単純な二元論では片付けられない矛盾の中で生きていることを意識する必要があるんじゃないかと思ったんです。そういう考え方は、アイスランドへ何度も足を運んだことで、少しずつ固まっていったところはありますね。

ふかわりょう

―実際にアイスランドに行ったときには、「地球は生きている」と感じました?

ふかわ:ものすごく感じました。アイスランドには鉄道がないので、出国前に国際免許の手続きを取って、向こうではずっと車で移動をしていたんですよ。アイスランドには巨大な滝や崖がたくさんあって、そこには柵が全くない。日本の観光地だと厳重に柵が張り巡らされて、「ここから先は立ち入り禁止」の表示も立っているじゃないですか。それはそれで大事なことなのかもしれないですけど、アイスランドでは自分の身は自分で守るしかないんです。

―ある意味、人間を信頼しているともいえますよね。

ふかわ:場所によっては観光客が全くいなくて、たった一人で大自然と対峙することになるんです。一度、滝が枯れた絶壁だけの場所に行ったことがあるのですが、そこはアイスランドでは珍しく森の中にあって、車を停めてどんどん奥まで歩いて行くと、本当に手付かずの自然に包み込まれていくんですね。そうすると、だんだん恐ろしくなってくるんですよ、このまま呑み込まれてしまうんじゃないか? って。

物理的に危険な場所ではないし普通に歩ける場所なのに、畏怖の念と言いますか、「これ以上はもう、進めないな」という領域の存在を感じたんですよね。そのことがとても印象に残っています。

羊は人間が生きていくための、ある意味では犠牲になった動物だと知ると胸が痛む。

―そうやって毎年のようにアイスランドを訪れているうちに、羊に会いに行くのが目的になっていったそうですね。

ふかわ:そうなんです。最初のうちは、あくまで羊は風景の一部でした。でも、3回目くらいに一線を超える瞬間があって。地平線までバーっと緑が広がっている中、いつものように羊たちが草を食んでいるんですけど、それがホワホワしたマシュマロのような、ファンタジックなものに見えて。それ以来、羊を見かけるとわざわざ車を停めて、声をかけるようになりました。すぐ逃げてしまうので、実際に触ることは難しいんですけどね。

一人旅の寂しさを、ほっこりと癒してくれる瞬間が何度も訪れるうちに、だんだん羊への愛情というか愛着が湧いていったんです。そのうち「地球が生きている」とかどうでもよくなって(笑)、完全に羊に会いに行く旅へと変わっていました。

ふかわがアイスランドで撮影した羊
ふかわがアイスランドで撮影した羊
ふかわがアイスランドで撮影した羊

―(笑)。そんな羊たちとの出会いは、ふかわさんの「死生観」にも繋がったと『世の中と足並みがそろわない』には書かれていましたよね。

ふかわ:そうなんです。出会う羊の中には、仰向けになっているものもいて。「なんだろう?」と気になって起こしてあげたりしていたんです。調べてみると、家畜用に品種改良された羊は毛がモフモフし過ぎてしまい、一度ひっくり返ると自力では立ち上がれなくなってしまったらしいんですよ。放っておくとそのまま死んでしまう。実際、手遅れになっている羊や、朽ち果ててほとんど骨だけになった羊もたくさん目の当たりにしました。

ふかわりょう

ふかわ:羊は可愛い動物ですが、ずっと昔から人間の暮らしとともに存在し、人間なしでは生きていけなくなってしまったわけですよね。人間が生きていくための、ある意味では犠牲になった動物だと知ると胸が痛む。それが分かってからは、アイスランドでの僕は「仰向けの羊を探す目」になってしまいましたね(笑)。

Page 2
前へ 次へ

書籍情報

『世の中と足並みがそろわない』

2020年11月17日(火)発売
著者:ふかわりょう
価格:1,485円(税込)
発行:新潮社

『風とマシュマロの国』

2012年3月29日(木)発売
著者:ふかわりょう
価格:1,760円(税込)
発行:幻戯書房

プロフィール

ふかわりょう

1974年8月19日生まれ。神奈川県横浜市出身。慶應義塾大学在学中の1994年にお笑い芸人としてデビュー。長髪に白いヘアターバンを装着し「小心者克服講座」でブレイク。後の「あるあるネタ」の礎となる。「シュールの貴公子」から「いじられ芸人」を経て、現在は「バラいろダンディ」のMCや「ひるおび!」のコメンテーターを務めている。また、ROCKETMANとして全国各地のクラブでDJをする傍ら、楽曲提供やアルバムを多数リリースするなど、活動は多岐に渡っている。著書に、アイスランド旅行記『風とマシュマロの国』など。

Category カテゴリー

Latest Articles 最新の記事

What's "Fika" ? フィーカとは

「Fika」はCINRA.NETとVOLVOが送る、北欧カルチャーマガジンです。北欧デザインの思想の基盤を「クラフトマンシップ×最先端技術」と捉え、そこに学びながら、これからのカルチャーやライフスタイルにまつわるコンテンツをお届けします。