あっこゴリラが語る「自分嫌い」だった頃 劣等感とどう向き合う?

あっこゴリラが語る「自分嫌い」だった頃 劣等感とどう向き合う?

インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:柴崎まどか 編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

全てを一度失って、そこからなにかを初めて七転八倒したことのある人は、どこかで自信を持てるんです。

―おっしゃる意味はよくわかります。『GRRRLISM』を出して、少しは状況が変わりましたか?

あっこ:自分のなかでは大きく変わりましたし、まだまだ全然変わってないなとも思います。

あっこゴリラ

―聴いた人の反応も、自分を出すようになってから変わってきていますか?

あっこ:よくも悪くも聴いてくれた人の人生を変えてしまうことがあります。今の自分を鼓舞したり、昔の自分を叱咤激励したりするつもりで書いたリリックなのに、「え、私を否定してるんですか?」と言われることもあるし。かと思えば私のライブを観て「これからは自分の人生を生きる!」と感謝してもらうこともある。切実な言葉は切実に響くんだなと思い知らされています。

―でも、自分が変わることが、周りの人の人生を変えることは往々にしてありますよね。映画『グッド・ヴァイブレーションズ』の中でも主人公テリーがパンクに出会って人生が大きく変わり、それによって周りの人たちの人生も変えていくじゃないですか。

あっこ:そうなんですよ。あんなおじさんがそばにいたらある意味最高ですよね。ただ、フェミニズム的な視点でいくと妻になるのはキツイな……映画でも途中で家を出て行っちゃったしな。自分がもしああいうクズい男を好きになったら、別居婚ぐらいのスタンスを選ぶかな。

『グッド・ヴァイブレーションズ』場面写真。左が主人公の妻・ルース、右が主人公のテリー・フーリー / © Canderblinks(Vibes)Limited / Treasure Entertainment Limited 2012
『グッド・ヴァイブレーションズ』場面写真。左が主人公の妻・ルース、右が主人公のテリー・フーリー / © Canderblinks(Vibes)Limited / Treasure Entertainment Limited 2012

―(笑)。主人公は逆境の中、自分のやりたいことを貫き通していくわけですが、あっこさんもその気持ちは分かりますか?

あっこ:分かります。私も自分のやりたい音楽に専念したくて、バイトは一切せずに物販だけで生活していた時期があって。そうなるとプライベートは疎かにしがちだし、周りにはたくさん迷惑かけたと思う。

私もクズだからこそ主人公に対して「わかるよ!」って思う部分もあるし(笑)、同じクズだからこそ見ていてイラ付く部分もある。ジャケット手刷りして、道ゆく人に配ろうとしても誰も受け取ってくれない、それで「この街には誰も分かるやついねえのかよ!」ってなる気持ちとかは痛いほどよく分かりますね。

『グッド・ヴァイブレーションズ』場面写真 / © Canderblinks(Vibes)Limited / Treasure Entertainment Limited 2012
『グッド・ヴァイブレーションズ』場面写真 / © Canderblinks(Vibes)Limited / Treasure Entertainment Limited 2012

―あっこさんはそういう生活を続けていたとき、焦りや不安などありませんでしたか?

あっこ:もちろんありました。以前はそういう不安が嫌だったのだけど、今は「不安」がないとダメだなと思うようになりましたね。自分を否定するような不安はよくないけど、自分を盛り上げるための「不安」や「焦り」は必要だと思っているんですよね。それをガソリンにすればいいって。

―なるほど!

あっこ:それともうひとつ、「私バイブスやばいからマジどうとでも生きていける」と楽観的に考えているんですよ(笑)。なぜなら私は、「ゼロイチ」の経験をしている。全てを一度失って、そこからなにかを初めて七転八倒したことのある人は、どこかで自信を持てるんです。

友達もいるし、面白いアイデアさえ見つけたら、なんだってできる。今ならYouTuberとかさ。私はラップがやりたくてやっているけど、これって年を取れば取るほど面白いって思っちゃっているんですよね。『フジロック』に「80歳の女性ラッパー」とか出てきたら最高じゃないですか?

あっこゴリラ

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「あっこゴリラのお悩み相談室 人生、恋愛、迷える人へ全力エール」

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作品情報

『グッド・ヴァイブレーションズ』
『グッド・ヴァイブレーションズ』

2019年8月3日(土)から新宿シネマカリテほか全国公開

監督:リサ・バロス・ディーサ、グレン・レイバーン
出演:
リチャード・ドーマー
ジョディ・ウィッテカー
マイケル・コーガン
リーアム・カニンガム
カール・ジョンソン
エイドリアン・ダンバー
ディラン・モラン
配給:SPACE SHOWER FILMS
© Canderblinks(Vibes)Limited / Treasure Entertainment Limited 2012

出演情報

J-WAVE
『SONAR MUSIC』

毎週月曜日~木曜日21:00~24:00放送

イベント情報

『Flying Flags Vol.6』

2019年8月3日(土)
会場:仙台darwin
出演:
あっこゴリラ
Dos Monos
GAGLE
踊Foot Works(Minimal Live Set)

『SWEET LOVE SHOWER』

2019年8月30日(金)~9月1日(日)
会場:山梨県 山中湖交流プラザ きらら

『OTODAMA'18-'19~音泉魂~』

2019年9月7日(土)、9月8日(日)
会場:大阪・泉大津フェニックス

プロフィール

あっこゴリラ

ドラマーとしてメジャーデビューを果たし、バンド解散後、ラッパーとしてゼロから下積みを重ねる。2017年には、日本初のフィメール(女性)のみのMCバトル「CINDERELLA MCBATTLE」で優勝。その後、さまざまなアーティストとのコラボレーションも行う中、同年末、向井太一とのコラボ曲「ゲリラ」がSpotifyのCMに起用される。野生のゴリラに会いにルワンダへと旅をした模様を収めた「Back to the Jungle」、永原真夏と共にベトナムで撮影された「ウルトラジェンダー」、そして2018年に"再"メジャーデビューを飾り、台湾で撮影を敢行した「余裕」など、国内に限らず海外で制作したMVも話題に。さらに、同年12月1stフルアルバム「GRRRLISM」をリリース。女性の無駄毛をテーマにした「エビバディBO」、年齢をテーマにした「グランマ」など、世の中の"普通"を揺るがす楽曲を発表。その他、クリエイターを巻き込んでのGRRRLISM ZINEの発表や、2019年4月からJ-WAVE「SONAR MUSIC」でメインナビゲーターとして様々な発信をするなど、性別・国籍・年齢・業界の壁を超えた表現活動をしている。ちなみにゴリラの由来はノリ。

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