山村紅葉が読む北欧ミステリー 美しい土地で事件が起きやすい理由

山村紅葉が読む北欧ミステリー 美しい土地で事件が起きやすい理由

インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:伊藤惇 編集:川浦慧

『ミレニアム』シリーズ全体が、女性や移民など、基本的に差別されたり虐げられている人々の問題を扱っている。

—登場人物も、王道とは違う感じがしますよね。

山村:はい。この小説は、リスベットというパンクな女の子とミカエルという中年男性のペアが主人公なんですけど、リスベットを向こう見ずな勇ましいキャラクターにして、ミカエルを理性的なキャラクターにしていたり、通常のステレオタイプを外しているところが面白いんですよね。

その他の登場人物たちも強烈で、良くも悪くも個性的な人ばかりなんです。あと、主人公が完璧すぎないところも良いんですよね。リスベットはけっこう過激で、問題行動ばかり起こしているし。なかなか日本では、そうはいかないところがあると思うんですよね。

山村紅葉

—というと?

山村:どこか完璧な理想像みたいな人を、主人公に置きたがるところがあるじゃないですか。日本のミステリーで主人公が女性だと、いわゆる才色兼備の女性が多い。母の小説の主人公も、大体そんな感じですよね。「赤い霊柩車」シリーズの明子さんも、きれいで頭が良くて正義感に溢れた女性だし。まあ、そこは母も悩んでいたというか、ちょっと葛藤みたいなものがあったようですけど。

—たしかに、日本のミステリーにはあまりないキャラクターかもしれないです。

山村:あと、これは『ミレニアム』シリーズ全体に言えることですけど、女性や移民など、基本的に差別されたり虐げられている人々の問題を扱っているんですよね。そういう差別を、物語のなかで大きく否定しているんです。それを前面に打ち出しているわけではないんですけど、物語の根底には、いつもそういう問題意識があるように思うんです。それは作者が、もともとジャーナリストだったことにも関係しているのかもしれないですよね。

—『ドラゴン・タトゥーの女』のオリジナル版の副題が、「女を憎む男たち」であるように、女性差別の実態を告発しているようなところもありますよね。

山村:非常に大きな問題提起をしているように思います。むしろ、そのために書いんじゃないかと思うくらいに。そういう小説が、日本を含む世界中の国で受け入れられたことは、非常に興味深いですよね。人間社会が抱えている普遍的な問題というのは、やっぱり変わらないというか。

いまだに、移民や女性に対する差別発言が問題になったり……日本だって表面上は男女平等ということになっているけど、大学の入試ですら、いまだに男女差別があったわけで。

—そうですよね。まったく他人事ではないというか。

山村:そういう差別の問題は、世界中のどの国にも依然としてあるんですよね。スウェーデンという、国民の幸福度が高くて、そういった問題のなさそうな国ですら、『ミレニアム』のような小説が出てくるわけですから。だからこそ、世界中の国の人の共感を得たんじゃないでしょうか。

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プロフィール

山村紅葉(やまむら もみじ)

早稲田大学在学中にANB「燃えた花嫁~殺しのドレスは京都行き~」で女優デビュー。以来在学中に20数本出演するが、国税庁国税専門試験に合格し、卒業後は国税局に勤務。結婚退職を機に、ふたたび女優の道へ。400近い原作を残した、亡き母・山村美紗さんの作品を中心に、「赤い霊柩車」「名探偵キャサリン」「京都祇園芸妓」「狩矢警部」などの代表シリーズ出演。また、バラエティーや舞台にも活動の幅を広げ、2006年9月 山村美紗没十年追悼「京都 都大路謎の花くらべ」(南座)や新春喜劇公演「俺はお殿さま」(新宿コマ劇場)。2010年10月 山村美紗サスペンス「京都花灯路恋の耀き」(南座、東京、他地方公演)に出演。日本喜劇人協会理事でもある。

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