カジヒデキが90年代を再考 渋谷系とスウェディッシュポップを語る

カジヒデキが90年代を再考 渋谷系とスウェディッシュポップを語る

インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:タイコウクニヨシ 編集:山元翔一

あの頃はよく「世界同時渋谷系化」現象って言われましたが(笑)、まさにその象徴が『Life』だと思います。

—ここからは「『ミスター・スウェーデン』が選ぶスウェディッシュポップ名盤5選」と題して、カジさんのオススメの5作品をお伺いしたいと思います。

カジ:せっかくなので、定番中の定番を。まずはEggstoneが1992年にリリースしたデビューアルバム『In San Diego』。「スウェディッシュポップの金字塔」といってもいい作品ですね。

The Jamやエルヴィス・コステロ、The Beatlesなど、米英のロックやパンク、ニューウェーブ、ネオアコに影響を受けた、本当にエヴァーグリーンないいメロディーが詰まっています。僕の人生でも、一番好きなアルバムじゃないかというくらい好きです。ちなみに、初期シングルもすごくよくて、日本盤を買うとボーナストラックとして入っているので、日本盤を買うのがオススメですね(笑)。

 

Eggstone『In San Diego』を聴く(Apple Musicはこちら

—では、2枚目の作品をご紹介お願いします。

カジ:2枚目はThe Cardigansの『Life』(1995年)ですね。もちろん1stアルバムは最高だし、3rdアルバムの『First Band on the Moon』になるとロック色を強めに出すなど、新機軸のサウンドもすごくいいんですけど、やっぱり『Life』は彼らの魅力が最も詰まった最高傑作だと思います。

—『Life』は先ほども話に出たように、日本でも空前のヒットを記録しました。カジさんから見て、この作品にはどんな魅力が?

カジ:不思議と、渋谷系ともすごく通じるところがあるのは大きいですね。このときのプロモーションビデオは東京で撮影したものもあって、カヒミさんが出てきたりもするんですよ。あの頃はよく「世界同時渋谷系化」現象って言われましたが(笑)、まさにその象徴が『Life』だと思います。アートワークなども、間違いなく信藤三雄さんの影響を受けていますしね。

カヒミ・カリィ出演のミュージックビデオ。The Cardigan『Life』収録曲

The Cardigans『Life』を聴く(Apple Musicはこちら

—続いての作品を教えてください。

カジ:3枚目は、Cloudberry Jamの2ndアルバム『Providing the Atmosphere』(1996年)です。この作品は彼女たちの最充実期の1枚ですね。それこそ当時流行っていたフリーソウル的なエッセンスも入っていて、ブラックミュージックやハウス、ヒップホップが好きな感覚と、ギターポップが絶妙なバランスでミックスされているんですよね。

—彼らは本当に人気がありましたよね。彼女のアルトボイスがとても魅力的で、エイミー・マンあたりをも彷彿とさせます。

カジ:たしか初来日公演は、追加公演が2回くらい出るほど人気者でしたよね。渋谷のCLUB QUATTROが連日、超満員。このときのバンドのグルーヴもすごくよかったのを覚えています。

ただ、同時期にスウェーデンのフェス会場で彼女たちのライブを観たんですけど、お客さんが全然いなくて。彼女たちに関していえば、ビッグ・イン・ジャパン的なところはあったかもしれないですね。でも、それってある意味、「日本人はすごいんだな」とも思うんですよ。本国や世界での評価に左右されず、この感覚がわかるのは、日本人のセンスがいい証拠ですよ。

カジヒデキ

Cloudberry Jam『Providing the Atmosphere』を聴く(Apple Musicはこちら

イェンス・レークマンは、これからもずっと聴き続けていきたいアーティスト。

—4枚目はいかがでしょうか?

カジ:The Wannadiesの4枚目のアルバム『Bagsy Me』(1997年)ですね。とにかくThe Wannadiesは大好きすぎて、ラジオでどれだけかけたかわからない(笑)。音はスウェーデンのギターポップ / パワーポップの代表でもあるし、ちょっとツイストする感じというか、ひねくれたポップさもあって、そこがまた面白いなと思います。

—このアルバムはジャケットもいいですよね。

カジ:アートディレクターはラース・サンドという人で、Eggstoneも手がけています。The Wannadiesはこの、寝転がっているのか死んでいるのかわからない(笑)、女性シリーズが何枚かあって面白かったですね。どれも欲しくなってしまう。僕の2ndアルバム『TEA』のジャケットは、このラースとフォトグラファーのイルメリーのコンビにやっていただきました。

カジヒデキ

The Wannadies『Bagsy Me』を聴く(Apple Musicはこちら

—では、最後の1枚のご紹介をお願いします。

カジ:5枚目は、イェンス・レークマンの2ndアルバム『Night Falls Over Kortedala』(2007年)です。2000年代以降、スウェディッシュポップが落ち着きますが、それでもいいアーティストがたくさん出てきました。そのなかでも僕が最も好きで、信頼を寄せているシンガーソングライターがイェンスです。

サウンドの感触はBelle and Sebastianで、歌声はエドウィン・コリンズ(Orange Juice)っぽい。でも、アティチュードとしてはジョナサン・リッチマンに近いのかな。ライブを何度か観たんですが、割と「語り」でお客さんを掴むところがあって。セットリストも気分でいろいろ変えたりしてるところとか、かなりジョナサンと通じるんですよね。バンド編成のときもあれば、ソロのときもあり、とにかくいろんな形で表現し続けているんですよ。昨年出たアルバム『Life Will See You Now』もよかったし、これからもずっと聴き続けていきたいアーティストです。

イェンス・レークマン『Night Falls Over Kortedala』を聴く(Apple Musicはこちら

—このアルバムはスウェーデンでチャート1位を獲得しているようですね。彼はブラックミュージック、とりわけ1960年代のノーザンソウルからの影響が大きいのかなと感じました。

カジ:そういう要素を思いっきりサンプリングしちゃうところとか、今っぽいセンスだなって思いますね。この人、ヨーテボリ(スウェーデン第2の都市)の出身なんですけど、自分の生まれた街についてもよく歌うんですよ。それもなんかいいなぁって。

ヨーテボリのアーティストって、そういう人が結構多いと思う。第2の都市で、大学もすごく多くて、ユースカルチャーが盛んなところなんです。僕も何度かヨーテボリでレコーディングしたことがあるんですけど、とにかく若者が生き生きとしている街だなという印象。しかも親日家が多く、すごくフレンドリーに話しかけてくれましたね。

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リリース情報

『秋のオリーブ』
カジヒデキ
『秋のオリーブ』(CD)

2018年9月5日(水)発売
価格:1,620円(税込)
DDCB-12104

1. 夏の終わりのセシルカット
2. 秋のオリーブ
3. きみはちから
4. 大好きな街 -My Fav City -
5. ピーキャン音頭

イベント情報

『LIVE「秋のオリーブ」』

2018年11月20日(火)
会場:東京都 渋谷WWW
出演:
カジヒデキ
おとぎ話
堀江博久
※レコーディングに参加したおとぎ話、堀江博久のサポートで行うスペシャルライブです

プロフィール

カジヒデキ
カジヒデキ

千葉県富津市出身。1989年、BRIDGE結成。1992年にメジャーデビューし、1995年7月に解散。1996年にソロデビュー。「ラ・ブーム ~だって MY BOOM IS ME~」など数々のヒット曲を放ち、90年代の渋谷系を牽引した。2008年には映画『デトロイト・メタル・シティ』の音楽を担当。主題歌「甘い恋人」がスマッシュヒット。またDJイベント「BLUE BOYS CLUB」主宰やTBSラジオ『オーディナリーミュージック』、bayfm『SPACE SHOWER MUSIC RADIO』、渋谷のラジオ『渋谷のラジオの渋谷系』パーソナリティ、音楽フェス『PEANUTS CAMP』キュレーションなど、 音楽の紹介者としても幅広く活躍中。

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