マイブラとシューゲイザーの30年 全ては1枚の傑作から始まった

マイブラとシューゲイザーの30年 全ては1枚の傑作から始まった

テキスト・撮影
黒田隆憲
編集:山元翔一

源流=マイブラから枝分かれし、研ぎ澄まされたシューゲイザーの輝かしい傑作たち

マイブラと同じCreation Recordsからデビューし人気を博したのがオックスフォード出身の4人組、Ride。のちにOasisのベーシストとなるアンディ・ベルと、マーク・ガードナーによる美しいハーモニー、ポップかつ憂いを帯びたメロディーが轟音ギターと融合する様は、「チェーンソーを持ったHouse of Love」と評された。

Ride『Ride』(1990年)収録

彼らと人気を二分していたのがLush。オランダと日本人のハーフ、ミキ・ベレーニ(ハナレグミ・永積崇の従姉、小山田圭吾のまた従姉にあたる)と、エマ・アンダーソンを中心に結成された男女4人組の彼らは、Cocteau Twinsの司令塔、ロビン・ガスリーのプロデュースにより注目を集めた。

Lush『Spooky』(1992年)を聴く(Apple Musicはこちら

レイチェル・ゴスウェルとニール・ハルステッドを中心に結成されたSlowdiveは、2000年代に入ってテクノ~エレクトロニカ周辺のアーティストに再評価され、それが現在に至るシューゲイザー再燃~新世代シューゲイザー(ニューゲイザー)隆盛の礎の1つとなった。

Slowdive『Just For A Day』(1991年)を聴く(Apple Musicはこちら

Slowdiveのコンピレーションアルバム『Blue Skied An' Clear』(2002年)を聴く(Apple Musicはこちら

また、マイブラが1991年に発表した2ndアルバム『Loveless』は、シューゲイザーの到達点であり、RadioheadやOasis、Deerhunterなど、以降のギターバンドに計り知れない影響を与えたのである。

My Bloody Valentine『Loveless』を聴く(Apple Musicはこちら

来日を控えたマイブラの直近のライブを、写真とともに紹介

そんなマイブラが今年、実に5年ぶりのツアーを開始した。筆者はそのバーミンガム公演と、翌日のロンドン公演(The Cureのロバート・スミスがキュレーターを務める『Meltdown Festival』)を観るため渡英した。1991年の初来日公演、2008~2009年の再始動ツアー、そして2013年のツアーと、計20本以上彼らのステージを目撃してきたが、機材や照明の変化・進化はあるものの、基本的に彼らのライブは27年前と何も変わっていない。

My Bloody Valentineの『Meltdown Festival』公演より
My Bloody Valentineの『Meltdown Festival』公演より

ステージ上にアンプをズラリと並べ、中央でコルムが渾身の力を込めてドラムを叩き、その横でデビーがベースを振り回す。そして、ステージの両端にはケヴィンとビリンダが、足元のエフェクターをじっと見ながらギターをかき鳴らす、というフォーメーションだ。

まるで、1990年代当時の彼らを真空パックして、そのまま解凍したかのよう。演奏ミスをすれば、アタマから平気でやり直すし、キメも毎回ズレる(そのズレがたまらないのだが)。出音に納得がいかなければ演奏を途中で中断し、PAと話し込むこともある。それを「プロ意識がない」と批判する人もいるだろう。しかし、あの唯一無二のサウンドスケープは、おそらくそんな「青臭いピュアネス」の中からしか、出し得ないのではないかとすら思う。

My Bloody Valentine『Loveless』収録曲

いずれにせよ、おびただしい数のペダルエフェクターと、アンプの組み合わせを1曲ごとに変えながら作り出すケヴィンのギターサウンドと、バックスクリーンに映し出されたサイケデリックな映像、そして、目も眩むような照明を全身で浴びる体験は、他では決して得られないものだ。

My Bloody Valentine

気になる新曲は、なんとロンドン公演で1曲披露された。あまりに唐突だったのと、例によってボーカルがほとんど聴こえなかったため、楽曲の全容を理解できたとは言えないが、印象としては『Isn't Anything』の楽曲に近い。ひょっとすると、音源としては“Map Ref. 41°N 93°W ”(1996年にリリースされた、Wireのトリビュート盤『Whore - Various Artists Play Wire』収録)に近い仕上がりになるのかもしれない。

その後の公演では、さらに新曲がもう1曲追加されたという。気になる新作については、Fender社が最近行なったケヴィンへのインタビューによれば、「夏頃にはEPを出す」から「今年中に何かしらのリリースがある」へと、発言が若干修正されたようだが(さすが「ケヴィン時間」 / 編集者註:ケヴィンは徹底した完璧主義者として知られており、『Loveless』リリース時、制作の度重なる遅延およびレコーディングの長期化によって、レーベルは倒産寸前にまで追い込まれたという逸話がある)、まずは目前に迫った来日公演で披露するであろう新曲2曲を堪能し、来るべき新作に備えたい。

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イベント情報

『SONICMANIA 2018』

2018年8月17日(金)
会場:千葉県 幕張メッセ

出演:
[CRYSTAL MOUNTAIN]
NINE INCH NAILS
MY BLOODY VALENTINE
CORNELIUS
電気グルーヴ

[SONIC WAVE]
MARSHMELLO
CLEAN BANDIT
PETIT BISCUIT
UNKLE
中田ヤスタカ

[SPACE RAINBOW]
『Brainfeeder Night In SONICMANIA』
FLYING LOTUS
THUNDERCAT
George Clinton & Parliament Funkadelic
Dorian Concept
Jameszoo
Ross From Friends

料金:前売12,000円 プラチナチケット20,000円

『My Bloody Valentine単独公演』

2018年8月15日(水)
会場:東京都 豊洲 PIT
料金:8,500円(ドリンク別)
※未就学児入場不可

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