BURRN!編集長×大村孝佳のイングヴェイ論 強烈キャラの真相は?

BURRN!編集長×大村孝佳のイングヴェイ論 強烈キャラの真相は?

インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:中村ナリコ 編集:山元翔一 取材協力:Sweeet Rock

メタルに限らず日本って、言葉から入る文化があると思うんです。(広瀬)

—「ネオクラシカルメタル」というジャンルが生まれたのは、イングヴェイの音楽を定義するためだった。

広瀬:そう。もはや、「イングヴェイ・マルムスティーン」というひとつのジャンルなんですよ。「ネオクラシカルメタル」は、結局イングヴェイ・マルムスティーンのことなんです。彼みたいな音楽のことを、「ネオクラシカルメタル」という。うまいこと名づけたなとは思いましたけど。

まあ、カテゴライズすることによって紹介はしやすくなるんだけど、「ネオクラシカルメタル」って言われて嫌がるアーティストもいると思うんですよね。「イングヴェイのマネ」というふうに思う人もいるわけだから。

広瀬和生

—メタルは他の音楽と比べても、ジャンルが細分化していますよね。その背景には、音楽をカテゴライズすることによって理解を深めるというような文化が、他と比べて根強くあるのかなと。

大村:それは、メタルやハードロックを表現するときに使われる「様式美」についても同じように言えそうですよね。

広瀬:そう。結局のところ日本でよく言われる「様式美」というのは、ロニー(ロニー・ジェイムス・ディオ。のちにBlack Sabbathに加入、さらに自らのリーダーバンドDioでも活躍したボーカリスト)がいた頃のRainbowのことなんです。

コージー・パウエル(The Jeff Beck Groupなどにも在籍したドラムヒーローの先駆者的存在)がドラムを叩き、ロニーが歌い、リッチー・ブラックモアがギターを弾くイメージ。しかも、“Kill The King”“Gates of Babylon”“Stargazer”“A Light In The Black”のような、特定の曲のことを指している気がしますね。

“Gates of Babylon”“Kill The King”を収録したRainbow『Long Live Rock 'n' Roll』(1978年)を聴く(Spotifyを開く

“Stargazer”“A Light In The Black”を収録したRainbow『Rising』(1976年)を聴く(Spotifyを開く

広瀬:そもそも「様式美」というのは日本人が作った用語で、海外では通用しないんですよ。メタルに限らず、日本って、そうやって言葉から入る文化があると思うんですよね。「アートロック」とレコード会社の人が定義づければ、アートロックっぽいバンドで括れたりする。実態はなんだかよくわかんなくても(笑)。

「北欧メタル」という言葉もすごく観念的ですよね(笑)。(広瀬)

—それでいうと、「北欧メタル」というカテゴライズはどんなイメージなんでしょう?

広瀬:「北欧メタル」という言葉もすごく観念的ですよね(笑)。例えばLAメタルといえばMötley CrüeやRattを、ジャーマンメタルといえばHelloweenを連想するように、「北欧メタル」と言われてまず思い浮かべるのは初期Europe(スウェーデン出身、北欧メタルの先駆け的バンド)だと思うんです。なかでも、“Seven Doors Hotel”という曲が「北欧メタル」の象徴で。「叙情的で泣きが入ったメロディーが聴ける」というのが一般的な認識なのかなと。

“Seven Doors Hotel”収録の『Europe』(1983年)を聴く(Spotifyを開く

広瀬:Europeの叙情性は、同じヨーロッパ圏でもアイルランド出身のゲイリー・ムーア(Thin Lizzyなどの活動で知られるギタリスト)や、ドイツ出身のマイケル・シェンカー(ScorpionsやUFOなどの活動で知られるギタリスト)とは違うものだったので、我々が勝手に「北欧メタル」と呼んだわけです。実際は、Europeのジョーイ・テンペスト(Vo)とジョン・ノーラム(Gt)こそが、「北欧メタル」なんですけどね。

ただ、アマチュア時代のイングヴェイがジョーイ・テンペストとバンドを組もうとしたことがあるなど、同じストックホルムにいればやはり影響し合うし、そこで「北欧メタル」らしきものが形成されていく現象というのは確かにあったんだと思います。歌詞の部分では、北欧神話をベースにした楽曲を作るバンドが出てきたり。

大村:北欧メタルから派生した、バイキングメタルやフォークメタルなどがそうですよね。

広瀬:そうですね。日本でも、大阪や博多で独自の音楽シーンが生まれたりしますよね。それと一緒だと思うんですよ。ただし、イングヴェイ本人は、「スウェーデンは田舎だし、みんながひとつのコミュニティーで固まっている。そういうところが嫌なんだ」と言ってましたけどね(笑)。

広瀬和生

—大村さんは、北欧に行ったことはありますか?

大村:僕はマーティ・フリードマンさんのツアーでスウェーデンに行きました。ただ、仕事の場合はホテルと会場以外の場所ってほとんど行かないので、「北欧らしさ」みたいなものを意識したことはほとんどないですね。

—ある調査によると、スウェーデンは人口10万人あたりのメタルバンド数が世界で2番目に多い国なのですが(1位はフィンランド、3位はアイスランド、4位はノルウェー)、ライブの反響などはいかがでしょうか?

大村:オーディエンスの雰囲気も、特に大きな違いは感じないですよ。東京でも大阪でもロンドンでもニューヨークでも、基本的にリアクションは一緒なのかなと(笑)。

大村孝佳

広瀬:「ブラジルだけは熱気が違う」っていう話は、ミュージシャンからよく聞きますけどね(笑)。僕、北欧はさっき話したストックホルムだけでなく、フィンランドのヘルシンキ、デンマークのコペンハーゲンも行きました。個人的にはロサンゼルスのあのだだっ広い風景よりは、北欧のほうが馴染みやすかったですね(笑)。コペンハーゲンなんかは、いかにもな建築物が街中にたくさんあって楽しかったし。ストックホルムは白夜のシーズンに行ったのですが、真夜中でも本当に昼間みたいに明るくて驚きました(笑)。

—北欧は夜が長くて家にこもりがちで、ギターの練習もたくさんできるから、北欧メタルシーンが形成されたという説もあるようなのですが、どう思いますか?

大村:ええ?(笑) どうなんだろう……。

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書籍情報

『BURRN! JAPAN Vol.11』

価格:1,296円(税込)
発行:シンコーミュージック・エンタテイメント︎

プロフィール

広瀬和生(ひろせ かずお)

1960年、埼玉県生まれ。東京大学工学部卒。楽誌『BURRN!』編集長、落語評論家。大学卒業後、レコード会社勤務を経て、1987年に『BURRN!』編集部へ。1993年より同誌編集長を務める。本業とは別に落語評論家としても有名で、著書に『この落語家を聴け!』(集英社文庫)、『噺家のはなし』(小学館)、『談志は「これ」を聴け!』(光文社知恵の森文庫)、『「落語家」という生き方』(講談社)、『僕らの落語』(淡交社新書)、『噺は生きている』(毎日新聞出版)など。近年は落語会のプロデュースも。

大村孝佳(おおむら たかよし)

1983年、大阪府生まれ。3歳からピアノを習い始め、11歳の時に父親の影響によりアコースティックギターを弾きはじめる。14歳でエレクトリックギターを弾きはじめ、17歳で洋楽のハードロック/ヘヴィメタルに出会い、強い衝撃を受け傾倒してゆく。2004年、1stアルバム『Nowhere To Go』をリリースする。2005年、『POWER OF REALITY』をリリースし、若手ギタリストとして確固たる地位を築くこととなる。2011年、菊地成孔主催のDCPRGに参加。同年5月には、Marty Friedmanの1ヵ月に及ぶEUツアーに同行。同年12月25日、C4@新宿LOFTのライブにて、C4に正式加入を発表。現在は自身のソロ活動と並行して、C4、DC/PRGなど、多方面で精力的に活動中。

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