BURRN!編集長×大村孝佳のイングヴェイ論 強烈キャラの真相は?

BURRN!編集長×大村孝佳のイングヴェイ論 強烈キャラの真相は?

インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:中村ナリコ 編集:山元翔一 取材協力:Sweeet Rock

左から:大村孝佳、広瀬和生

イングヴェイが幼少期にスウェーデンで暮らしたことは、音楽性にも大きな影響を与えていると思う。(広瀬)

広瀬:ちなみに大村さんが初めて聴いたのは、どの時代のイングヴェイでしたか?

大村:アルバムでいうと、ドゥギー・ホワイトがボーカルの『Attack!!』(2002年)です。あれは衝撃的でしたね。ギターのフレーズは速いし旋律も美しいのですが、とにかく音色がめちゃくちゃかっこいいんですよ。今でもたまに聴き直したり、コピーしてみたりしています。ギターキッズだった高校時代に衝撃を受けたものって、いろんな音楽を聴く経験を経てから、また回帰したくなるんですよね。

イングヴェイ・マルムスティーン『Attack!!』を聴く(Spotifyを開く

—広瀬さんがイングヴェイを知ったのはいつ頃ですか?

広瀬:それこそAlcatrazz(イングヴェイが在籍していたバンド)が出てきた1983年の頃です。とにかく、常識を完全に覆すスピードだったのを覚えていますね。普通のピッキングではとても弾けないと思ったし、「これ、絶対にテープスピードを落として弾いてるだろ」ってみんな言ってました(笑)。

Alcatrazz『No Parole from Rock 'n' Roll』(1983年)を聴く(Spotifyを開く

広瀬:イングヴェイはリッチー・ブラックモア(イギリスのハードロックバンドDeep Purpleの元ギタリストとして知られる。現在はRainbowやBlackmore's Nightとして活動中)の影響を受けているのですが、それは彼が北欧で生まれ育ったことにも関わっている気がします。

—というのは?

広瀬:リッチーって、アメリカでは大して人気がないんですよ。イングヴェイが最初に衝撃を受けたのは、テレビに映っていたジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)だったというのは有名な話ですが、以降、お姉さんの影響でDeep Purpleを聴くようになったり、Genesis(イギリスのプログレッシブロックバンド)を教えてもらったりして、ウリ・ジョン・ロート(ドイツのロックバンドScorpionsのギタリスト)にも傾倒するわけですが、そういう音楽の聴き方って、アメリカのギタリストにはあまりいないと思うんです。

ジミヘンは好きでも、そこからGenesisやウリ・ジョン・ロートにはいかない(笑)。Deep Purpleもアメリカではそんなに人気がないから、そういう意味ではイングヴェイが幼少期をスウェーデンで過ごしたことは、その音楽性にも大きな影響を与えていると思いますね。

左:広瀬和生

あのギターはイングヴェイの専売特許。(広瀬)

—そのあたりは、日本の音楽が欧米のものに影響を受けつつも、独自の進化を遂げていったことにも似ているかもしれないですね。

広瀬:あとは、クラシックの影響。彼はギターを習得するにあたって、ニコロ・パガニーニ(19世紀イタリアのバイオリニスト)の技法を取り入れようとしたわけじゃないですか。そういう発想も、アメリカ人にはあまりないのかなって思います。

—その発想は、イングヴェイのギターにどのような影響をもたらしたのでしょうか?

広瀬:彼のフレーズ(ハーモニックマイナー・パーフェクト・フィフス・ビロウというスケールを好んで使っていた)の、とにかくメロディアスなところだと思いますね。他のギタリストと聴き比べてみるとわかりますよ。いい例が、『Hear N' Aid』(1985年)という作品に収録されている、メタル系アーティストが一堂に会したチャリティーソング“Stars”のギターソロ。

ヴィヴィアン・キャンベル(アメリカのヘヴィメタルバンドDioのギタリスト)やジョージ・リンチが弾くソロって、大抵は似たようなものなんですが、唯一イングヴェイのソロだけは他と一線を画している。聴いて一発で、彼が弾いているとわかるんです。“Stars”に限らず、どんな曲でソロを弾こうが必ず「彼の曲」になるから。

広瀬和生

—リッチー・ブラックモアなどの影響を受けながらも、ギタリストとしては独自のスタイルとサウンドを確立していると。

広瀬:ステージングや衣装とかにリッチーの影響があるとはいえ、ギタープレイそのものにはリッチーっぽさってそんなになくて。やっぱりイングヴェイのギターはイングヴェイのギターなんですよね。

そのことは、彼の後釜としてスティーヴ・ヴァイがAlcatrazzに加入したとき、みんな気づいたわけです。「あのギターはイングヴェイの専売特許なんだ」って。スティーヴ・ヴァイ加入後のAlcatrazzは、それまでとはまったく違う音楽になっているんですよね。

スティーヴ・ヴァイの加入後にリリースされたAlcatrazz『Disturbing the Peace』(1985年)を聴く(Spotifyを開く

ー結果的にイングヴェイのギターの独自性に気がついたと。

広瀬:それで、ソロになったイングヴェイの音楽をどう定義づけようか? となったときに、パガニーニのバイオリンの技法や旋律を取り入れた彼のスタイルから「ネオクラシカルメタル」という新たな言葉が出てきたんだと思うんです。

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書籍情報

『BURRN! JAPAN Vol.11』

価格:1,296円(税込)
発行:シンコーミュージック・エンタテイメント︎

プロフィール

広瀬和生(ひろせ かずお)

1960年、埼玉県生まれ。東京大学工学部卒。楽誌『BURRN!』編集長、落語評論家。大学卒業後、レコード会社勤務を経て、1987年に『BURRN!』編集部へ。1993年より同誌編集長を務める。本業とは別に落語評論家としても有名で、著書に『この落語家を聴け!』(集英社文庫)、『噺家のはなし』(小学館)、『談志は「これ」を聴け!』(光文社知恵の森文庫)、『「落語家」という生き方』(講談社)、『僕らの落語』(淡交社新書)、『噺は生きている』(毎日新聞出版)など。近年は落語会のプロデュースも。

大村孝佳(おおむら たかよし)

1983年、大阪府生まれ。3歳からピアノを習い始め、11歳の時に父親の影響によりアコースティックギターを弾きはじめる。14歳でエレクトリックギターを弾きはじめ、17歳で洋楽のハードロック/ヘヴィメタルに出会い、強い衝撃を受け傾倒してゆく。2004年、1stアルバム『Nowhere To Go』をリリースする。2005年、『POWER OF REALITY』をリリースし、若手ギタリストとして確固たる地位を築くこととなる。2011年、菊地成孔主催のDCPRGに参加。同年5月には、Marty Friedmanの1ヵ月に及ぶEUツアーに同行。同年12月25日、C4@新宿LOFTのライブにて、C4に正式加入を発表。現在は自身のソロ活動と並行して、C4、DC/PRGなど、多方面で精力的に活動中。

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