カンヌ最高賞受賞『ザ・スクエア』を北欧女子オーサはどう観た?

カンヌ最高賞受賞『ザ・スクエア』を北欧女子オーサはどう観た?

インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:中村ナリコ 編集:山元翔一

『第70回カンヌ国際映画祭』のコンペティション部門で上映され、最高賞である「パルムドール」を獲得したリューベン・オストルンド監督・脚本によるスウェーデン映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』が、4月28日より日本でも公開されている。

主人公は、ストックホルムの現代美術館でキュレーターを務める中年男性。新たに展示予定のインスタレーション『ザ・スクエア』で、通りかかる人たちに利他的な行いを促す試みを考えている。環境問題や慈善活動に積極的に取り組み、周囲の尊敬を集める彼が、ある愚かな行動をキッカケに「恥ずべき状況」へと陥っていくストーリー。スウェーデンを舞台にした本作を観て驚くのは、「北欧」と聞いて私たち日本人が思い描くイメージ(オシャレな家具、福祉の行き届いた幸せな社会など……)とは程遠い世界が広がっていることである。富裕層と貧困層は住むエリアが区切られ、街を物乞いがさまよっている。スウェーデンについて知らないことが、まだまだたくさんあるのだということを改めて思い知らされた。

そこで今回、日本を拠点に活動するスウェーデン人イラストレーターで、漫画『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』でも知られるオーサ・イェークストロムに、この映画を一緒に観てもらい、作品の感想とともにスウェーデンの現状について、話を訊くことにした。

スウェーデンは、北国で寒いから無口の人が多いんです。

—まずは映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(以下、『ザ・スクエア』)を観たオーサさんの感想から聞かせてください。

オーサ:面白かったですよ。ただ気になったのは、主人公のクリスティアンが、デンマーク人なんですよね。

―映画の舞台はスウェーデン・ストックホルムだけれど、主人公はデンマーク人のようですね。主人公を演じたクレス・バングもデンマークの方です。

オーサ:そうですね。私はデンマーク語があまりよくわからないので少し困りました。私のわかる範囲のデンマーク語と、日本語の字幕でなんとか理解できたし、勉強にはなりましたけど(笑)。

オーサ・イェークストロム
オーサ・イェークストロム

オーサ:それと、『ザ・スクエア』で描かれているストックホルムは、もしかしたら現在よりも少しだけ未来に設定されているのかなって思いました。たとえば映画に出てくるギャラリーは、ストックホルム宮殿をベースにしています。スウェーデンでは、王室制度を今後どうしていけばいいのか議論の的になっていますので、それを皮肉っているのかもしれないですね。近い将来、王室制度がなくなって、宮殿はギャラリーになるんじゃないか? と。

—日本に置き換えてみると、美術館になった皇居が舞台の映画を観ている感じですかね。映画のなかで印象に残っているのは?

オーサ:クライマックスのパーティーのシーンは一番面白かったですね。「何がアートで、何がアートじゃないのか?」という境界線をテーマにした映画はこれまでにもたくさんありましたが、それと「傍観者効果」を結びつけた映画は珍しいのかなと思いました。

—ある事柄に対して、自分以外に傍観者がいるときに率先して行動を起こさない心理を「傍観者効果」と呼ぶそうですね。日本人は「傍観者効果」に陥りやすい国民性だと思うのですが、映画を観るとスウェーデン人もそうなのですか?

オーサ:目立つことが恥ずかしいというのもそうだし、誰か困っている人がいても、見て見ぬ振りをしてしまうところはありますね。結局シャイなんですよね、知らない人の前で意見を言うのも苦手だし。たとえばマジックショーなどで、マジシャンが観客を呼び込むことがあるじゃないですか。ああいうとき、私はいたたまれなくなります(笑)。ただ、シャイになっている理由は、日本人とスウェーデンでは違うのかもしれないとも思います。

—というのは?

オーサ:スウェーデンは、北国で寒いから無口の人が多いんです。そういう理由でシャイなところがあるんだと思う。スウェーデン人は、個人主義で一人ひとりの考え方を尊重しているけど、日本人は集団的な考え方が一般的です。周りの人を気にして、みんな一緒じゃないと落ち着かないところがありますよね? そこの違いは大きいと思います。

オーサ・イェークストロム

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作品情報

『ザ・スクエア 思いやりの聖域』
『ザ・スクエア 思いやりの聖域』

ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマ、立川シネマシティほか全国順次公開中

監督・脚本:リューベン・オストルンド
出演:
クレス・バング
エリザベス・モス
ドミニク・ウェスト
テリー・ノタリー
ほか
上映時間:151分
配給:トランスフォーマー

書籍情報

『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議4』

著者:オーサ・イェークストロム
2018年2月22日(木)発売
価格:1,188円(税込)

プロフィール

オーサ・イェークストロム

1983年生まれ、スウェーデン出身。子どもの頃、アニメ『セーラームーン』と漫画『犬夜叉』に影響を受けて漫画家になることを決意。スウェーデンでイラストレーター・漫画家として活動後、2011年に東京へ移り住む。一番好きなアニメは『少女革命ウテナ』、一番好きな漫画は『ナナ』。これまでに『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』1~4、『北欧女子オーサのニッポン再発見ローカル旅』、『さよならセプテンバー』を発表。

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