Iceageインタビュー 世界幸福度3位の国で生まれたパンクの背景

Iceageインタビュー 世界幸福度3位の国で生まれたパンクの背景

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:Kana Tarumi 編集:山元翔一
2018/05/07
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ハードコアやポストパンクを飲み込んだ音楽性で、それまでの「北欧」の音楽的なイメージを打ち破り、世界中に衝撃を与えたデンマーク・コペンハーゲン出身のロックバンドIceage。彼らが、新作『Beyondless』のリリースに先立って、日本ツアーを敢行した。昨年Fikaでは、バンドと親交の深い原宿のレコードショップ兼レーベル「BIG LOVE」の仲真史にインタビューを行ったが、そのときの内容も踏まえ、メンバー4人にコペンハーゲンシーンの実態、特に彼らが活動初期に拠点としていたヴェニュー「メイヘム」について、改めて話を訊いた。

実際に取材をして感じたのは、彼らのDIY精神とアートに対する透徹な目線(ここでの「DIY」は、ハードコアカルチャーにおける反資本主義的なインディペンデント精神の意味合い)。メイヘムで起こっていたのは特別目新しいことだったわけではなく、世界中に点在するDIYシーンとリンクするものであり、今回のツアーで東京のハードコアの老舗ライブハウス「東高円寺二万電圧」でライブが行われた意味もよくわかった。しかし、裕福な国として知られるデンマークの首都が発火点となり、なおかつ、それがインターネットを通じて世界中に発信されたというのは前例のないこと。やはりIceageの登場は「事件」だったのだと思う。

それまで聴いてきた音楽は、俺たちが言ってほしいことを何も言ってくれないものが大半だった。(エリアス)

—Iceageの登場は、それまで抱いていた「北欧」のイメージを大きく覆すものでした。結成当時、デンマークやコペンハーゲンの音楽カルチャーに対して帰属意識があったのか、それとも、当時のリリース元だった「Escho」が紹介していたようなアメリカのアンダーグラウンドシーンへの憧れがあったのか、実際はいかがでしたか?

ヤコブ(Ba):うーん。どちらかというと、世界中の良質な音楽から影響を受けてきたんじゃないかな?

エリアス(Vo,Gt):そうだと思う。とはいえ、「ロンドンやニューヨークのあのバンドみたいにしよう」みたいなつもりはなかった。その意味では、俺たちはいつだってコペンハーゲンのバンドだったと言えるけど、これまでになかった音楽を作ってきたと自負している。コペンハーゲンのバンドが好きだったわけでもない。新しいコペンハーゲンの音楽を作ったんだ。

左から:ヤコブ、エリアス、ダン、ヨハン
左から:ヤコブ、エリアス、ダン、ヨハン

—日本では「北欧メタル」というジャンルが確立されているくらい、北欧においてはメタルの支持が厚いというイメージがあります。Iceageの音楽に対して、ブラックメタルの影響を指摘する人もいますが、それについてはいかがですか?

ヤコブ:いや、それはないかな。ブラックメタルの本場はノルウェーだし。

ダン(Dr):デンマークでブラックメタルが流行ったことはないんじゃないかな?

ヤコブ:うん、デンマークじゃブラックメタルはものすごくアンダーグラウンドなものだからね。

ヨハン(Gt):子どもの頃はブラックメタルを聴いていたヤツも周りにいたけど、今は特にいないし、俺たちの音楽に織り込まれているとも思わないな。

エリアス:俺も影響はないと思う。まあ、10代の頃は魅力を感じていた時期もあったな。危険な魅力があったんだけど、だからといってインスピレーションを受けたわけじゃないね。

エリアス
エリアス

Iceage『You're Nothing』(2012年)収録曲

—デンマークは幸福度の高い国(3月に国連によって発表された「世界幸福度ランキング2018」で3位。1位のフィンランド、2位のノルウェーをはじめ、北欧諸国が上位にランクインしている)として日本でもよく知られています。そういった環境から、何かを渇望するような感覚や、パンク / ハードコアに通じるDIY精神を持ったIceageのようなバンドが登場したことは面白いことだと思っていて。バンドをはじめるにあたって、コペンハーゲンでの生活そのものに退屈さやフラストレーションを感じていたことが、みなさんの原動力になっていたのでしょうか?

ダン:そうだな……無意識下では退屈していたのかもしれないね。

ヤコブ:僕は退屈だったし、フラストレーションも感じてたよ(笑)。バンド以外にすることもなかったしね。

エリアス:それまで聴いてきた音楽は、自分たちに語りかけてくれるものもあったけど、俺たちが言ってほしいことを何も言ってくれないものが大半だった。だから自分たちでバンドを組んで、言いたいことを言う必要があった、ということは確かだよ。

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リリース情報

Iceage『Beyondless』
Iceage
『Beyondless』(CD)

2018年5月4日(金)発売
価格:2,376円(税込)

1. Hurrah
2. Pain Killer
3. Under the sun
4. The day the music dies
5. Plead the fifth
6. Catch it
7. Thieves like us
8. Take it all
9. Showtime
10. Beyondless
11. Broken hours [Bonus Track for Japan]

プロフィール

Iceage
Iceage(あいすえいじ)

2008年にデンマークはコペンハーゲンで結成された4人組ロックバンド。2011年のデビューアルバム『New Brigade』が ピッチフォークで「Best New Music」(8.4点)を獲得、多数の年間ベストに選出された。2012年には単独公演と『Summer Sonic』出演で2度の来日を果たした。2013年、米名門レーベル「Matador」に移籍し2作目『You're Nothing 』を発表。数々のメディアで高く評価された。2014年10月に3作目『Plowing Into the Field of Love 』をリリース。2018年5月4日、4thアルバム『Beyondless』をリリースした。

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