「うちはうち、よそはよそ」。裕福な家庭ではなかった幼少期
―むしろ、若手芸人ならではの貧乏暮らしを楽しんでいたわけですね。
コカド:週4でバイトしてラクに暮らすよりも、週2でバイトして経済的にはきついけど好きなことをやっているほうが楽しいと思ってしまうんですよ。そもそも、うちは裕福な家庭ではなかったから何十年もお金がない生活をしていたし、むしろお金持ちはダサいみたいな教育をされてきているから、贅沢な暮らしをしたいという欲求がないんです。
「うちはうち、よそはよそ」という教えが強かったですし、ブランドものを持っている人に対するおかんの嫌悪感もすごく強くて。「あんなん高いだけやのにな」っていう言葉を小さな頃から聞かされているから、興味を持てなくなったのかもしれないですね。
―相方の中岡さんもコカドさんと同じようなメンタリティーですか?
コカド:似ているかもしれないですね。ロッチを組んでから「1番になろう」とは二人とも言ったことはないし、高いものが好きとか、自分を大きく見せようとかもないはず。ただ、ぼくがマイペースすぎるので、それで中岡くんがイライラすることはありますけど(笑)。
好きなものが変わらないからこそ、変わりたい。自分の感情をグッと盛り立ててくれるものを求めて
―コカドさん自身、これから50代に向けてどのようなキャリアを歩んでいきたいと考えているのでしょうか?
コカド:未来のことについて考えてもその通りになることのほうがきっと少ないだろうから、現状の活動ペースを維持しながら、たまに自分が考えていないようなことが舞い込んできたらいいなと思っています。
じつは今年の2月に『あの頃。』という映画に出演させてもらったんですね。自分の人生においてそんなことが起こるなんて想定もしていなかったんですけど、すごく充実した日々を過ごすことができて。「こんな世界もあるんや」って驚きと発見がたくさんありました。だから、自分の頭のなかでは考えもつかない出来事が起きたらいいなと考えています。
―思いもよらないことがあってほしいというのは、刺激がほしいということ?
コカド:刺激がほしいというよりは、出会ったことのない景色を見てみたい気持ちが強いのかもしれないですね。40歳になってから1年に1度は未経験のことに挑戦しようと思ってゴルフやサーフィンなんかにチャレンジしているんですけど、それも自分でやろうと決めたというより、人からおすすめされてやってみたんですよね。
そしたら、めちゃくちゃ楽しめている自分がいるっていう。サウナも嫌いだったんですけど、誘われて行ってみたらハマりましたし。だから「これ、楽しいよ」って人から言われたことはできるだけ挑戦してみるようにしています。
―好きなものは変わらないのに、コカドさん自身は変化を求めているのが不思議な気持ちになります。
コカド:好きなものが変わらないからこそ、変わりたいという気持ちがあるのかもしれないですね。お笑いの仕事以外に興味が持てるものはないし、流行りの洋服にも心が惹かれないし、愛車は一生乗りたいと思っていますし。だから、自分の感情をグッと盛り立ててくれるものを求めているのかもしれませんね。
―表現的には少しチープかもしれないですが、「新しい自分が見つかる」みたいなことでしょうか?
コカド:「自分の考えにない世界があんねや」という発見がうれしいですよね。だから、海外旅行も一度訪れたところに何度も行くより、違う場所に行きたいんですよ。でもぼくの周りにいる人たちはみんなハワイがいいって言うんですけど(笑)。
プロフィール
- コカドケンタロウ
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1978年生まれ、大阪府出身。中岡創一とお笑いコンビ「ロッチ」を結成。『キングオブコント』ファイナリストになるほか、『爆笑レッドシアター』などのネタ番組にも数多く出演。コントを中心とした単独ライブも定期的に開催。古着好きとしても有名で、趣味は古着やビンテージ家具の収集、サーフィン、サウナ、ドライブ、料理など。