フィンランドの神秘的な森で学んだ、北欧フラワーデザインの魅力

フィンランドの神秘的な森で学んだ、北欧フラワーデザインの魅力

2021/11/24
インタビュー・テキスト
羽佐田瑶子
撮影:タケシタトモヒロ 編集:川谷恭平

花や植物との暮らしを楽しむフィンランドの人々。国土の約7割が森林で、無数の湖が点在していることから「森と湖の国」と呼ばれています。世界中で愛されている北欧デザインのインテリアは、厳しい冬が長く続き、屋内にいる時間が長いことから「植物」や「自然」のモチーフが多い。同じく、自宅に飾られる花束(北欧フラワー)もまた、「植物をよく見ることから生まれる『発見』によってつくられている」とヘンティネン・クミさんは話します。

クミさんは幼い頃から華道を学び、北欧フラワーデザイン発祥の地であるフィンランドの国立ケンペレン花卉芸術学校マスタ―フローリスト科に進学。帰国後は「北欧フラワーデザイン協会・フラワースクールLINOKA Kukka」を立ち上げ、スクールやショップを運営するなど、積極的に北欧の花文化を発信しています。

台東区にあるLINOKA Kukkaで、フィンランドでの生活や人々と花の関係性など、北欧のフラワーデザインの魅力について話をうかがい、後半では「VOLVO STUDIO AOYAMA」に移動。VOLVOのフラグシップモデル「V90」に、北欧フラワーを飾っていただきました。

森にある植物を素材に、ハンドワークによってユニークなデザインをつくる

―華道やヨーロピアンスタイルといった、大まかに国ごとのフラワーデザインがあることは認識していますが、「北欧のフラワーデザイン」というのはどのような特徴や魅力があるのでしょうか?

クミ:一番は、デザイン性ですね。北欧は一年をとおして冬が長く、寒いので、お花の種類が豊富ではないんです。それに、物価が高いのでお花一本買うのもお金がかかる。バラなんて、高い時期は一本1,500円近くします。

なので、フローリストたちは、森にある植物を材料に、ハンドワークによって価値を高めて、ユニークなフラワーデザインを好んでつくります。私にその面白さを気づかせてくれたのはフィンランドの雄大な森と、師匠であるヨウニ・セッパネン氏のおかげです。

セッパネンは北欧フラワーデザインのパイオニアのような存在で、数々の世界大会でもチャンピオンになっています。私は彼のもとで5年間パーソナルアシスタントをしたのち、独立しました。

<b>ヘンティネン・クミ</b><br>池坊学院華道芸術家師範科を卒業。大手百貨店フラワーショップのチーフを10年間務めたあと、13年間に渡りイギリス、オランダ、フィンランドで花事業に携わる。フィンランドでは、国立ケンペレン花卉芸術学校マスターフローリスト科を卒業し、「フラワーショップ 梨乃花 LINOKA Kukka Ltd.」を設立。日本大使館をはじめとする各国大使館および、デザイナーズホテルの花装飾を経験。帰国後、「北欧フラワーデザイン協会・フラワースクールLINOKA Kukka」を立ち上げ、東京を拠点に、北欧フラワーデザインの技術や魅力を伝える。
ヘンティネン・クミ
池坊学院華道芸術家師範科を卒業。大手百貨店フラワーショップのチーフを10年間務めたあと、13年間に渡りイギリス、オランダ、フィンランドで花事業に携わる。フィンランドでは、国立ケンペレン花卉芸術学校マスターフローリスト科を卒業し、「フラワーショップ 梨乃花 LINOKA Kukka Ltd.」を設立。日本大使館をはじめとする各国大使館および、デザイナーズホテルの花装飾を経験。帰国後、「北欧フラワーデザイン協会・フラワースクールLINOKA Kukka」を立ち上げ、東京を拠点に、北欧フラワーデザインの技術や魅力を伝える。
北欧フラワーデザイン協会・フラワースクールLINOKA Kukka
北欧フラワーデザイン協会・フラワースクールLINOKA Kukka

フィンランドの「型にとらわれない自由な発想」があまりにも美しくて

―シンプルで洗練された北欧らしいデザインが、LINOKA Kukkaのブーケにも生かされていると思いました。日本ではあまり見たことがない、自由なデザインですよね。まずはクミさんが花に興味を持ったきっかけから教えてください。

クミ:13歳で生け花を習い始めたことがきっかけで花が好きになり、生け花の名門である池坊短期大学、池坊文化学院に進学しました。しかし、華道は飾り方や使う花の本数など伝統継承のためのルールがあるので、自由なアレンジを好んでいた自分には合っていないんじゃないかと思うようになって。

ちょうど同時期に「ヨーロピアンフラワーアレンジメント」というものを知ったんです。華やかで、すてきで。大学に通いながらヨーロピアンも習い始めたら、華道の癖がヨーロピアンに出てしまったり、逆も起こったりで、ぐちゃぐちゃになったんですね(笑)。

結局、百貨店の花屋に就職したものの、ずっと「自分の求めているフラワーデザインと、なんか違う」と思っていました。花屋ではブーケやアレンジメントを作っていましたが、やはり花を売ることがメインです。「もっとデザインしたい」というモヤモヤした気持ちを抱えたまま10年目に入り、働きすぎて体調を崩してしまったのです。

そのときに、人生をもう一度考え直して、私がやりたいのはもっとクリエイティブなものなんじゃないかと思って、ヨーロッパに行くことを決めました。英語も喋れないし、行くあてもなかったんですけどね。

ヘンティネン・クミ

―イギリス、オランダでお花を学んだそうですね。各国のフラワーデザインは違うものなのでしょうか?

クミ:スタイルが全然違いました。日本だと「ヨーロピアンスタイル」と一括りにされますけど、イギリスとオランダでも全然違う。まず、育つ花の種類が異なるので、見た目もテイストも違いました。その背景には、それぞれの国の自然環境や文化、風習、歴史などが反映されているんだと実感しましたね。

―北欧フラワーデザインとはどのような経緯で巡り合ったのでしょうか?

クミ:ヨーロッパで学んでみてもモヤモヤは晴れなかったのですが、あるとき、オランダで行なわれた4年に一度のフラワーデザインの世界大会のチケットをもらい、そこで見たフィンランドのフローリストのデザインに一番感動したんです。

あまりにも美しくて、クリエイティブで。フィンランドに行けばこれまで学べなかった「型にとらわれない自由な発想」で、フラワーデザインができるんじゃないかと思いました。この大会で偶然、師匠と話をすることができ、このご縁により、北欧に留学することが決まりました。

ヨウニ・セッパネン氏の著書(左・真ん中)とクミさんの著書『森の植物が教えてくれた北欧フィンランドのフラワーデザイン』(六耀社)(右)
ヨウニ・セッパネン氏の著書(左・真ん中)とクミさんの著書『森の植物が教えてくれた北欧フィンランドのフラワーデザイン』(六耀社)(右)

植物をよく見て、敬意を払うことが北欧フラワーの原点

―北欧で学ばれたなかで、他国との違いを一番感じたのはどういった点ですか?

クミ:オランダは「花大国」とも呼ばれる国で、花を使う量のすごさや、華やかさにに驚かされたんですが、一方、フィンランドは「どうやってつくっているんだろう?」と見入ってしまうような、デザインが凝ったものが多かったです。

枝や葉っぱを組み立てて、一つの作品にする。お花が少ないけれど、デザインで感動するっていう経験が一番ありました。先ほども話したように、フィンランドはお花の値段がすごく高い。一年の半分が冬なので、花は輸入に頼っている部分も多く、夏以外は温室で育てなければいけない環境のため値段が張るんです。

その代わり、自然から採取できる植物で、廃材になる白樺やコケを活用しながら、「人が手を加える」ことに付加価値を見出すのです。凝ったものであるほど値段は上がりますが、デザイン性が育まれていく。ただ、そこには植物の植生や生態を理解することが必要なんです。

クミさんが触っている白いコケのようなものがフィンランディアモス
クミさんが触っている白いコケのようなものがフィンランディアモス
フィンランドの森のなかでも、フィンランドモスは痩せた土地の赤松などの木の下によく見られるそう(写真:クミさん提供)
フィンランドの森のなかでも、フィンランドモスは痩せた土地の赤松などの木の下によく見られるそう(写真:クミさん提供)

―植物に関する知識が、デザインに関係するということですか。

クミ:そうなんです。形やデザインを表面的にまとめても、植物が育つ環境などを理解し、説明できなければ北欧フラワーデザインは成り立ちません。

北欧には、通常の大学と並んで、専門的な知識を学ぶ「高等職業専問学校」があるんです。植物関連に特化した学校もあり、若いうちから自然に対する知識をしっかり学べます。私も高等職業専問学校にあたる「ケンペレン花卉芸術学校」に進学して、働きながら植物のことをしっかり学びました。

日本の生け花と同じで、北欧フラワーデザインも植物の植生や生態を知って、よく観察して、敬意を払うことが最も大切とされています。なので、師匠からは「森を見なさい」とたびたび言われました。森の植物をよく見ることから新たな発見が生まれて、型にとらわれない自由なデザインをつくることができると教わるんです。

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プロフィール

ヘンティネン・クミ

池坊学院華道芸術家師範科を卒業。大手百貨店フラワーショップのチーフを10年間務めたあと、13年間に渡りイギリス、オランダ、フィンランドで花事業に携わる。フィンランドでは、国立ケンペレン花卉芸術学校マスターフローリスト科を卒業し、ヘルシンキに「フラワーショップ 梨乃花 LINOKA Kukka Ltd.」を設立。日本大使館をはじめとする各国大使館および、デザイナーズホテルの花装飾を経験。帰国後、「北欧フラワーデザイン協会・フラワースクールLINOKA Kukka」を立ち上げ、東京を拠点に、北欧フラワーデザインの技術や魅力を伝える。

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