男女平等1位のアイスランド。「主婦の学校」の教えを監督が語る

男女平等1位のアイスランド。「主婦の学校」の教えを監督が語る

2021/10/14
テキスト
村尾康郎
編集:後藤美波

家事は家族で分担するのが「普通のこと」。女性運動の転換点となった1970年代のストライキ

―男女で家事を分け合う、という習慣はアイスランドの伝統なのでしょうか? それとも、意識して変えてきたことなのですか。

トルス:1975年に女性たちによるストライキがあって、その影響は大きいと思います。その日、女性たちは家の仕事をせず、街に集結して女性の権利や男女平等を求めました。その後、女性が政治に関わるようになってからは、女性が家庭の外で仕事ができる環境がつくられていったんです。ストを決行した日はいまも祝われていて、その日は1日、女性は仕事を休んで街に繰り出します。

『〈主婦〉の学校』 © Mús & Kött 2020
『〈主婦〉の学校』 © Mús & Kött 2020

―アイスランドでは1980年に民選では世界初となる女性の大統領が誕生。女性の国会議員比率が高いことでも注目されていますが、1970年代から始まった運動が身を結んだわけですね。

トルス:ただ、私の亡くなった祖母は、男性と同じような権利を求めた段階で、女性は自分たちの力を失ってしまったと考えていました。

かつては女性が家のすべてを掌握していました。子どもたちのこと、さらには夫のこともコントロールできていた。男性たちが社会の中心になっていたとしても、家庭では女性が采配を振るっていたのです。でも、女性が働きに出ることで家庭をコントロールできなくなった。それが女性の力を失うことになってしまう、というのが祖母の考え方だったんです。

―なるほど。主婦は家事をこなすことで、家庭に影響力を持っていたわけですね。

トルス:もちろん、無理やり家に縛りつけられていた女性もいただろうし、女性が仕事をする機会や男女平等は求めるべきです。でも、祖母の考えにも一理あると思っています。

祖母には子どもが5人いたのですが、祖母は家のことを完全に掌握していて、家計の支えは祖父が稼いでくるという家庭でした。それでバランスが取れていたのです。ただ、いまの社会で5人も子どもがいたら、夫の稼ぎだけでは生活できないので女性も働きに出なければいけないでしょうね。

『〈主婦〉の学校』 © Mús & Kött 2020
『〈主婦〉の学校』 © Mús & Kött 2020

―子どものいる人が仕事と家事を両立するのは大変だと思いますが、パートナーと家事が分業されているのであれば助かりますね。

トルス:我が家の場合、夫が料理好きで洗濯が苦手なんです。なので、私が洗濯をして夫が料理をすることが多い。夫には娘が2人、私には息子が1人いて、一緒に暮らして10年になりますが、食事をしたあとは夫の娘たちが後片づけをするなど、家族で家事を分担しています。特に役割を決めてそうしたのではなく、自然にそうなったのです。

―とてもいいバランスですね。国際的にみて日本は子どものいる家庭における男性の家事分担率が低く、うまく家事の分担ができていないのが現状です。

トルス:私たちにとっては、男性も女性と同じくらい家事をするのが普通のことなので、日本でそうじゃないのが不思議なくらいです。

学校初の男子学生だった卒業生 『〈主婦〉の学校』 © Mús & Kött 2020
学校初の男子学生だった卒業生 『〈主婦〉の学校』 © Mús & Kött 2020
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作品情報

『〈主婦〉の学校』
『〈主婦〉の学校』

2021年10月16日(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

監督・脚本:ステファニア・トルス
出演:
アゥスロイグ・クリスティヤンドッティル
グナ・フォスベルグ
ラグナル・キャルタンソン
グズムンドゥル・インギ・グズブランドソン
上映時間:78分
配給:kinologue

プロフィール

ステファニア・トルス

アイスランド・レイキャビク出身の映像作家。プラハで演劇を学び、舞台芸術アカデミーで修士号を取得。在学中に編集助手を務め、2007年に初の長編映画『The Quiet Storm』の編集を担当。その後、アイスランドに戻り、映画編集者として活躍している。本作がドキュメンタリー監督デビュー作。

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