自由への渇望と恋、ムーミンの物語。『TOVE』監督が語るトーベ

自由への渇望と恋、ムーミンの物語。『TOVE』監督が語るトーベ

2021/09/30
インタビュー・テキスト
村尾康郎
編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)

「トーベは才能と勇気で、私たち後世の女性アーティストのために道を開いてくれました」

―映画ではトーベがダンスをするシーンが印象的に使われています。エンドロールには実際のトーベ・ヤンソンがダンスする映像も使われていますが、ダンスは情熱的で自由を愛した彼女のキャラクターを象徴するようなアクションですね。

バリルート:映画でトーベを演じたアルマ・ポウスティのおばあさんが実際にトーベと仲が良くて、アルマからトーベはダンスが大好きだったことを聞いたんです。音楽がかかるとダンスせずにはいられなかったそうです。しかもトーベはダンスの仕方がちょっと変わっていて、リズムに合わせて踊ることも、わざと崩して踊ることもできて自分のスタイルを持っていた、と聞きました。

『TOVE/トーベ』 © 2020 Helsinki-filmi, all rights reserved
『TOVE/トーベ』 © 2020 Helsinki-filmi, all rights reserved

バリルート:劇中のダンスシーンは、リハーサルでアルマがダンスを通じてさまざまな感情を表現してくれて、「これは使える!」と思って映画に取り入れることにしました。最後の映像は、トーベの記録映像を見ているときに見つけたんです。トゥーリッキが島で撮影したもので、私たちにとってとても特別な映像だったので使うことにしました。ダンスは生きることを祝福する表現でもあると思います。「ダンスをできるときは、ダンスすべきだ」ということを、誰もがモットーにしてほしいですね(笑)。

―トーベは1950年代に『ムーミン』で有名になったあとも、絵画、イラスト、小説とさまざまな分野で作品を発表しました。当時、これだけ多彩な活動をした女性アーティストは珍しかったのではないかと思うのですが、フィンランドではどうだったのでしょうか。

バリルート:フィンランドでも彼女のようなアーティストはいなかったと思います。当時、女性アーティストが創作活動と家庭を両立させることはとても難しく、どちらかを選ばなくてはいけなかった。トーベはイラストレーターとして生計を立てることができたので、創作活動を維持することができたんです。彼女は持ち前の才能と勇気で、私たち後世の女性アーティストのために道を開いてくれました。

『TOVE/トーベ』 © 2020 Helsinki-filmi, all rights reserved
『TOVE/トーベ』 © 2020 Helsinki-filmi, all rights reserved

―監督はこれまで映画の仕事をしてきて、女性であるがゆえの苦労を感じたことはありますか?

バリルート:私は運が良くて、母が画家だったんです。母は小さな村の出身で、母の両親は母がアーティストになることを反対していましたが、彼女はトーベと同じくらい決意が固かった。そんな母親のもとで育ったことは、私がアートの道に進むことをラクにしてくれました。

15歳のとき、母に「撮影監督になりたい」と告白すると、彼女は「なんていいアイデアなの!」と言って背中を押してくれたんです。その後、キャリアを歩むなかで壁にぶつかることもありましたが、大きな問題はありませんでした。完全に男女平等とは言えませんが、フィンランドでは男女監督の比率は50:50くらいなんです。

―同じ比率なんですか。それはかなり進んでいますね。お母さんが画家だということですが、トーベと会ったことはありますか?

バリルート:私はありませんが、母は会ったことがあるそうです。ヴィヴィカは一度、我が家にスパゲッティーを食べに来ました(笑)。

『TOVE/トーベ』 © 2020 Helsinki-filmi, all rights reserved
『TOVE/トーベ』 © 2020 Helsinki-filmi, all rights reserved

―それは微笑ましい(笑)。今回、映画を通じてトーベという人物に向き合って、いちばん強く感じたことは何ですか?

バリルート:彼女の自由さです。彼女は自分の価値観を曲げることなく、まっすぐに、ありのままに生きた。彼女は人生を祝福していました。だからパーティーも大好きだったんです。彼女のパーティーに参加した人が、この映画を見て言いました。「映画のパーティーのシーンはすごく良かった。でも実際はもっとワイルドだったよ」って(笑)。

―ムーミン谷の住人たちもお祭りやイベントが大好きですよね。ちなみに監督が好きな『ムーミン』のキャラクターは?

バリルート:どのキャラクターにも共感しますし、その日の気持ちにもよりますが、あえて選ぶならミィですね。彼女の反骨精神が好きなんです。

『TOVE/トーベ』予告編

Page 3
前へ

作品情報

『TOVE/トーベ』
『TOVE/トーベ』

2021年10月1日(金)より新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国ロードショー

監督:ザイダ・バリルート
出演:
アルマ・ポウスティ
クリスタ・コソネン
シャンティ・ロニー
ヨアンナ・ハールッティ
ロバート・エンケル
脚本:エーヴァ・プトロ
音楽:マッティ・バイ
上映時間:103分
配給:クロックワークス

プロフィール

ザイダ・バリルート

1977年フィンランド・キヴィヤルヴィ出身。『僕はラスト・カウボーイ』(2009)、『グッド・サン』(2011)、『マイアミ』(2017)などで知られる。世界各国の映画祭へ出品され、『釜山国際映画祭』や『シカゴ国際映画祭』などで受賞を果たしている。本作は彼女にとって5本目の監督作となる。

感想をお聞かせください

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
回答を選択してください

ご協力ありがとうございました。

Category カテゴリー

What's "Fika" ? フィーカとは

「Fika」はCINRA.NETとVOLVOが送る、北欧カルチャーマガジンです。北欧デザインの思想の基盤を「クラフトマンシップ×最先端技術」と捉え、そこに学びながら、これからのカルチャーやライフスタイルにまつわるコンテンツをお届けします。