福祉業界に投入した「ファッション」という起爆剤。平林景が語る

福祉業界に投入した「ファッション」という起爆剤。平林景が語る

2021/09/28
インタビュー・テキスト
飯嶋藍子
写真提供:JPFA 編集:飯嶋藍子、CINRA.NET編集部

車椅子に乗る人が実際にこぼした「オシャレは諦めた」という言葉には、どんな真意があるのだろう?

その言葉をきっかけに、一般社団法人日本障がい者ファッション協会(JPFA)を立ち上げ、「『福祉×オシャレ』で世の中を変える」というスローガンを掲げたのは平林景。「福祉業界のオシャレ番長」という二つ名を持つ平林は、元美容師であり、美容専門学校の教員も務めた。その後、障がいを持つ児童が学校の授業を終えたあとや休業日に通う放課後等デイサービスを設立し福祉の道へ進み、現在は障がいの有無や性別、年齢関係なく、誰でも着用できるボトム「bottom'all(ボトモール)」でパリコレを目指している。

今回は、福祉とファッションの関係性、日本と北欧が持つ教育・福祉に向ける目線、そして本人もADHDである実体験などを、じっくり語ってもらった。

「できないことをできるようにする」が主流の日本の療育に感じた疑問

―美容師からのキャリアチェンジですが、平林さんはもともと福祉について興味があったのでしょうか?

平林:いえ、美容師をしていた頃は福祉との関わりはありませんでした。美容学校の教員になったときに発達障がいを抱えている人と出会って興味を持ち始めたんです。あと、自分自身も結構デコボコな特性だったというか。いまは診断してもらって、そのデコボコさの理由がADHDだとわかったんですけどね。

平林景(ひらばやし けい)<br>一般社団法人日本障がい者ファッション協会(JPFA)代表理事。1977年生まれ、大阪府出身。美容師、美容専門学校の教員を経て、放課後等デイサービスを設立し、独立開業。「『福祉×オシャレ』で世の中を変える」をモットーに、X-styleファッションブランド「bottom'all」とその同名ボトムを展開。2022年秋のパリコレへの出展に向け挑戦中。
平林景(ひらばやし けい)
一般社団法人日本障がい者ファッション協会(JPFA)代表理事。1977年生まれ、大阪府出身。美容師、美容専門学校の教員を経て、放課後等デイサービスを設立し、独立開業。「『福祉×オシャレ』で世の中を変える」をモットーに、X-styleファッションブランド「bottom'all」とその同名ボトムを展開。2022年秋のパリコレへの出展に向け挑戦中。

―教員時代の出会い、さらに自分自身の特性に対しての思いが、福祉の道へ進むきっかけになったのでしょうか?

平林:そうですね。ADHDによく見られる特性が自分にあることは診断してもらう前からわかっていたんです。たとえば、できることとできないことってみなさんあると思うのですが、その差が極端なんですよ。

でも、日本の療育(障がいのある子どもの個々の特性に応じて、自立した生活を送れるように支援すること)のシーンは「できないことをできるようにする」という風潮で、できないことを少なくすることで社会的困難をなくしていくスタイルが主流ですよね。もちろんそれ自体は悪くはないのですが、ぼくは「できないことをできるようになる」というのを、もう随分はやい段階で諦めたというか、向いてないなと思ったんです。

―できないことをできるように、というのは、障がいの有無にかかわらず、日本の教育現場で感じることがよくありますよね。その気づきは、平林さんの考え方や行動にどんな変化をもたらしましたか?

平林:まず、できないことをどうこうして生きるのではなくて、自分の「好き」や「得意」を仕事にしたり、自信につなげたりすることのほうが生きる力になるんじゃないかと思うようになりました。ぼくのようなADHDや障がいを持った人が、子どもの頃に自分の好きや得意な部分を伸ばしていれば、できない部分を得意なことで補っていけるんじゃないかと。それを実現するための活動を福祉や教育の現場でできないかと動き始めたのが出発点です。

オシャレと療育の両立。通っていることに優越感を覚えるくらいの施設を

―2019年には、一般社団法人「日本障がい者ファッション協会」(JPFA)を立ち上げられました。福祉とファッションのフュージョンはあまり聞いたことがなかったのですが、一般的に福祉の業界ではファッションはどういうふうに扱われているものなんですか?

平林:いまは福祉業界全体でもファッションの意識はだいぶ変わってきていると思いますが、基本的には二の次な存在です。それは洋服だけではなくて、施設を建てるときにも実感しました。ぼくが「めちゃくちゃオシャレな施設をつくるんですよ!」って福祉関係者に話したら「オシャレよりも、療育にもっとこだわって」と言われて。そのときぼくは、サービスそのものと、空間をごっちゃにして議論するべきではないと思ったんです。実際、たくさんの親御さんと話すなかで、表現は違えどほとんどの方が「明るくて華やかでオシャレな施設に通わせたい」と言っていて。

平林:昔は療育施設って古めかしい病院みたいな雰囲気のところや、なんだか世間や社会から蓋をされているような薄暗い場所が多かったんですよ。でも、ぼくは、そんなところで気持ちが前に向くわけないと思ったんですよね。実際、「仕方がないから、ここに通わせなきゃいけない」と思ってる親御さんも多かった。だから、その価値観ごとひっくり返したいし、利用者に「こんなオシャレなところに通えている!」って優越感が芽生えるくらい、当事者自身が持つ福祉や療育に対する認識を根こそぎ変えたいと思っています。

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プロフィール

平林景(ひらばやし けい)

一般社団法人日本障がい者ファッション協会(JPFA)代表理事。1977年生まれ、大阪府出身。美容師、美容専門学校の教員を経て、放課後等デイサービスを設立し、独立開業。「『福祉×オシャレ』で世の中を変える」をモットーに、X-styleファッションブランド「bottom'all」とその同名ボトムを展開。2022年秋のパリコレへの出展に向け挑戦中。

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