駐日フィンランド大使館の公式マスコット「フィンたん」をご存知だろうか。「金髪碧眼の7歳の男の子」という設定で、現在約14万人のフォロワーを誇るTwitterアカウントでは、硬軟織り交ぜたウィットに富んだツイートと、その情報発信力の高さで、近年多くの人々から注目を浴びている。
片や、ユニークなホームページと巧みなSNS使いで高い人気を誇る、北欧を中心とした家具や雑貨を販売するECショップ「scope」の名物「シャチョウ」である平井千里馬。
今回は、北欧の魅力を知り尽くし、それをユニークな方法で日本に伝え続ける両者による「魅力の伝え方」対談が実現。自身のキャラクターと軽妙な文体によって多くのファンを持つ二人は、どんな考えを持ってSNSを利用しているのだろうか。そこには、どんなマーケティングやPR戦略があるのだろうか。
しかし、口を開いた二人からこぼれ出たのは、こちらの予想とは異なる、至極素直で真っ当な「戦略の無さ」なのだった。「SNSとの付き合い方」という意味でも多くの示唆に富んだ異色対談。
フィンランドのものって、日本とすごく相性がいいんですよね。無駄が無くて機能的なんです。(シャチョウ)
—まずは、フィンたんについて教えてください。フィンたんは、いつ頃、どんなふうに生まれたのでしょう?
フィンたん:大使館のTwitter自体は2011年から始まってました。大使館というと敷居が高いというか、ちょっと取っつきにくいところがあるでしょ? だから、それを取り払って、馴染みやすいものにしたいという思いがあったんです。それで、だんだんいまのような砕けた感じの文体になりました。
で、あるときTwitterで「ねえねえ、フィンたん」って呼び掛けてくれた人がいて、「それ、可愛いじゃん」ってなって。そうなったら今度は「顔」が欲しいよねっていうことで、「フィンたんのイラストを描いてください」って、Twitterでキャンペーンをやったんです。それで、僕が誕生しました。
駐日フィンランド大使館のマスコットキャラクター フィンたん(@FinEmbTokyo)
フィンたんによる、この日の様子のツイートわーい、scopeのシャチョウさんが遊びに来てくれたよ!Scopeは皆さんご存知、北欧を中心とした雑貨や食器、家具などを扱ってるオンラインショップだけど、フィンランドデザインは日本のものと馴染むということで、たくさん扱ってくれてるんだよね。大使館商務部のIvana Helsinki壁紙のお部屋でパシャリ pic.twitter.com/Zycca9VZIc
— 駐日フィンランド大使館 (@FinEmbTokyo) 2018年2月9日
—scopeのシャチョウさんは、フィンたんのことはご存知で?
シャチョウ:僕、いろいろなものをなるべく見ないようにしているんですよ。基本的には、scopeのアカウントしかチェックしていなくて。ホントすいませんって感じなんですけど……。
scopeシャチョウこと平井千里馬(@syachou_scope)
フィンたん:大丈夫です! 僕はscopeさんのことは知っていて、サイトもよく見てるよ。
シャチョウ:え~ありがとう!
—scopeはどのようにして誕生したんですか?
シャチョウ:うちは2000年に創業したんですけど、その頃は僕もまだ20代だったし、「ネットショップです」って言うと「実店舗の無い会社とは、商売をするつもりはない」とか、あからさまに言われるような時代だったんです。
だけど、その頃のiittala (イッタラ:食器やインテリアデザインを専門とするフィンランドのデザインブランド)の輸入元の担当者は耳を傾けてくれて。そこからずっとイッタラの商品を扱っているのもあって、うちにはフィンランドの商品が多いんですよね。僕、実はその頃、海外旅行に行ったこともなったんです。
フィンたん:えっ、そうなんですか?
シャチョウ:イッタラを扱うようになって、初めてフィンランドに行きました。で、それから何回も行くようになって、どんどんハマっていった感じなんです。
イッタラ Frutta(scopeで見る)
Arabia / Eeva オーバルプレート25cm(scopeで見る)
—シャチョウさんが、そこまでフィンランドにハマった理由というのは?
シャチョウ:フィンランドのものって、日本とすごく相性がいいんですよね。無駄が無くて機能的なんです。機能がちゃんとあって、そこから削ぎ落されて、美しいものになっていくというか。
フィンたん:フィンランドには貴族文化がなかったこともあって、華美でゴテゴテしたものはあんまりないんですよね。そういう価値観は、日本と似ているところがある気がします。
シャチョウ:確かにそうですね。あと、国をあげて「自然が美しい」と言ったり、何かを「美しい」と思うポイントが似ているんですよ。
フィンランドの人と話すと、「昨日の空、すごくなかった?」とか「落ち葉が夕日を反射してすごい綺麗だね」みたいな話が、ロマンチックな文脈ではなく、普通の日常会話のなかで出てくる。そういう感覚は、日本人に共通しているんじゃないかと思っていて。
プロフィール
- 平井千里馬(ひらい ちりま)(シャチョウ)
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2000年1月よりオンラインショップのscopeを運営しています。イッタラ・アラビア・アルテック・ホルムガードといった北欧ブランドに、僕好みの物を好き勝手別注しまくっていますから、会社は借金達磨ではありますけれど、利用する側からすれば独特な品揃えで面白いはずです。フィンランドデザイン界の巨匠、オイバ・トイッカと僕とで協力して作りあげているscope別注のガラス製バードやアートオブジェが注目を集めまくっていますけれど、そろそろネタが切れそう!というのが最大の心配事です。
- フィンたん
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金髪で青い目の7歳の男の子。自分の国が大好きで国のシンボルであるライオンの着ぐるみを着ています。2011年に大使館のTwitterが開始し、その後NHKの@NHK_PRがフィンたんと呼びかけたことから名前がつきました。フィンたんの容姿は2012年夏に開催されたイラストコンテストで、アニメーション監督の糸曽賢志さんとTBSアナウンサー石井大裕さんが考案したデザインに決定しました。その後、フィンランド大使館デジタル外交の担い手として様々な場面で活躍しています。