自分の声には力がある。スウェーデンに学ぶ、社会変革の原動力

自分の声には力がある。スウェーデンに学ぶ、社会変革の原動力

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福田和子
リードテキスト・編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)

一つひとつの成功体験が後押しに。「変わらない」と諦めるよりも、まず希望を伝えてみる

スウェーデンでは、ふだんの大学生活においても、声を上げたら聞いてもらえる、声を上げることは無駄ではない、と思える場所や仕組みがあります。

例えば、大学院入学式のガイダンスでは、ハラスメントに対応する部署の方々が登壇し、「この先、僕たちにまた会ってほしくはないけど、何らかのハラスメントが起きたときは、僕たちのところに来てください」との言葉を皮切りに、匿名性の確保など、安心して相談できる場所であることを新入生に向けて説明してくれました。

学生の声を潰さない仕組みはそれだけではありません。私の大学では、各コースに学生代表者が2人存在し、学期末にはアンケートでの授業評価とは別に、学生代表者がクラスメイトから生の声を集めます。その後、担当教授と学生代表者が集まり、意見を交わす場が設けられます。学生代表者は集めた声を伝え、必要に応じて具体的な改善などを求め、教授はその声に対応することが求められます。

実際、コロナの影響もあり突然のオンライン授業で非常に理解が難しくなった授業に対して学生の戸惑いの声が届けられたため、その後フォローアップの授業が組まれるなど、意見交換によって改善が図られた例はたくさんあります。それ以外にも、学生ユニオンも存在していて、さらに大きなところに声を届ける必要があれば彼らに伝えることもできるのです。

スウェーデンでの大学生活の様子(写真:筆者提供)
スウェーデンでの大学生活の様子(写真:筆者提供)

また、私は現在、いわゆる「間借り」をして生活している状況ですが、一緒に住む大家さんからも、「自分が変わってほしいと思うことがあるなら、具体的に要望を訴えたほうがよい」と言われます。そこで、 オンライン授業の難しさをほぼ愚痴のように伝えていたところ、「それ、きちんと先生に言った? 例えば少なくとも週に1回は人数制限してでも教授と学生が会う機会をセッティングしてもらうのはどう? 教授も理解してくれると思うし、まずは伝えないと」と言われたのをとても覚えています。

日常生活においても、性生活における同意についても、社会の仕組みについても、「どうせ変わらない」と諦めて黙ったまま苦しむより、希望を伝えてお互いがハッピーになれる道を探す──そんな姿勢が根づいているんだな、と感じます。

気候変動対策を訴える『Fridays For Future』デモにて(写真:筆者提供)
気候変動対策を訴える『Fridays For Future』デモにて(写真:筆者提供)

緊急避妊薬へのアクセス改善を求める運動で感じた手応え。「日本でも声を上げることには意味がある」

このように、声を上げたら、行動したら、多少の妥協はあったとしても望むかたちに物事が変わるという体験の積み重ねが、この国に良い変化をもたらす力になってきたのだと思います。言い換えれば、スウェーデンの人たちは「一人の小さな声にも大きな力がある」ことを知っています。だからこそ環境問題などにおいても、自分の行動の重さを感じ、積極的に取り組む人が多いのではないかと感じます。投票に関しても同じで、非常に高い投票率を維持しているのも、「自分の声には力がある」と思えるからではないでしょうか。

前述の女性への暴力反対のためのデモにて。女性だけでなく、家族連れや夫婦で参加する人も多く見られた(写真:筆者提供)
前述の女性への暴力反対のためのデモにて。女性だけでなく、家族連れや夫婦で参加する人も多く見られた(写真:筆者提供)

では日本ではどうでしょう? 「声なんてあげても意味がない」。そんな風潮はたしかにあります。しかし本当に声を上げても意味はないのでしょうか? 声をあげている一人として私が言えるのは、日本であっても、「一人の小さな声にも大きな力がある」ということです。

私がいま特に力を入れて活動している問題があります。それは、「緊急避妊薬(通称アフターピル)」のアクセスについてです。「緊急避妊薬」とは、妊娠可能性のある性行為からなるべく早く、72時間以内に服用することで、高い確率で妊娠を阻止できる薬です。WHOは、すべての女性が安全かつ効果的に使用できる薬であるとしており、実際に世界では約90か国で数百円から数千円程度で薬局での入手が可能です。なかには健康保険などで無料で提供される国もあります。

しかし、日本では処方箋が必要で、価格も高額であるという現状があります。それを変えようと「#緊急避妊薬を薬局で」プロジェクトを立ち上げ、集まった11万筆以上のオンライン署名を各省庁に提出したり、要望を出したりしています。そのような状況のなかで2020年に内閣府が「第5次男女共同参画基本計画」策定にあたってパブリックコメントを募集したところ、緊急避妊薬のアクセス改善を求める要望が非常に多かったことから、緊急避妊の薬局販売検討の可能性が基本計画に明示されました。

この問題については多くのメディアでも取り上げられ、Twitterでは2度にわたってトレンド入り、産婦人科団体も繰り返し意見表明を求められるなど、確実に状況が変化しています。だから私は、日本でも声を上げることには意味があると自信を持って言えます。

「#緊急避妊薬を薬局で」プロジェクトTwitterより

とはいえ、まだまだ「国が決めたことには従うしかない」という空気は根強いようにも思います。国の仕組みも、私たち一人ひとりが参画しつくり上げられるものというよりは、雲の上から降ってくるような感覚があります。この国でより良い変化を起こすには、性別、年齢に関係なく、理にかなったことを言えば響く環境がもっとつくられていくことが必要なのではないでしょうか。

最後に、前述のリンデ氏のスピーチの続きを紹介してこの記事を終わりたいと思います。

私がセクシャル・リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康と権利)をめぐる歴史から学んだことは、私たちは異なる幅広いバックグラウンド、経験を持つ人がともに立ち上がったときにこそ力を発揮するということ。そして、社会を変え、世界を変える力は、私たちの手のなかにある、ということです。

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プロフィール

福田和子(ふくだ かずこ)

大学在学中に留学先のスウェーデンで、日本では、性教育や避妊法の選択肢の不足によって、誰もが性に関わる健康や権利を守れない状況にあると痛感。帰国後の2018年5月、「#なんでないの プロジェクト」をスタート。現在は「#緊急避妊薬を薬局で プロジェクト」共同代表も務める。若者に届きやすいSRHRケアのあり方をテーマに、スウェーデン・ヨーテボリ大学大学院公衆衛生修士課程修了。FRaU×現代ビジネスなどに連載中。(翻訳)ユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス【改訂版】ー科学的根 拠に基づいたアプローチ』(明石書店 / 2020年)

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