自分の声には力がある。スウェーデンに学ぶ、社会変革の原動力

自分の声には力がある。スウェーデンに学ぶ、社会変革の原動力

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福田和子
リードテキスト・編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)

沈黙を破り、声を上げることで社会を変革させてきた

私には、忘れられないスピーチがあります。それは、2019年にケニアのナイロビで開催された「国連人口開発会議(ICPD25)」において、スウェーデン性教育協会(RFSU)の現代表、ハンス・リンデ氏が表彰された際の受賞スピーチです。

私はスウェーデンのなかでも保守的な南の田舎町に生まれました。私が生まれた1979年、同性愛は病とされていました。私の母が生まれた1953年、性教育はないに等しく、中絶は違法でした。私の祖母が1920年代に生まれた頃は、避妊の知識を話すことさえ違法で、同性愛者は刑務所に送られました。しかし、私のコミュニティー、社会は、勇気ある男性女性が一緒になって、沈黙を破り、議論を呼ぶ問題にも正面から向き合い、行動することによって変わってきました。
「国連人口開発会議(ICPD25)」受賞セレモニーの様子。後列左から5番目の男性がハンス・リンデ氏(写真:筆者提供)
「国連人口開発会議(ICPD25)」受賞セレモニーの様子。後列左から5番目の男性がハンス・リンデ氏(写真:筆者提供)

このスピーチにもあるように、じつはスウェーデンも100年前はいまとまったく異なる社会が広がっていました。一人ひとりの権利を尊重する福祉国家、ジェンダー平等国家へと変貌を遂げた背景には、北の果ての小さな国がこの世界で生き延びるために福祉の発展などが必要不可欠な戦略であったこともあります。しかし、それだけではありません。これまで多くのスウェーデン人に変化の理由を尋ねて、必ずといっていいほど返ってくる答えは、「声を上げてきた人たちがいるから」でした。

気候変動や女性への暴力反対……老若男女がデモに集う

スウェーデンで「声を上げる」といって想起されるのは、環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんではないでしょうか。私も新型コロナウイルスが流行る前、住んでいる街で開かれた『Fridays For Future(未来のための金曜日)』の運動(グレタ・トゥーンベリの学校ストライキにインスピレーションを受けて世界に広がった、地球温暖化対策の強化を求める運動)に参加しました。

土砂降りのなかでも老若男女1万人が集まり、その熱気はいまでも忘れることができません。そんななかで多くの人が掲げていたプラカードが、「気候ではなくシステムを変える」というもの。これはグレタさんも掲げる「Climate Justice (気候正義、気候の公平性)」の考えに基づいており、環境問題を単なる気候の問題とのみ捉えるのではなく、社会的、倫理的、政治的な課題として問題提起をしています。

スウェーデンで雨のなか行なわれた、気候変動対策を求めるデモの参加者(写真:筆者提供)
スウェーデンで雨のなか行なわれた、気候変動対策を求めるデモの参加者(写真:筆者提供)

このほかにも、女性への暴力に反対するデモに参加したこともあります。スウェーデンでは、2018年に「セクシャル・コンセント・ロー、コンセントロー(性交同意法)」という世界でも先進的な法律が成立してもなお声を上げつづけています。その理由を主催者に尋ねると、「法律は変わっても社会が変わるにはまだまだ時間がかかる。だから、待つだけではなくて、声も上げていかないと」と話していました。デモには、女性だけでなく、家族連れを含む本当に多様な人たちが参加しているのが印象的でした。

女性への暴力に反対するデモの主催者たちと筆者(写真:筆者提供)
女性への暴力に反対するデモの主催者たちと筆者(写真:筆者提供)

ではそもそもスウェーデンの人々のデモに参加して声を上げる、そのパッションや、変化への希望はどこからくるのでしょうか? その答えは、ごくごく普通の日常に、隠れているように思います。

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プロフィール

福田和子(ふくだ かずこ)

大学在学中に留学先のスウェーデンで、日本では、性教育や避妊法の選択肢の不足によって、誰もが性に関わる健康や権利を守れない状況にあると痛感。帰国後の2018年5月、「#なんでないの プロジェクト」をスタート。現在は「#緊急避妊薬を薬局で プロジェクト」共同代表も務める。若者に届きやすいSRHRケアのあり方をテーマに、スウェーデン・ヨーテボリ大学大学院公衆衛生修士課程修了。FRaU×現代ビジネスなどに連載中。(翻訳)ユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス【改訂版】ー科学的根 拠に基づいたアプローチ』(明石書店 / 2020年)

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