北欧発クラフトビール・ミッケラーの「面白い」ラベルデザイン

北欧発クラフトビール・ミッケラーの「面白い」ラベルデザイン

インタビュー・テキスト
宇治田エリ
撮影:寺内暁 編集:柏木良介(CINRA, Inc.)、後藤美波(CINRA.NET編集部)

「らしさ」に縛られるのではなく、面白いと思ったらまずはやってみる

―ミッケラーは1,000種類以上ものビールを販売し、シーズンごとにたくさんのビールが誕生しています。ラベルやパッケージのデザインはどのように決めているのでしょうか?

ハミルトン:最初にミッケルや本社の人たちから軽いインプットや「こんな感じのラベルがほしい」「こんなテーマだったら面白いかも」といったアイデアの共有があり、それを参考にしながらキースが自由にかたちにしていきます。

最終的に完成したデザインは、ミッケルがチェックするのですが、パッと見て「面白いね」と言ったらそのまま採用されることが多いですね。細かく修正を指示することもなければ、「ミッケラーっぽさ」を重視しているわけでもない。上司としてデザインをコントロールしようという感覚はなく、「面白いかどうか」がミッケルの判断基準です。

ハミルトン・シールズ

ハミルトン:僕も岩手県にあるベアレン醸造所(ドイツの設備を使うビールメーカー)とのコラボビールのディレクションをしたことがありますが、そのときは「熊のキャラクターとドイツ」というお題でラベルデザインをお願いしました(笑)。そして、「ベアレンはクラシックなクラフトビールのブランドだから、少し素朴な感じで」とも伝えました。だから色も落ち着いているし、洋服もドイツっぽいでしょう?

―たしかに。デザインはかなり「おまかせ」なのですね。

ハミルトン:ミッケラーという会社自体が、どんどん変化している組織だから、「らしさ」に縛られるのではなく、面白いと思ったらまずはやってみることを重視しています。そこで起こる変化を肯定的に捉えているんですよね。だからキースのデザインも、じつは最初の頃と比べるとどんどん変化していっているんです。

「ミッケラー トウキョウ」外観。ミッケラーのロゴデザインは、創業当初にミッケルの知り合いが制作したものを踏襲している
「ミッケラー トウキョウ」外観。ミッケラーのロゴデザインは、創業当初にミッケルの知り合いが制作したものを踏襲している

―東京の店舗をデザインしたときも同じような感じだったのですか?

ハミルトン:そうですね。ロゴをデザインするときも、私からキースに「日本にはこういうものがあるんだよ」と鬼のお面を見せて、それをデザインに落とし込んでもらいました。

―ロゴやラベルのデザインに対して、修正は特にないのですか?

ハミルトン:必要があれば修正をお願いしますが、それも2、3回程度で終わります。スムーズに仕事が終わることが多いですが、その代わりにフィードバックがほぼなくて、自分の判断にゆだねられているから、ある意味大変かもしれません。

キース・ショアによるロゴはビールグラスにもプリントされている
キース・ショアによるロゴはビールグラスにもプリントされている

―シンプルなやりとりで完結していることに驚きます。

ハミルトン:それは、「ユーモラスであり包括的で、人々と社会の多様性を尊重する」というミッケラーのカルチャーを会社のメンバーが大切にしているからだと思います。ミッケラーはさまざまな地域でビールをつくって販売しているから、スタイルはありつつも自由であることがとても重要。だから、クールで楽しくて、ギークすぎず、センスを感じるものであればいい。緻密につくったデザインより、勢いに乗って出てきたデザインのほうが面白いですしね。

―ミッケラーにはヘンリー(Henry)とサリー(Sally)というキャラクターがいて、さまざまなシチュエーションで描かれています。どのような設定なのでしょうか?

ハミルトン:ヘンリーとサリーは「友達」という設定ですが、それがどういう友達関係なのかはわからないんです(笑)。最新のデザインでは二人がキスしているし。それに、ヘンリーとサリーは一人ずつじゃなくて、複数になることもあり、非常にフレキシブルなキャラクター設定。そうすることで、スタイルを一つに保ちながらも、そのなかで自由につくっていける。キースのアイデアはユニークですよね。

一番新しく出たラベルデザイン。「これを好きな理由は、クラフトビールの男子っぽいイメージじゃなくて、とてもロマンティックでラブリーで、エモーショナルでソフトなところ。ヘンリーとサリーがキスしているから、恋人になった!? と想像が膨らみます」(ハミルトン)
一番新しく出たラベルデザイン。「これを好きな理由は、クラフトビールの男子っぽいイメージじゃなくて、とてもロマンティックでラブリーで、エモーショナルでソフトなところ。ヘンリーとサリーがキスしているから、恋人になった!? と想像が膨らみます」(ハミルトン)

―お店に飾られているキースさんの絵もとても刺激的です。

ハミルトン:「バイオレンス・セックス・ドラッグ」というコンセプトで、ミッケラー トウキョウがある渋谷・百軒店エリアのイメージに近い絵をチョイスして、店内でポップに表現しています。たとえば、魚をナイフで刺している、かわいいけれど少しバイオレンスな絵は、スペインにあるレストランのためにつくったビールのラベルです。ヘンリーの腕が入っていることで、ミッケラーらしさが出ていますね。

「ミッケラー トウキョウ」店内
「ミッケラー トウキョウ」店内
「ミッケラー トウキョウ」店内 
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店舗情報

ミッケラー トウキョウ

住所:東京都渋谷区道玄坂2-19-11

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