スウェーデン在住のふたりぱぱ。恋愛や結婚、家族のかたちを語る

スウェーデン在住のふたりぱぱ。恋愛や結婚、家族のかたちを語る

2021/08/16
インタビュー・テキスト
飯嶋藍子
写真提供:ふたりぱぱ 編集:飯嶋藍子、CINRA.NET編集部

見慣れたら特別じゃなくなる。「教える」ではなく「触れる」チャンスを

―実際に息子さんの幼稚園はいかがですか?

みっつん:以前通っていた幼稚園では、園内の壁にドラッグクイーンの写真とか男性同士がキスしている写真とかが貼ってありました。それを見て、教えるというより、触れるチャンスを与えるのが大人の役割なのかなと思いました。とくにスウェーデンでは、幼稚園の頃から「教える」より「考えさせる」という教育をしいて、子どもがどう感じるかを大切にしてますね。そのうえで「性的指向などを理由に違う扱いをしてはいけないよ」とかダメなことはダメとはっきり言っていく。

みっつん:リカとつき合い始めたときに、僕が「なんで日本は変わらないんだろう?」とこぼしてると、リカから「早く日本の人たち、慣れて」って言われたんですよ。当時は「慣れてってすごく雑な言い方だな」と思っていたんですけど、いまはすっごくわかる。理屈も必要だけど、同時に「慣れ」も必要。みんなが見慣れたらそんなに特別じゃなくなるし、それでいいと思っています。

―そのためには、幼いうちからいろんなことに自然に触れられたらいいですよね。

リカ:実際、僕たちは息子の友達の家族にすごくポジティブに捉えてもらえたんですよね。それはコミュニティーに多様性が生まれることで、子どもたちにいろいろな家族のかたちやいろいろな視点を持たせることができるからで、ネガティブな反応はまったくなかったです。

そうやって大切な人たちが、みんなそれぞれに自然な状態でいられるようにするのがいいんじゃないかと思います。これはスウェーデンではごくごく普通の反応なんですけど、日本でもある程度ギャップはあるにせよ、多くの人が同じ反応をするんじゃないかなと思っています。

「無知であることは恥ずかしくない」。生きやすさのヒントを見つけるために

―いろいろな世界を体感してきて、さらに息子さんも誕生して3人家族になったわけですが、いまのスウェーデンでの暮らしはいかがですか?

みっつん:いまの暮らしはね、大変!(笑) やっぱり子どもを育てるのって大変っていう月並なことしか言えないです(笑)。でも、それはスウェーデンだろうが日本だろうが一緒だろうなって思います。でもさっき言ったように個人が尊重されているスウェーデンで暮らしていると、都会、田舎関係なく、ひとりの人間としての最低限の生活が保証されている安心感は得られますね。

―それは性別や家族のかたちを問わず感じられるものですか?

みっつん:うん、人間であればって感じです。たとえば結婚についても、「同性婚」っていう言葉自体がもうないというか。同性で結婚できるようになったのも「結婚の平等化」という言い方なんですよ。だから法律が書き換えられたときも、新しい法律ができたわけではなく、既存の法律が改正されただけなんです。そういう点で、一個人、人間として、すごく大切にされていると感じます。

―日本でも同性婚に関する全国一斉訴訟があったり、家族のかたちが多様になっていく段階にあると思うのですが、そのなかで一人ひとりが、こういうことに目を向けてみたらいいんじゃないかと思うことって何かありますか?

みっつん:まずはやっぱり興味を持って自分の知らないことを知ろうとすることが大事だなと思います。もちろん誰かのためにっていうのも大切だけど、自分と違う人のことを知ったり、そういうことにアンテナを張っておくと、結局は自分自身の生き方を楽にするヒントが得られると思うんです。「LGBTQの権利が!」とか「ジェンダー平等はこうしなきゃいけない!」って当事者のためだけではなく、いろいろなことを知っていくことで自分がもっと楽になるって、僕はいままでの生活で実感してきました。

左から:リカ、みっつん

―先ほどもおっしゃっていたように、本当にいろんなことに触れるのが大切ですね。

みっつん:そうですね。あと、LGBTQのなかでも、僕ら自身がいろんな側面を持っていて、シスジェンダー(自分自身が認識している「心の性」と、生まれ持った「体の性」が一致している人)の男性で、アジア系とか、スウェーデン人とか。いまは僕らのマイノリティー性を話していますけど、もしかしたら違う部分では僕はマジョリティーになっていて、誰かのことを嫌な気持ちにさせているかもしれない。それはもう誰しもが持ち合わせていることなんです。

LGBTQという言葉がありますけど、僕らを含めゲイの人とレズビアンの方、バイセクシャルの方とトランスジェンダーの方ってじつはそれぞれ問題が違う。LGBTQって文字ではLとGが隣同士だけど、レズビアンについて全然知らないことが僕自身いっぱいありました。でも、みんな全部を知ることなんて無理なんだから、無知であること自体は恥ずかしいことじゃないんです。でも、自分が無知であることに気づいて、「無知の知」を心に留めておくと、他の人に優しくすることができるんじゃないかなと思います。

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書籍情報

『ふたりぱぱ:ゲイカップル、代理母出産(サロガシー)の旅に出る』
『ふたりぱぱ:ゲイカップル、代理母出産(サロガシー)の旅に出る』

2019年8月22日(木)発売
著者:みっつん
価格:1,870円(税込)
発行:現代書館

プロフィール

ふたりぱぱ

日本人のみっつんとスウェーデン人のリカのゲイカップル。2008年に東京で出会い、2011年にスウェーデンの法律のもと結婚。同年ロンドンに引っ越す。2016年、サロガシー(代理母出産)により男児を授かったことを機に、リカの故郷であるスウェーデンに移住。YouTubeでスウェーデンでの暮らしを発信している。

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