スウェーデン在住のふたりぱぱ。恋愛や結婚、家族のかたちを語る

スウェーデンでは1995年にパートナーシップ制度がつくられ、2009年に同性婚が法整備された。そんなスウェーデンで結婚し、代理母出産で授かった息子と3人で暮らしながら、そのライフスタイルをYouTubeで紹介しているのがゲイカップル「ふたりぱぱ」のみっつんとリカだ。

2008年に日本で出会い、ロンドンでの生活を経て、リカの故郷であるスウェーデンに拠点をかまえたふたりが語るのは「自分と違う人を知ると、自分自身の生き方を楽にするヒントが得られる」ということ。それぞれの恋愛観や、まったく別の土地での生活を通して体感した家族のかたち、子どもへの性教育の違い、「知る」という姿勢の大切さについて聞いた。

同性カップルのロールモデルがいなかった。出会った当時の恋愛観

―おふたりは2008年に出会い系サイトを通じて知り合ったそうですが、その当時、日本における同性愛者の恋愛の土壌ってどういうものだと感じていましたか?

みっつん:僕は名古屋の出身で、地元ではなかなか出会いがなかったですし、ゲイであることが地元で誰かにバレてしまったらどうしようっていう恐怖があったんですよね。でも、ちょうど携帯でインターネットが使えるようになった時期に上京したこともあり、ゲイバーや新宿二丁目に行かなくても、少しずつ人と出会えるようになりました。でも、出会いたいけど出会いを求めてしまうとバレる、というジレンマは感じていましたね。

ふたりぱぱ
日本人のみっつん(右)とスウェーデン人のリカ(左)のゲイカップル。2008年に東京で出会い、2011年にスウェーデンの法律のもと結婚。同年ロンドンに引っ越す。2016年、サロガシー(代理母出産)により男児を授かったことを機に、リカの故郷であるスウェーデンに移住。YouTubeでスウェーデンでの暮らしを発信している。

―当時、同性のパートナーシップについてはどんなふうに考えていましたか?

みっつん:ライフパートナーっていうんですかね、誰かひとりの人がいたらいいなって、僕はうっすら思っていました。異性カップルとは違って、子どものときからロールモデルがいなかったので、「ライフパートナー」ってなかなか想像ができなかったんです。二丁目に通うようになっても、そこで長く続いているカップルに出会ったこともなかったですし。パートナーができると、出会いの必要もないからかもしれないですね(笑)。

結婚を決めたきっかけ。リカの勤務先からのサポート

―リカさんは、みっつんさんと出会う前からすでに日本に来て働いていらっしゃったそうですが、当時、日本の家族観について感じたことはありますか?

リカ:全般的な話でいうと、スウェーデンは共同親権があるので子どもがいても離婚率が高く、シングルマザーやシングルファザーが多いんです。離婚も選択肢のひとつという感じで、そこは日本の家族のかたちと違うとこかなと思いました。僕自身は、18歳からゲイであることをオープンにしていたし、ダイバーシティーポリシーがある東京のグローバル企業で働いていたので、職場でもオープンでした。2011年に東京からロンドンに転勤するときはすでにみっつんと結婚していたこともあり、会社がすごくスムーズにサポートしてくれたんですよ。

みっつん:「家族で転勤するとき、みんな助けるでしょ? 当たり前じゃん」みたいな感じだったよね。リカはEUの人で当時イギリスもEUだったのでビザ自体はいらなかったんですよ。でも、「一緒に行くパートナーが日本人だから、ビザを用意してほしい」と会社に頼んだら本当に全部準備してくれて安心して手続きができました。

―そのときはすでに結婚されていたということですが、結婚はどのタイミングで決めたんですか?

みっつん:じつはその転勤のために結婚したようなもので(笑)。僕は、ライフパートナーはほしいと思いつつも、結婚自体にはそこまで必要性を感じていなかったんです。スウェーデンで同性婚が認められた2009年頃にちょうどつき合い始めたんですけど、「別に僕らは、ねぇ?」って感じでした。でも、一緒に国を移るとなると、結婚していたほうがいろいろと楽だったので、転勤をきっかけに「ちょうどいいかもね」という感じで結婚しました。もちろんビザのためだけではないですよ(笑)。つき合って3年目くらいでしたし、いろんなタイミングが重なった感じです。

戸籍制度の日本、個人を尊重するスウェーデン、それぞれのいいところ

―ほかの国に行って新しい暮らしを始めるタイミングで、というのはとても素敵なきっかけですね。

みっつん:本当に。実際に結婚してみて思ったのは、やっぱり結婚って便利なものだなということ。結婚すると、どこに行っても正式なパートナーとして認めてもらえて、家族として認めてもらえて、いろんな手続きが楽になって……そういう便利な制度だなって思います(笑)。

ふたりは2011年に結婚宣誓式を行なった

―「家族」という単位って、やっぱりとても重視されているんだなといまのお話をうかがってあらためて感じました。

みっつん:そうですね。同性カップルだと未だに珍しく見られがちではあるんですけど、実際に僕らがやっていることや生活スタイルは伝統的家族と同じですし、なんの特別感もない毎日を送っているんです。スウェーデンがちょっと違うのは、個人を大切にする社会があるということ。何かと家族で集まる文化もありつつ、それは個人の集まりでしかないというところも尊重されていて、税金や年金も個人によったかたちで算出されていきます。

たとえばスウェーデンは待機児童がいないんですけど、それは、親がちゃんと働けて、子どもは平等な教育を受ける権利があるとか、平等性と公平性を重んじて法律がつくられているからなんです。逆に日本は、たとえば扶養とか、戸籍制度によるベネフィットがありますよね。日本とスウェーデンは人口や都市の規模も違うので制度を比較できないところはありますが、それぞれが一長一短ですよね。

みっつんが両親へしたためた16枚の手紙。それぞれの家族との向き合い方

―みっつんさんは、結婚を機にご両親にカミングアウトされたそうですね。そのときご両親とはどういうコミュニケーションをとられましたか?

みっつん:両親へは手紙で伝えました。さすがに家族に黙って海外移住するわけにはいかないなと思って。それで電話したんですけど、やっぱり言えず、次の日に手紙を出しました。何度も書き直したのですが、最初のページに「僕はゲイです。来月、スウェーデン人の男の人と結婚します。3か月後にロンドンに移住します」って書いて(笑)。

―最初から全部盛りですね!

みっつん:簡潔に言ったほうがいいと思って(笑)。なんでこのタイミングで親に伝えるか、そのとき30歳だったので、この30年間抱えてきた想いをしたためたら、最終的に便箋16枚になって。すごく分厚い封筒で送りましたね。

―ご両親からどんな返事がきましたか?

みっつん:しばらく返事がなかったんです。僕は4人きょうだいの末っ子なのですが、彼らにはすでに「いま、つき合ってる人がいて」と伝えていたんです。そうしたら姉から電話がかかってきて、その電話口で上の兄が「手紙のことをみんなで話し合ってるんだけど」って。

―家族会議が行われていたんですね。

みっつん:そうなんです。あとから聞いたら両親はパニクって、「こんなの認められん!」みたいな感じだったらしいんです。僕は手紙にも「すぐには理解できないと思うからしなくていい。時間をかけてもらっていいから」って書いていたし、ほかの兄弟も、リカは悪いやつじゃないぞっていうことを伝えてサポートしてくれて。それでなんとか丸く収まりました。

それから1年半くらいして、初めてリカを両親のところに連れていったんですけど、いわゆる「子どもがパートナーを連れてきた」みたいな緊張感はありましたし、スウェーデン人であるリカとコミュニケーションできるのかって心配もしていたみたいなんですけど、リカは日本語を喋れるから普通に会話して、みんなで近所のお祭りに行ったりしました(笑)。

2019年には家族でみっつんの地元の夏祭りへ

―リカさんがカミングアウトしたときはご家族とどんな話をしましたか?

リカ:僕は妹に最初にカミングアウトして、妹がお父さんとお母さんに伝えたのですが、僕の生活のことを心配していたみたいです。でも、ゲイかどうかとか関係なく、同じように僕の妹や弟のことも心配していたし、その感覚はいま自分が親になってわかりますね。

みっつん:あとになってリカの家族に聞いたんですけど、当時は1990年代で、ゲイコミュニティーのなかでは世界的にエイズパニックがあったし、子どもがいるゲイカップルがいたわけじゃないから、そういうリスクや将来が見えないことに対して心配をしていたそうです。うちの親も僕が将来海外でのたれ死なないかとか、そのときに助けたくても助けられないんじゃないかと心配になったと言っていました。でも、本当に親って子どもに対してはそういうものなんだろうなと思いますね。

東京、ロンドン、スウェーデン。三つの場所で暮らして感じた、生きやすくなるためのコツ

―そういった社会的な背景だったり、国際結婚だったり、複合的な要因で理解のされにくさが増していったと感じることはありましたか?

みっつん:僕らの場合はそういうハードルはなかったです。というのも、僕らがつき合い始めたときはすでにスウェーデンでは結婚ができるようになっていたから、そこはラッキーだったなと思います。ただ、自分が子どもだったころは、やっぱり視野や世界が狭いので、社会の目や生きづらさへのハードルを感じていたと思います。

僕らは東京に3年、ロンドンに5年くらい住んで、いまスウェーデンで暮らし始めて5年以上経ちますが、そうやっていろんなところで暮らしてみても「これが絶対ベストで正解。これがパーフェクトな世界」っていうのはないんですよね。いろんな違いを知ることで、自分にとっての正しいことが見つけられるようになって生きやすくなりました。そういう意味ではハードルはどんどん下がっていく。

みっつん:ひとつの場所だけにいたり、ひとつのことしか知らないと、何がハードルかも気づけないと思うんです。いまはコロナのこともあって、誰しも世界を行き来できる状況じゃないけれど、そのかわりインターネットでトラベルすれば、いろんなことを知ることができる。知ることでハードルがあったことに気づいたり、そのハードルを下げていくライフスタイルを選べるようになったりするのではと思っています。

リカ:スウェーデンだと同性婚や僕らが子どもを持つことを認められてるけど、アメリカだとどうだろう、とかね。少しハードルが上がるかもしれないし、欧米以外はまだまだ同性婚が認められない国もありますよね。

みっつん:その優劣をつけるための比較ではなく、バイアスを取り除いていくために知ることが大事だと思います。いろいろなことを知ると、「こうでなければいけない」「こうしなきゃいけない」ということなんてないということに気づけるし、そういう先入観や固定観念を取り除いていければ、どんどん自分が楽になると思うんです。楽になるってことは「楽しくなる、幸せに感じる」ということでもあると思うんですよね。

スウェーデンの幼児教育。子どもに伝えるダイバーシティや性の話

―おふたりのYouTubeチャンネルのなかで、息子さんのお友達から「本当にふたりパパなの?」と聞かれたというお話を紹介されていましたが、スウェーデンでは家族についての教育はどんな感じなのでしょうか?

リカ:まわりの家族や親戚には、ほとんどママとパパがいますが、僕たちの友人にはふたりママもいます。幼児教育の場(スウェーデンは幼保一体の教育で、幼稚園や保育園にあたる教育の場を「就学前学校」と呼ぶ)ではいろいろな人間がいるということを教えているそうです。

みっつん:そうだね。生活ベースで言うと、特別何かを教えると言うよりも、僕らの場合は存在しているだけでいいというか。幼稚園教諭になる勉強をしている友人から聞いた話だと、大切なことは「年齢に応じて話をしていくこと」だと言います。性教育に関してもWHOやユネスコが子どもに対する包括的な性教育のガイドラインをまとめていますよね。日本も批准しているんだけど、性をタブーにしていることでどんどん教育が遅れている部分があると思うんです。

でも、いきなり3歳や5歳の子にセックスを教えるわけではないんですよ。性差があるよとか、ジェンダーってスペクトラム(境界線が曖昧で連続していること)であるんだよ、とか。教育現場では、子どもの年齢に応じて性教育していくことがカリキュラムに入っていると聞いたことがあるので、僕らも安心して子どもを預けられるなと感じています。

見慣れたら特別じゃなくなる。「教える」ではなく「触れる」チャンスを

―実際に息子さんの幼稚園はいかがですか?

みっつん:以前通っていた幼稚園では、園内の壁にドラッグクイーンの写真とか男性同士がキスしている写真とかが貼ってありました。それを見て、教えるというより、触れるチャンスを与えるのが大人の役割なのかなと思いました。とくにスウェーデンでは、幼稚園の頃から「教える」より「考えさせる」という教育をしいて、子どもがどう感じるかを大切にしてますね。そのうえで「性的指向などを理由に違う扱いをしてはいけないよ」とかダメなことはダメとはっきり言っていく。

みっつん:リカとつき合い始めたときに、僕が「なんで日本は変わらないんだろう?」とこぼしてると、リカから「早く日本の人たち、慣れて」って言われたんですよ。当時は「慣れてってすごく雑な言い方だな」と思っていたんですけど、いまはすっごくわかる。理屈も必要だけど、同時に「慣れ」も必要。みんなが見慣れたらそんなに特別じゃなくなるし、それでいいと思っています。

―そのためには、幼いうちからいろんなことに自然に触れられたらいいですよね。

リカ:実際、僕たちは息子の友達の家族にすごくポジティブに捉えてもらえたんですよね。それはコミュニティーに多様性が生まれることで、子どもたちにいろいろな家族のかたちやいろいろな視点を持たせることができるからで、ネガティブな反応はまったくなかったです。

そうやって大切な人たちが、みんなそれぞれに自然な状態でいられるようにするのがいいんじゃないかと思います。これはスウェーデンではごくごく普通の反応なんですけど、日本でもある程度ギャップはあるにせよ、多くの人が同じ反応をするんじゃないかなと思っています。

「無知であることは恥ずかしくない」。生きやすさのヒントを見つけるために

―いろいろな世界を体感してきて、さらに息子さんも誕生して3人家族になったわけですが、いまのスウェーデンでの暮らしはいかがですか?

みっつん:いまの暮らしはね、大変!(笑) やっぱり子どもを育てるのって大変っていう月並なことしか言えないです(笑)。でも、それはスウェーデンだろうが日本だろうが一緒だろうなって思います。でもさっき言ったように個人が尊重されているスウェーデンで暮らしていると、都会、田舎関係なく、ひとりの人間としての最低限の生活が保証されている安心感は得られますね。

―それは性別や家族のかたちを問わず感じられるものですか?

みっつん:うん、人間であればって感じです。たとえば結婚についても、「同性婚」っていう言葉自体がもうないというか。同性で結婚できるようになったのも「結婚の平等化」という言い方なんですよ。だから法律が書き換えられたときも、新しい法律ができたわけではなく、既存の法律が改正されただけなんです。そういう点で、一個人、人間として、すごく大切にされていると感じます。

―日本でも同性婚に関する全国一斉訴訟があったり、家族のかたちが多様になっていく段階にあると思うのですが、そのなかで一人ひとりが、こういうことに目を向けてみたらいいんじゃないかと思うことって何かありますか?

みっつん:まずはやっぱり興味を持って自分の知らないことを知ろうとすることが大事だなと思います。もちろん誰かのためにっていうのも大切だけど、自分と違う人のことを知ったり、そういうことにアンテナを張っておくと、結局は自分自身の生き方を楽にするヒントが得られると思うんです。「LGBTQの権利が!」とか「ジェンダー平等はこうしなきゃいけない!」って当事者のためだけではなく、いろいろなことを知っていくことで自分がもっと楽になるって、僕はいままでの生活で実感してきました。

―先ほどもおっしゃっていたように、本当にいろんなことに触れるのが大切ですね。

みっつん:そうですね。あと、LGBTQのなかでも、僕ら自身がいろんな側面を持っていて、シスジェンダー(自分自身が認識している「心の性」と、生まれ持った「体の性」が一致している人)の男性で、アジア系とか、スウェーデン人とか。いまは僕らのマイノリティー性を話していますけど、もしかしたら違う部分では僕はマジョリティーになっていて、誰かのことを嫌な気持ちにさせているかもしれない。それはもう誰しもが持ち合わせていることなんです。

LGBTQという言葉がありますけど、僕らを含めゲイの人とレズビアンの方、バイセクシャルの方とトランスジェンダーの方ってじつはそれぞれ問題が違う。LGBTQって文字ではLとGが隣同士だけど、レズビアンについて全然知らないことが僕自身いっぱいありました。でも、みんな全部を知ることなんて無理なんだから、無知であること自体は恥ずかしいことじゃないんです。でも、自分が無知であることに気づいて、「無知の知」を心に留めておくと、他の人に優しくすることができるんじゃないかなと思います。

書籍情報
『ふたりぱぱ:ゲイカップル、代理母出産(サロガシー)の旅に出る』

2019年8月22日(木)発売
著者:みっつん
価格:1,870円(税込)
発行:現代書館

プロフィール
ふたりぱぱ

日本人のみっつんとスウェーデン人のリカのゲイカップル。2008年に東京で出会い、2011年にスウェーデンの法律のもと結婚。同年ロンドンに引っ越す。2016年、サロガシー(代理母出産)により男児を授かったことを機に、リカの故郷であるスウェーデンに移住。YouTubeでスウェーデンでの暮らしを発信している。



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「幸福度が高い」と言われる北欧の国々。その文化の土台にあるのが「クラフトマンシップ」と「最先端」です。

湖や森に囲まれた、豊かな自然と共生する考え方。長い冬を楽しく過ごすための、手仕事の工夫。

かと思えば、ITをはじめとした最先端の技術開発や福祉の充実をめざした、先進的な発想。

カルチャーマガジン「Fika(フィーカ)」は、北欧からこれからの幸せな社会のヒントを見つけていきます。

スウェーデンの人々が大切にしてい「Fika」というコーヒーブレイクの時間のようにリラックスしながら、さまざまなアイデアが生まれる場所をめざします。

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