読書好きが多いフィンランド 市民にとって公共図書館はどんな存在?

読書好きが多いフィンランド 市民にとって公共図書館はどんな存在?

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吉田みのり
リードテキスト・編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)

国が「生涯学習」に力を入れる。図書館は誰もが平等に文化資本に触れられる場

公共図書館のサービス利用は、法で定められたすべての国民の権利としてフィンランドで守られています。2017年に政府は図書館サービスについて、国民一人当たりにつき57ユーロ(約7,600円)にあたる予算を支出しています。フィンランドでは、国家戦略として「生涯学習(Lifelong Learning)」をテーマに掲げ、国民が自由に新たな資格を取得するための手厚いサポートを行っています。自由なタイミングで、自由に学べる環境を整えることに力を入れており、図書館は誰もが平等に文化資本に触れることができる場として機能しています。

さらにフィンランドの公共図書館は、図書貸し出しという中核サービスに加え、楽器や演奏スタジオ、ゲームの貸し出し、読書会やパネルディスカッションの主催といった幅広いサービスも提供しています。利用者にスポーツ用具や電動工具、食器を貸し出すなど、共有経済を目指す図書館もあります。

筆者も2年前、首都のヘルシンキ市から東へ50kmのところに位置するポルヴォー市の図書館で開催されたイベントに参加しました。8月6日、ヒロシマの日に、原爆で亡くなった方に想いを寄せ、平和を願う日として折り紙のワークショップと日本風のランタンに灯をともすイベントでした。

ポルヴォー市の図書館で行われた、平和を願う折り紙のワークショップの様子
ポルヴォー市の図書館で行われた、平和を願う折り紙のワークショップの様子
ポルヴォー市の図書館で行われた、平和を願う折り紙のワークショップの様子

本が借りられると作家に印税を還元。作家や翻訳家は、国民の教育に関わる存在として守られている

読書を愛するフィンランドでは、作家や翻訳家への助成金制度も整備されています。公共図書館で本が借りられるたび、作家には1冊約15円の印税が入る仕組みも。これは知的財産権を保障するもので、テレビやラジオで取り扱われる場合も同様にしかるべき金額が支払われるようになっています。

また、作家活動には平均で一人あたり年間7,000ユーロ(約93万円)の補助金が出されることになっています(2016年の予算)。図書館からの作家や翻訳家への助成金では、病気や怪我で働けない状況になった場合などの対応も用意されており、国民の教育に関わる存在として国から守られています。

ヘルシンキ中央図書館「Oodi」内部(筆者撮影)
ヘルシンキ中央図書館「Oodi」内部(筆者撮影)

「フィンランドでは文学に対して強い伝統があるため、作家は歴史を通して力強い役割を果たしてきました」と、フィンランド出版協会のサカリ・ライホ氏はウェブメディア「Publishing Perspectives」のインタビューで話しています(※2)。

「フィンランドの読者が一番求めているものはフィンランドの作家による作品です。この国ならではの美学や国家としてのアイデンティティーを上手に組み込んで、同じバックグラウンドを持つ国民に読み物として提供する本国出身の作家に手厚い保護を提供することは、長い目で見れば経済的にも効果が出る戦略なのです」

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