戸田真琴が母の姿と重ね思う「女の値札をはがされる日」の自由

戸田真琴が母の姿と重ね思う「女の値札をはがされる日」の自由

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戸田真琴
撮影:飯田エリカ 編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

「女として見られなくなる」ことはすこし寂しくても、決して悪いことではない

生まれたときは皆、ぱっと見では女か男かわからない。思春期まではその境目が曖昧で、その後私たちは女の身体と男の身体にわかりやすく分かれていき、そしていつか、俗っぽい言葉で言うと「女として」「男として」見られなくなるときが来る。街を歩く老夫婦は衣服や持ち物を含めなければ、見た目だけでは男女の区別がつかないことも珍しくない。私たちはみんないつか、また似通っていくときが来る。

「女として見られなくなる」ことは長らくマイナスな意味として使われてきたけれど、私は少しだけ、女として見られなくなったその日がどんなふうに自由なのか、知ることを楽しみにしている。誰かから付けられてきた値札に愛着や執着がわくことはあるかもしれないけれど、それを本当に心から愛おしく思える日は終ぞ来ないのではないかと悟ったのだ。

戸田真琴

思春期よりずっと、女として見られるという事実を、慎重に扱ってきた。女として見られ過ぎないように態度や衣服を調整するようなところがあったし、その気持ちに対抗するようにわざと性に関わる仕事を選んだところもある。女であることに漬かりきって生きることを恐れ、同時に女であることを無視することもないよう戒めながら生きてきた。それでもいつか、終わる日が来る。

人よりも肌を晒していることによってより手早く消費されるものなのか、それとも仕舞っておいても速度は変わらなかったのか、それさえもわからないけれど、この値札がいつかはがれることは、決して悪いことではない、そう思えた。新しい視界が徐々に広がっていくような、すこし寂しくとも決して悲しむ必要のないような、そういうことだといい。

戸田真琴
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番組情報

『Podcast 戸田真琴と飯田エリカの保健室』

毎週月曜日20時に、Apple Podcast、Spotify他で配信中

書籍情報

『人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても』
『人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても』

2020年3月23日(月)発売
著者:戸田真琴
価格:1,650円(税込)
発行:KADOKAWA

『あなたの孤独は美しい』
『あなたの孤独は美しい』

2019年12月12日(木)発売
著者:戸田真琴
価格:1,650円(税込)
発行:竹書房

プロフィール

戸田真琴(とだ まこと)

2016年にSODクリエイトからデビュー。その後、趣味の映画鑑賞をベースにコラム等を執筆、現在はTV Bros.で『肯定のフィロソフィー』を連載中。ミスiD2018、スカパーアダルト放送大賞2019女優賞を受賞。愛称はまこりん。初のエッセイ『あなたの孤独は美しい』を2019年12月に、2020年3月には2冊目の書籍『人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても』を発売した。

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