プロスケーター森田貴宏の遊びの美学 のめり込むのもほどほどに

プロスケーター森田貴宏の遊びの美学 のめり込むのもほどほどに

インタビュー・テキスト
中島晴矢
撮影:沼田学 編集:今井大介(CINRA.NET編集部)

面ではなく、針のように深く刺す。一匹狼だからこその映像作家としての強み

―森田さんはスケーターであると同時に映像監督でもありますよね。映像を撮り始めるきっかけは何かあったんですか?

森田:実は、父親の影響なんですよ。父がオーディオビジュアル系の機械の品質をチェックする会社にいたから、家にシャープとかソニー、パナソニックのビデオカメラのサンプルがいっぱいあったんです。その中で返さなくていいようなものを、親父に借りて使わせてもらってました。だから中2くらいからビデオカメラを持ってた。結局それは壊しちゃって、親父に「もうお前には貸さん」って怒られるんですけど(笑)。

―その家庭環境は大きいですね!

森田:親の影響はデカいですね。子どもの頃に月一度、家族全員で歌舞伎町に映画を観に行く「映画の日」があったんです。いつも観終わったら飯食いに行って、「どこがよかったか」「何に一番感動したか」ってディスカッションするんですよ。兄貴が2人いて、理屈っぽい人たちだったから、僕も負けじと言葉にして伝える。今考えたら、すごい高度な感性を叩き込んでくれましたね。それで映画が好きになって、映像を見てゾクゾクする感覚の虜になったんです。

―そのあとご自身が作り手側に回るわけですよね。映像を撮ろうと思ったときの原動力は何だったんでしょう?

森田:やっぱり同年代の奴らが僕より先に作ってたスケボービデオですね。純粋に悔しかった。だいたい、映像を一緒に作る仲間がいるのが羨ましい(笑)。僕はどっちかというと一匹狼タイプだったから、自分勝手だし協調性もない。でも、僕にとって一番大事なのは「自由」なんですよ。スケボーってそれが許される遊びだから、どこへ行くにも常に一人で乗り込んでいきましたね。

FESN /overground broadcasting / FESN Headquarters part(ビリヤードパート)

―映像を撮るときも、基本的には一人?

森田:そうですね。当時よく言ってたのは、「針はよく刺さる」ということ。面でいくとぶつかっちゃうけど、一点で突けば深く刺さるじゃないですか。だから大勢でよりも、一人で乗り込むことに価値を感じるんです。地方も海外も、一人で行くから突っ込めるし、切り込める。そのスタイルでずっとやってきましたね。

そうやっていろんな場所でカメラを回してたら、途中で「俺はローカリズムが撮りたいんだ」って気づいたんです。もちろんスケボーも撮りたいけど、それ以上にその地域ごとの色を撮りたい。自分がすべきことはそれだと確信しましたね。だからこそ広い世界を見に、海外にも飛び出ていったんです。

森田貴宏

―グローバルに活動しつつ、その土地土地のローカリズムに注目したんですね。

森田:あと、何より「ホンモノ」が見たかったですね。どうせならすごい奴らと遊びたいじゃないですか。「ホンモノの奴らと俺は何が違うんだろう?」って思いながらアメリカに渡りました。「東京で天下取ってもニューヨークで天下取れないならイケてないよな」「俺は大丈夫、絶対イケてる」って言い聞かせて(笑)。自分が一番なりたくないのは、「井の中の蛙」だったんです。「大海を知る」じゃないですけど、そんな価値観で海外に行ってました。

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店舗情報

FESN laboratory

住所:〒164-0001 東京都中野区中野3丁目33−15
営業時間:14:00~20:00
定休日:木曜日
電話:03-6382-5406

プロフィール

森田貴宏(もりた たかひろ)

東京都杉並区松ノ木出身のスケーター。極東最前線から斬新な映像作品を発表するビデオプロダクション、FESNの代表。2008年に発表した《overground broadcasting》は、国内だけでなく世界各国で賞賛を得た代表作。アパレルブランド、LIBE BRAND UNIVS.の代表も務める。現在は、ホームベースでもある中野でスケートボードをオリジナル制作するFESNラボラトリーを運営。

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