「わくわくさん」を生きる久保田雅人が語る、自分の道の選び方

「わくわくさん」を生きる久保田雅人が語る、自分の道の選び方

2021/02/24
インタビュー・テキスト・編集
飯嶋藍子
撮影:タケシタトモヒロ

工作はものを作るだけじゃない。「親子で作って楽しかったね」という思い出を作ってほしい。

―時代に合わせて変わっていかないといけなかったんですね。

久保田:そうですね。あと、番組が始まって10年くらいして、「わくわくさんとゴロリくんが作ったものと同じでないといけない」「こう作らねばならない」と思ってしまっている親御さんが増えてきたように感じました。「それは違うぞ!」と言いたい。見た目はどうだっていいんですよ。工作はものを作るだけじゃないんです。それよりも「親子で作って楽しかったね」という思い出を作ってほしい。

久保田雅人

久保田:それからは、「工作は思い出を作るということを伝えよう」という気持ちに変わっていったのが自分の中では大きかったです。でもやはりやればやるほど苦しいなと思う時もあります。未だに本番前は緊張しますし、やっぱりどこかで失敗を怖れている自分もいます。

―それでも逃げず、目移りもせずに、今の道だけを歩んでこられたのはなぜでしょう?

久保田:続けていると苦しい反面、「こうしたらいいんだ」と見えてきた時の喜びも大きくなっていくんです。始めた当初は本当に全然ダメだったんですよ。子どもたちは大人と違って義理で見てくれないから、途中で話し始めちゃうし、じっとしてない。そういうことを嫌でも経験して。

それでも続けて、番組開始から15年以上経ったら、自分の頭の中も「わくわくさん」ばかりになっていました。渥美清さんが「渥美清が寅さんに喰われちゃった」とおっしゃっていたのですが、私もわくわくさん以外できなくなっちゃったんですよね。役者としては一生やり続けたいと思える役に出会えるなんて本当に幸せなことです。

久保田雅人

―番組が終わってもなお「工作」を軸に置いているのはなぜでしょうか?

久保田:『つくってあそぼ』が終わって、民放さんにちょこっとだけ出させていただいたんですけど失敗したんです。やっぱり違うなと思いましたね。その道を歩むと決められて、鍛錬を積み重ねてきたタレントさんたちがいるわけですから、私が混じったところで敵うわけがない。テレビに出るとかそういうことではなく「工作を世に広める活動が俺の道なんだな」と、失敗して改めて感じました。

久保田雅人

―ひとつのことを突き詰めるというと、「横道に逸れてはならぬ」といった感覚にもなりそうですが、久保田さんのその気づきは、いつもと違うことをやったからこそ得られたものですよね。

久保田:そうですね。エキスパートと言われている方は、ちょっと横道に逸れていろんな失敗をされていると思います。だからこそ「やっぱり俺にはこれなんだ」と気がついていらっしゃるんじゃないかな。

人生に本当の失敗なんてないんですよ。それは、自分が間違っていたことを知るという成功なんです。

―どれだけ失敗しても戻ってきてしまうところに、自分の突き詰めるべき道があるのかもしれないですね。

久保田:そうだと思います。もちろんいろんな肩書きがある人も素晴らしいです。いろんな才能をちゃんと活かせているからできることですもんね。頭を多方面に切り替えられない人はひとつの道を突き進むしかないけれど、何回かは欲を出して横道に逸れてもいいと思います。人間、他のことに手を出したくなる時もありますから。それで失敗するといい。

私が思うに、人生に本当の失敗なんてないんですよ。それは、自分が間違っていたことを知るという成功なんです。工作でも、私は子どもたちに「失敗してもいいよ」と言います。間違えを知るだけでいい。それが、「今度はこうしてみようね」という進歩につながるわけなんです。一度やってみると、次の攻め方もわかってきます。

「YouTubeも欲ですね」と久保田。工作の見せ方をより突き詰めた動画制作を計画中だという。

―「これにかける」という決意には、ほかのものを捨ててストイックに進むような禁欲のイメージがつきまとう気がするのですが、欲は大事だと思いますか?

久保田:人間、絶対欲が出ますからね(笑)。いろんな選択肢を持っていていいんですよ。それでいろいろチャレンジして失敗することで、自分というものを知る。すると道が見えてくるわけです。番組が終わって、私が民放に出たのも欲ですよ。私のような職業はテレビに出続けてなんぼだと思っていたんです。

だから、深く考えずにホイホイ出てしまった。そしたらやっぱり失敗して、改めて自分のことを知れました。欲が出て、失敗したり、もしかしたら横道のほうが本流になったり、でも、また戻ってきたり……そういうことの繰り返しだと思うんです。

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プロフィール

久保田雅人(くぼた まさと)

1961年、東京生まれ。中学高校の社会科の教員免許を取得、大学在学中に劇団「プロジェクト・レヴュー」に所属し、俳優・声優として活動を開始。1990年4月から2013年3月まで放送された、NHK教育テレビ(現・Eテレ)の幼稚園・保育所向け造形番組『つくってあそぼ』に、「わくわくさん」役として出演。現在も全国の幼稚園や保育所、学校などで、工作を伝え続けている。

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