サッカー選手・田中亜土夢が没頭する、フィンランドの本場サウナ

サッカー選手・田中亜土夢が没頭する、フィンランドの本場サウナ

インタビュー・テキスト
榎並紀行(やじろべえ)
編集:吉田真也(CINRA)

なぜフィンランドは幸福度が高い? 生活環境がもたらす価値観とは

―なるほど。国際連邦が毎年発表している「幸福度ランキング」では、フィンランドが世界1位を3年連続で獲得していますが、サウナ文化が国民の心のゆとりの要因にもつながっているかもしれないと。サウナ以外に、フィンランドの幸福度を高めている要因を挙げるとすると何かありますか?

田中:やはり豊かな自然が身近にあるところじゃないですかね。空気もおいしいし、のどかで心が安らぎます。ぼく自身も日本に住んでいた頃より、ヘルシンキに住んでいる今のほうが、精神的に落ち着いているのを実感しています。

ヘルシンキはフィンランドの首都なので都会ですが、10分くらい歩けば大きな森がある。街がコンパクトで、都会の便利さと自然の豊かさ両方を備えているからとても暮らしやすいですよ。

フィンランドを象徴する森と湖(画像提供:田中亜土夢)
フィンランドを象徴する森と湖(画像提供:田中亜土夢)

―たしかに「北欧」といえば、森や湖といった自然を連想します。

田中:あと、ペットを飼っている人が多いのも特徴かも。ぼくも犬を飼っているんですけど、フィンランドの街は犬にとって優しい環境なのですごくありがたいです。犬を連れて公共の交通機関(地下鉄、路面電車、バスなど)にも乗れますし、レストランやデパートなどもほとんどが入店できます。街中にドッグパークもありますし、散歩もしやすい。

普段の暮らしのなかで、ペットが家族の一員として国から認められているように感じるんです。ペットがいると笑顔も増えるので、一人ひとりの幸福度にも良い影響を与えているのではないでしょうか。

愛犬のバークと乗車した地下鉄(画像提供:田中亜土夢)
愛犬のバークと乗車した地下鉄(画像提供:田中亜土夢)

―良いですね。フィンランドで暮らしたら、心が豊かになりそうです。

田中:フィンランドは日本と比べると、そこまで物が溢れていないし、何でも揃っていて便利というわけではない。でも、自然や動物と触れ合う時間など、普遍的なものをより大事にする価値観があるので、そういうおおらかさが幸福度につながっているんでしょうね。

―では、日本と比べて共通点を感じる部分はありますか?

田中:フィンランド人は比較的控えめで、空気を読むというか「話さなくても察する」みたいな感覚を持っているところが、日本人に近いなと感じます。そのおかげか、最初に日本からフィンランドリーグに移籍したときもチームに違和感なく溶け込めて、とてもやりやすかったです。

加えて、ひたむきに頑張る選手が多いため、そこも日本人選手と似ている気がします。新型コロナウイルスでリーグが中断しているときも、できる範囲でしっかりとトレーニングを行うなど、自分を律する選手がたくさんいて真面目だなと感じました。スポーツ選手に限らず、フィンランド人の多くから誠実さや実直さを感じます。

HJKヘルシンキのチームメイト(画像提供:田中亜土夢)
HJKヘルシンキのチームメイト(画像提供:田中亜土夢)

いつかサウナ施設をつくりたい。『MOI SAUNA』を通じて、叶えたい夢

―コロナ禍におけるフィンランドの街の雰囲気もうかがいたいです。日本では、2020年4月に緊急事態宣言が発令されて社会全体が閉塞感に包まれていましたが、その頃のフィンランドはどんな雰囲気でしたか?

田中:もちろん、一人ひとりが気をつけようという意識は強まっていましたが、おそらく他国と比べると閉塞感が漂っていたわけでもなかったかなと思います。

2020年3月にロックダウンが行われたのですが、さほど厳格な外出規制はなく、散歩などはむしろ推奨されていました。実際、自粛期間中に近所の森のなかにある13キロのジョギングコースを走りに行ったら、往復で数百人とすれ違いましたから。

―フィンランドでは、生活上の厳しい制限をせずに感染を抑制できている(2020年12月時点)と、ニュースでも拝見しました。

田中:フィンランド人はフレンドリーだけど、身体的な接触などは控えめなので、その辺りも感染を抑えている要因なのかなと思います。

ぼく自身もロックダウン中でも散歩やジョギングは普通にしていたので、ずっと家にいてモヤモヤするという感じではなかったです。さすがに密な空間は怖いので、サウナには行けませんでしたけど(笑)。

―サウナに入れるようになったのは、ロックダウンの解除後でしょうか。

田中:そうですね。4月中旬にはロックダウンも解除になり、徐々にサウナも入れるようになっていきました。今も感染に気をつけながらではありますが、サウナを楽しめる状況ではあります。

とはいえ、日本ではまだまだ海外に行くのは怖いと考えている方は多いと思いますし、フィンランドに旅行でいらっしゃるのも今は難しい状況だと思います。ですから、ぼくが『MOI SAUNA』で現地のサウナの魅力を精力的に発信することで、せめて気分だけでも味わっていただけたら良いなと考えています。

(画像提供:田中亜土夢)
(画像提供:田中亜土夢)

―最後に、これからの『MOI SAUNA』のビジョンをおしえてください。

田中:まだまだ知られていないスポットもたくさんありますし、フィンランドならではの文化や、本場のサウナの入り方やマナーなども日本の方々に紹介していけたらと思っています。

それから、最終的には『MOI SAUNA』としてサウナ施設をオープンさせたいという大きな夢もあります。そのためにも、今後も本場のいろんなサウナを見て体験していきたいですし、フィンランドの文化にも積極的に触れていこうと思っています。ぼくの活動を通して、多くの日本人にフィンランド文化やサウナの魅力が少しでも伝われば嬉しいです。

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ウェブサイト情報

『MOI SAUNA』

フィンランドリーグ初の日本人フットボーラー田中亜土夢が、今感じてもらいたい、フィンランドの文化や魅力を紹介するサイト

プロフィール

田中亜土夢(たなか あとむ)

1987年10月生まれ、新潟県出身。2005年にアルビレックス新潟の特別指定選手となり、高校生ながらJリーグ公式戦に2戦出場した。前橋育英高校を卒業後、2006年にアルビレックス新潟に入団。同年にはU-20日本代表に選出。アルビレックス新潟は2014年まで在籍し、公式戦通算200試合に出場した。2015年、フィンランドの「HJKヘルシンキ」に移籍し、日本人として初めてフィンランドの1部プロリーグに挑戦する選手となる。2017年に退団するまで、通算公式戦81試合出場、計20得点を挙げ、国内2冠に貢献。2018年よりJリーグのセレッソ大阪に加入。2020年に再びフィンランド「HJKヘルシンキ」に復帰。同年のリーグ戦とカップ戦の2冠達成に貢献した。2020年8月には、フィンランドの文化やサウナの魅力を発信するサイト『MOI SAUNA』を立ち上げる。

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