
手話という表現の世界。NHK手話ニュース那須英彰が語る
- インタビュー・テキスト
- 村上広大
- 手話翻訳・動画テキスト翻訳:犬塚直志 写真撮影:上原俊 動画撮影・動画編集:安藤亮 企画・リード文・編集:矢澤拓(CINRA.NET編集部)
コミュニケーションが生きる活力。那須英彰のこれから
―今後の活動についてもお伺いしたいのですが、どのようなことをしていきたいと考えていますか?
那須:現在は手話ニュースキャスターの仕事に加えて、演劇や講演などもやっているのですが、引き続きそれぞれの活動を続けていきたいですね。
―講演ではどのようなことを話しているのでしょうか?
那須:その時々で変わります。聴者がお客さんの場合は、少しでも手話に興味を持ってくれるような話題が多いですね。ろう者のお客さんが多い場合はとにかく娯楽として受け取ってもらうことを大事にしています。
直近で秋田に行ったときは「高齢ろう者の魅力的な手話」をテーマに話しました。私が若かった頃に、60代から80代の手話を映像に収めていたことがあるのですが、それを流したら年配の方々がすごく懐かしがってくれました。言葉が進化していくのは手話も同じで、今はもう使われていないものもあるんですよ。
―聴者にもろう者にも、興味深いお話ですね。
那須:講演ではその場で笑ってもらって、日々の活力にしてほしいなと思っています。会場の人たちが笑ってくれると私自身も嬉しいですし。ろう者にとっての娯楽は、テレビや映画なども字幕があれば見ることはできますが、手話を見られるわけではありません。だから手話での演劇や講演はろう者にとって貴重な自分たちの言語が使われている娯楽の場なんです。
―那須さんにとって手話は娯楽でもあるのでしょうか?
那須:私にとって手話は言葉です。第一言語として使っていますので。言葉を使ってコミュニケーションを取ることで、私は生きている実感が湧いてくるんです。聴者、ろう者含めてさまざまな方とコミュニケーションをとるきっかけにもなる演劇や講演は生きているかぎり続けていきたいですね。それに第一言語としての手話に、娯楽や勉強、さらにはニュースで伝えるという要素が加わって今に至ります。手話は私自身が生きるために必要なものですね。
プロフィール
- 那須英彰(なす ひであき)
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1967年3月、山形県生まれ。2歳の時に両全ろうとなる。幼い頃から映画と演劇に興味を持ち、大学時代に青森の劇団、後に日本ろう者劇団で計15年間、舞台出演。1995年NHK手話ニュースキャスターに抜擢され、現在NHK Eテレ「手話ニュース845」の毎週金曜日夜8時45分~9時に出演中。著書に「手話が愛の扉をひらいた」、「出会いの扉にありがとう」(写真エッセイ)がある。2006年、カナダのトロント国際ろう映画祭2006で大賞・長編部門最優秀賞受賞した『迂路』という映画に主演。2009年、(財)全日本ろうあ連盟創立60周年記念映画「ゆずり葉」に出演。現在、講演、1人芝居活動中。