矢部太郎と地理の専門家が語る、スマホじゃない紙地図の面白さ

矢部太郎と地理の専門家が語る、スマホじゃない紙地図の面白さ

インタビュー・テキスト・編集
飯嶋藍子
撮影:萩原楽太郎
2020/11/09
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最後に紙の地図を広げて見たのはいつだろうか? 道草を食ったのはいつだろうか? スマホの地図に誘導され、現在地から目的地まで最短距離で一直線に進む動く点となった私たちは、今、あまり自分の立っている土地のことをわかっていないのかもしれない。

今回、山梨の里山を歩きながらその風景や人々の姿をスケッチする番組を持つカラテカ・矢部太郎さんと、茨城大学で社会科の教員志望の学生を教えながら、スウェーデンの地理や風土についての著書なども執筆している村山朝子さんの対談を実施。

話の中で浮かび上がってきたのは、地理は暗記科目ではなく、空間と時間を行き来する想像力を掻き立てられるものだということ。北欧と日本の地形、風土の違いを始め、スマホの地図と紙の地図について、そして、時間を取ってその土地のことを知りたくなる地理の話を聞いた。

日本ってどういうところだろうと考えるうえで、北欧は比較対象として適材。(村山)

―村山先生は普段大学で学生さんたちを教えていらっしゃいますが、個人としてはどのような研究をされていますか?

村山:社会科教育の中でも、特に地理って十分な理解が得られていないんです。でも、とても意味があるし楽しいものなので、それをどうやって伝えようかと日本の地理教育のあり方を考えていく過程で、スウェーデンをはじめとした北欧の国々の風土のことを調べるようになりました。

左から:矢部太郎、村山朝子<br>矢部太郎(やべ たろう)<br>お笑い芸人 / 漫画家。1977年生まれ。東京都出身。1997年に「カラテカ」を結成。芸人としてだけでなく、ドラマ、映画で俳優としても活動。初めて描いた、自身の体験をもとにした漫画『大家さんと僕』で『第22回手塚治虫文化賞』短編賞を受賞した。現在、小説新潮にて絵本作家である父・やべみつのりとの幼少期のエピソードを綴ったエッセイ漫画『ぼくのお父さん』を連載中。<br>村山朝子(むらやま ともこ)<br>茨城大学教育学部教授。1958年生まれ。静岡県出身。お茶の水女子大学文教育学部地理学科卒業。奈良女子大学大学院文学研究科修士課程修了。2009年より現職。社会科教育学、地理教育を専門とし、中学校社会の教科書執筆に携わる。スウェーデンの名作『ニルスのふしぎな旅』を地理の観点から研究。著書に『ニルスに学ぶ地理教育―環境社会スウェーデンの原点―』など。
左から:矢部太郎、村山朝子
矢部太郎(やべ たろう)
お笑い芸人 / 漫画家。1977年生まれ。東京都出身。1997年に「カラテカ」を結成。芸人としてだけでなく、ドラマ、映画で俳優としても活動。初めて描いた、自身の体験をもとにした漫画『大家さんと僕』で『第22回手塚治虫文化賞』短編賞を受賞した。現在、小説新潮にて絵本作家である父・やべみつのりとの幼少期のエピソードを綴ったエッセイ漫画『ぼくのお父さん』を連載中。
村山朝子(むらやま ともこ)
茨城大学教育学部教授。1958年生まれ。静岡県出身。お茶の水女子大学文教育学部地理学科卒業。奈良女子大学大学院文学研究科修士課程修了。2009年より現職。社会科教育学、地理教育を専門とし、中学校社会の教科書執筆に携わる。スウェーデンの名作『ニルスのふしぎな旅』を地理の観点から研究。著書に『ニルスに学ぶ地理教育―環境社会スウェーデンの原点―』など。

―日本の地理教育なのに、注目したのは北欧なんですか?

村山:きっかけはスウェーデンの地理教育に注目したことですが、日本ってどういうところだろうと考えるうえで、北欧は比較対象として適材なんです。スウェーデンを題材にしながら、一般向けの本を書いたりもしますし、中学校の教科書の執筆も長くやっているんですよ。

矢部:ヘ~! すごい! 地理の教科書。

村山:もう30年くらいやっているので矢部さんも使っていたかも(笑)。

町でスケッチをする時は地形をどうしても意識します。(矢部)

―矢部さんは、学生時代、地理の授業は好きでしたか?

矢部:正直に言うと、僕、地理嫌いじゃなかったです! 先生がおもしろかったんですよね。髭をたくわえている変わってる先生で、よく話が脱線して。「この国のこの地方は〇〇っていう酒が美味しくてねぇ~」とか(笑)。だから、思い返すと地理そのものっていうより、その先生の話がおもしろかったのかもしれません。

矢部太郎

―矢部さんはテレビ番組『カラテカ矢部のおもひでスケッチ』で、山梨の土地を歩きながら風景や人をスケッチしていますよね。そのうえでその土地の形を考えることはありますか?

矢部:あります。絵を描くことって、よく見ることだと思っていて。よく見て、知って、そして描かないとダメだと思っているんです。なので、町でスケッチをする時は地形をどうしても意識します。山梨で絵を描いている時は、とにかく山に囲まれているんだなあっていつもすごく思っていて。

あと、地形が変だなって思ったら地元の人に聞いたりもしています。すると「信玄堤がここにあって、武田信玄が川を増水しないようにしたんだよ」とか、その土地について知っていけるんですよね。

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書籍情報

『大家さんと僕 これから』
『大家さんと僕 これから』

2019年7月25日(木)発売
著者:矢部太郎
価格:1,210円(税込)
発行:新潮社

『「ニルスのふしぎな旅」と日本人: スウェーデンの地理読本は何を伝えてきたのか』
『「ニルスのふしぎな旅」と日本人: スウェーデンの地理読本は何を伝えてきたのか』

2018年11月16日(木)発売
著者:村山朝子
価格:2,750円(税込)
発行:新評論

『新訂「ニルス」に学ぶ地理教育:環境社会スウェーデンの原点』Kindle版
『新訂「ニルス」に学ぶ地理教育:環境社会スウェーデンの原点』Kindle版

2019年3月26日(火)発売
著者:村山朝子
価格:700円
発行:22世紀アート

プロフィール

矢部太郎(やべ たろう)

お笑い芸人 / 漫画家。1977年生まれ。東京都出身。1997年に「カラテカ」を結成。芸人としてだけでなく、ドラマ、映画で俳優としても活動。初めて描いた、自身の体験をもとにした漫画『大家さんと僕』で『第22回手塚治虫文化賞』短編賞を受賞した。現在、小説新潮にて絵本作家である父・やべみつのりとの幼少期のエピソードを綴ったエッセイ漫画『ぼくのお父さん』を連載中。

村山朝子(むらやま ともこ)

茨城大学教育学部教授。1958年生まれ。静岡県出身。お茶の水女子大学文教育学部地理学科卒業。奈良女子大学大学院文学研究科修士課程修了。2009年より現職。社会科教育学、地理教育を専門とし、中学校社会の教科書執筆に携わる。スウェーデンの名作『ニルスのふしぎな旅』を地理の観点から研究。著書に『ニルスに学ぶ地理教育―環境社会スウェーデンの原点―』など。

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