栄養たっぷりの豆スープを食べるのは、断食前の「木曜日」
北欧の家庭料理を日本の食卓で味わえるレシピを紹介する本連載。冬の期間が長く、食材に限りがある北欧では、保存のきく食物や料理が重宝されてきました。なかでも栄養価の高い材料で作られた「スープ」は、現地の人の身も心も温めてきたはず。今回は、スウェーデンやフィンランドで古くから伝わる、栄養価の高い「豆のスープ」を紹介します。
カトリック教徒が多かったスウェーデンやフィンランドでは、金曜日の断食に備え、前日の木曜日に滋養のあるものを食べる風習があります。その風習が元になって生まれたのが、伝統料理「豆のスープ」です。宗教的な節制をする人が少なくなったいまでもその風習は残っており、家庭やレストランでは「木曜日は豆スープの日」と呼ばれ、作られているところも多いとか。
以前、スウェーデン人の友人に「木曜の豆スープ」を食べているのか聞いてみたところ、「小さい頃、木曜日に食べていたよ。でもあまり好きじゃなかったな。だってモソモソしているんだもん」と返答されました。……モソモソしている? どんなスープなのか気になり、当時、現地のレシピ本を訳しながら作ってみると、その理由がわかりました。
子どもの「グリンピース豆嫌い」は、日本もスウェーデンも共通だった?
北欧で作られている豆スープ、スウェーデンでは「ärtsoppa(アートソッパ)」、フィンランドでは「hernekeitto(ヘルネケイット)」と呼ばれており、日本語に訳すといずれも「えんどう豆のスープ」となります。日本でよく食べられているえんどう豆とは「グリンピース」のこと。子どもの頃、グリンピースご飯や料理にトッピングされているグリンピースが苦手だった人も多いですよね。そのことを知って、スウェーデン人の友人が「豆のスープが苦手」と答えたのにも納得。「モソモソとした食感を子どもが嫌うのは世界共通なのね」と思わず笑ってしまいました。
以前一緒にスウェーデン旅行をした友人からプレゼントされた『ムーミンママのお料理の本』。この北欧料理のレシピ本のなかに「ウインナーとグリンピースのスープ」という料理があり、今回はそれをヒントにレシピを考案しました。
今回使用したのは、えんどう豆ではなく日本で手に入りやすいひよこ豆にし、さらに日本人が好きなカレー風味にアレンジ! 毎週木曜日に子どもも食べたくなるような豆のスープをご紹介します。
<材料>(2~3人分)
ひよこ豆(水煮) 200g
ソーセージ 6本
玉ねぎ 100g
水 600ml
オリーブオイル 大さじ1
洋風スープの素 小さじ1
塩 小さじ1
カレー粉 小さじ1
ローレル 1枚
<作り方>
1. 豆はざっと洗って水気をきっておく。玉ねぎは粗みじん切りにしておく。2.鍋にオリーブオイルを入れて玉ねぎを中火で炒め、玉ねぎが透明になったらソーセージとカレー粉、ローレルを加えてさらに炒め、カレー粉がなじんだら豆と水、塩をいれる。
3.2が沸騰したら弱火にして蓋をしめ、20分ほど時々かき混ぜながら豆が少し崩れ、ソーセージがはじけるくらいまで煮こむ。
スウェーデンでは定番のライ麦パンを添えて完成。今回使用したスープボウルはアラビアのパラティッシ ボウルです。大胆な花柄なのに、モノトーンでシックなところが気に入っています
本場のえんどう豆や、馴染みのあるひよこ豆など、いろいろな種類でアレンジしてみて
養豚業が盛んなデンマーク。その隣国であるスウェーデンも豚肉から作った保存食、ソーセージやベーコンがよく食べられています。今回はソーセージで作りましたが、塩気のあるベーコンで作っても美味しいですよ。
豆はどの種類も栄養価が高いので、ひよこ豆の代わりに大豆やキドニービーンズ、最近日本のスーパーでも見かけるようになったレンズ豆で作っても美味しいですよ。ズボラさんは、手間のかからない水煮のものや浸水しなくてもよいものを選ぶといいですね。また、北欧伝統の「えんどう豆のスープ」で使われている「黄えんどう豆」も入手可能なので、一度本場の「木曜日の豆のスープ」を作ってみては? 北欧に旅した気分になれますよ。
- プロフィール
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- フルタヨウコ
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料理家・編集者。料理家としてレシピ寄稿やワークショップなどで活躍するほか、デザイン関係の書籍やウェブで編集・執筆なども手がける。ウェブメディア『北欧、暮らしの道具店』を運営するクラシコムで社員食堂を担うほか、自由大学にて「朝ごはん学」の教授を務める。また、制作&プロデュースをするオリジナルジャムは毎回、即完売する人気アイテム。著者は『北欧のおいしいスープ』(新星出版社)など。
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- 連載『北欧レシピ』
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現地の暮らしを知るには、その土地の食文化や伝統料理にふれることが一番の近道ではないでしょうか。伝統を重んじる北欧諸国では、100年以上受け継がれている食習慣やレシピがたくさんあります。そんな北欧の家庭料理を日本の食卓で味わえるレシピを紹介していきます。