コロナ禍で再注目? 世界各国に根づくボードゲーム文化
各地にボードゲームカフェが広まった影響で、日本でのボードゲーム人気がじわじわと高まっている。さらに、コロナ禍によりおうち時間も増えたため、ますます家族や友人とボードゲームを楽しむ人が増えそうだ。
その傾向は海外も同じだが、昔からボードゲーム文化が深く根づいている地域もたくさんある。とくに冬の期間が長く、室内で過ごすことが多い北欧では、子どもから大人までボードゲームに興じるという。北欧で親しまれているボードゲームには、どんな特徴や面白さがあるのだろうか?
今回は、人気バラエティー番組『アメトーーク!』でボードゲームのプレゼンを行った芸人・いけだてつやさんをお招きし、北欧にまつわるボードゲームの楽しみ方を教えてもらうことに。ご本人の私物のボードゲームを実際にプレイしながら、その魅力を探っていく。
所有数およそ400個。他国製と比べて感じる、北欧発のボードゲームの特徴
北欧にまつわるボードゲームを紹介いただく前に、そもそもいけださんが海外製のボードゲームにハマったきっかけを聞いた。
いけだ:ぼくが海外のボードゲームに出会ったのは、20年以上前。当時お笑い養成所で一緒だった先輩に誘われて、『スコットランドヤード』で遊んでみたのがきっかけです。このゲームは、ロンドン市内に潜伏して逃走する怪盗Mr.Xを、何名かの刑事たちが相談し合いながら時間内に捕まえられるかという内容で、会話がはずんでめちゃくちゃ楽しかったんです。
また、ボードを囲みながらお互いの目を見てコミュニケーションをとる場面も多く、デジタルゲームにはない人の温かみを感じられたのもハマった理由のひとつ。そこから興味を持ってボードゲームを買うようになりました。
だけど、その頃はプレステ2が全盛で、ボードゲーマーは隠れキリシタン的な存在。周りに知られないように、こっそり集めていましたね(笑)。気づけば400種類くらい持っています。
ゲーム自体の面白さだけでなく、人とのコミュニケーションツールとしても有効だと気づき、ボードゲームにハマったいけださん。いまでは、初心者を含む友人を自宅に集めて、当日のメンバーが好きそうな海外のボードゲームをセレクトして遊んだり、ボードゲームカフェに行ってそこで出会った人たちと真剣勝負をしたりと、すっかりボードゲームの虜になっているそうだ。
そんな世界中のボードゲームを知り尽くすいけださんは、北欧にまつわるボードゲームも数多く所有しているという。北欧のボードゲームの特徴とは何だろうか。
いけだ:北欧神話を起源とする、ファンタジー要素を取り入れたボードゲームが多い印象ですね。あとは、草木や動物などの要素が多かったり、アイテムの部品に触り心地の良い木材を使っていたりするのも特徴。そのナチュラルさが北欧らしさを感じさせてくれます。また、色使いが明るく、ボードや箱のデザインがポップなものも多いので、箱を部屋に置いているだけでも楽しい気分になりますよ。
おすすめ北欧ボードゲーム4つを実際にプレイ! まずは名作『エルフィンランド』
北欧にまつわるボードゲームの特徴を教えてもらったところで、早速、いけださんがセレクトしてくれたゲームをいくつか体験させてもらった。
まず1つ目は1998年にボードゲームでもっとも権威のある「ドイツゲーム大賞」で大賞を受賞した『エルフィンランド』。北欧を代表する名作ボードゲームだ。北欧神話に出てくるエルフの青年たちが、ドラゴンやユニコーンなどのファンタジーな乗り物を駆使しながらいろんな街を回っていく。最終的に、より多くの街を訪れた人が勝ちとなる。
いけだ:まさに北欧らしいテーマですよね。このゲームはぼくが24歳くらいの頃からやり込んでいて、今回ご紹介するなかで思い入れがいちばん強いゲームです。2~6人でプレイできますが、経験上4人ぐらいがベストかな。最初の設定さえわかればすぐにコツを掴めるし、運の要素も入っているので大逆転もできます。まさに子どもから大人まで全世代が楽しめるので、家族で遊ぶゲームとしてもおすすめです。
このゲームは、手持ちのカードに対してどこにタイルを置くか考えることが重要になる。一方で、相手が置いたタイルのうえも移動できるので、運の要素や妨害などの駆け引き要素も。やり込むほどに面白さを感じられるはず!
北欧の都市を鉄道で巡る。地域性を感じられる『チケット・トゥ・ライド』
続いては、人気シリーズ『チケット・トゥ・ライド』。このシリーズは北アメリカ大陸版から始まり、ヨーロッパ版、ドイツ版、日本版、世界地図版などさまざまなバージョンがある。今回プレイしたのは、北欧バージョンの『チケット・トゥ・ライド:北欧の国々』だ。内容は、都市の鉄道路線を舞台に、出発地から目的地まで誰がもっとも進められたかを競うというシンプルなもの。
いけだ:『チケット・トゥ・ライド』シリーズも、2004年に「ドイツゲーム大賞」で大賞を受賞している名作。5分でルールを理解できるのが売りなので、幅広い年齢層に親しまれています。このゲームの各地域シリーズをやりこむ「チケライファン」と呼ばれる人たちもいるんですよ。
北欧版の場合は、ラウマ鉄道という蒸気機関車やフェリーを乗り継いで地域を横断する設定。カードに描かれた列車には雪が積もっていて、海を渡らないといけないルートがあるなど、北欧の地域性を感じながら遊べます。
実際にやってみると、行こうとしていたルートをほかのプレイヤーに取られてしまったり、欲しい電車の色が手に入らなかったり。シンプルなゲームだが、なかなか難しい! また、北欧のおおまかな地形や都市の名前も、楽しみながら覚えられるので学びにもなった。
ノルウェーに実在する漁村が舞台。戦略が重要になる『ヌースフィヨルド』
3つ目は、ノルウェー北部のロフォーテン諸島に実在する漁村・ヌースフィヨルドをテーマにした『ヌースフィヨルド』。50年前に全盛期だった漁村をふたたび繁栄させるべく、プレイヤーは漁業会社のオーナーとして事業の発展を目指していくという内容。資金を増やしながら村を開発するゲームだ。全7ラウンドをプレイし、最終的に船や建物、所有する株券がもっとも多いプレイヤーが勝者となる。
いけだ:ぼくが好きなタイプの計画性が必要なゲームです。通常ルールで行うと2時間近くかかるので、じっくり頭を使うゲームがしたい人におすすめ。戦略を練りながら進めていくと、4ラウンド目くらいから大波乱が起こりはじめて、どんどん面白くなっていきます。
プレイして感じた魅力は、村を発展させていくにつれて、自分が権力者になったような気分を味わえること。頭を使う楽しさがあり、時間を忘れてゲームに没頭したくなる。
小さい子どもでも楽しめる! 場がにぎやかになる『GO SLOW!』
小さな子どもと楽しみたい方、複雑なゲームは苦手な方におすすめなのが、北欧の子どもたちのあいだでも人気があるリストニア発の『GO SLOW!』。プレーヤーがカタツムリになって前に進むシンプルなゲームだが、「最後にたどり着いた人が勝ち!」というスローな設定がユニークだ。
いけだ:いちばん後ろにいるカタツムリが強制的に前にいるカタツムリを押し進めるカードもあり、なかなか戦略どおりにいかないところもおもしろいポイント。1ゲームにそこまで時間が掛からないので、気晴らしに楽しめますよね。
マスを飛び越えるカードや、眠ってひと休みするカードなどもあり、最後のほうは不思議と必ず混戦状態に。子どもも大人も、盛り上がること間違いなし!
自分好みのボードゲームを見つけるには? 初心者におすすめの選び方
今回は4つの北欧にまつわるボードゲームを紹介してもらった。北欧の文化や歴史まで垣間見えて、それぞれに面白いポイントがいくつもあった。ただ、人によってはゲームごとに好き嫌いが分かれるかもしれない。数多くあるボードゲームのなかから、自分好みのゲームをセレクトするにはどうすれば良いのだろうか。
いけだ:好みのゲームの「メカニクス」を知ることから始めるのが良いかもしれません。メカニクスとは、いわばゲームのシステムや仕組みのジャンル分けのこと。
たとえば、最初に紹介した『エルフィンランド』のように、マップ上にコマを配置していき、エリアごとの影響力を競うのは「エリアマジョリティ」というジャンル。『ヌースフィヨルド』のように、労働者を配置して利益を得ながら発展させていく戦略的なゲームの種類は、「ワーカープレイスメント」といいます。このようにボードゲームにはさまざまなジャンルがあります。一度やったことのあるボードゲームで、面白いと感じた種類のものを掘り下げていくのはおすすめですね。
とはいえ、そもそもボードゲーム初心者は、最初にどんなゲームを選んだら良いかもわからないはず。そんな人に向けてのアドバイスを最後にうかがった。
いけだ:とりあえず、口コミサイトで気になるゲームをチェックしつつ、ボードゲームカフェで実際にやってみるのが良いと思います。さまざまなボードゲームを体験していくうちに、どんなタイプのメカニクスが好きかわかってくるので。
その際、友だちを連れて行っても良いですし、一人で行って初対面の人と一緒にやるのも楽しいですよ。ぼくもボードゲームカフェによく行くのですが、そこでできたボードゲーム仲間もいます。もしご一緒する機会があれば、北欧発のボードゲームをやりましょう(笑)。
- プロフィール
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- いけだてつや
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お笑い芸人。1982年11月20日生まれ、熊本出身。スクールJCA10期生。テレビ番組『アメトーーク!』やライブ『高校野球大好き!!ナイト』などで高校野球大好き芸人として出演のほか、ボードゲーム大好き芸人としてもイベントなど活動の場を広げている。