加賀美健ととんだ林蘭による創作企画。2人に学ぶ「ひらめき方」

加賀美健ととんだ林蘭による創作企画。2人に学ぶ「ひらめき方」

インタビュー・テキスト
松井友里
撮影:相澤有紀 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

かっぱやサザエさんーーつねに自分の中での流行を作り、ハマり続けている

―お二人のなかで、日常の中に面白みを見つけていくためのコツのようなものってあるのでしょうか?

加賀美:僕は、基本的に世の中に面白いと思うことがないの。キャンプとか釣りみたいな、趣味もないし。だから自分で面白さを見つけていくしかなくて、そうするとやっぱり、メルカリで「かっぱ」って調べてみたりしますよね(笑)。

もちろんそれだけがすべてじゃなく、アートを仕事にしている人は、たぶん趣味と仕事がイコールになっている部分があると思う。でも、自分の中での流行を常に作っている感じはありますね。

とんだ林:自分だけの流行という意味で言うと、1年ぐらい前からずっと昔の『サザエさん』を見続けてるんですよ。朝起きたら『サザエさん』を再生して、作業中もご飯中もずっと見て、全話見終わったら、また1話から繰り返すんです。

最初はそんなに面白いと思っていなかったけど、見続けるうちに自分なりの解釈が生まれてきたし、作品の中にツッコミ役がいないまま進んでいくから心の中で突っ込めるんですよね。そのうちだんだん「サザエさんたちは実在している……」ぐらいの気持ちになっちゃって。すごく大きなことじゃなくても、生活に欠かせない自分にとっての精神安定剤みたいなものが一つでもあると、毎日楽しいかもしれないですね。

―加賀美さんのメルカリにしても、とんだ林さんの『サザエさん』にしても、どこか自分なりの楽しみ方を見つけていることが共通していますよね。

加賀美:例えば、普通にディズニーランドに行くんじゃなくて、ゴルフの格好をして、ディズニーランドに行くぐらいの方が楽しめるかもしれないよね。

そこで「なんでゴルフの格好をしてディズニーランドに行くのが面白いんですか?」とか「そんなの持ってたら入れてもらえないですよ」って言われちゃうと、感覚的な話だから説明するのが難しい。何かをするときに理由や理屈がないと受け入れられない人は多いと思う。

アートもコンセプトが必要とされるものだから、僕も自分が展示をするときにはもちろんコンセプトを考えるんだけど、自分の中ではコンセプトを飛び越えて別の次元にいけた作品の方が面白いと思っていて。何か作品があったときに、一つの意味でしか受け取られないことって多いでしょ。でも、そういうのは面白くないなと、子どもの頃からずっと思っているんだよね。だからこの記事だって、「この二人が飲んでるのって、もしかして小便じゃないかな?」とか思う読者が出てきた方が面白いよね(笑)。そんなことばっかり毎日朝から考えています。

左から:とんだ林蘭、加賀美健

「私にもできそう」と思わせるアートの凄み。自分が面白いと思うものは、突き詰めて続けていくべき

―さきほどとんだ林さんが、誰にも頼まれずにものを作り続けることは習慣にしないと難しいという話をしていましたが、物事に自分だけの面白みや魅力を見出すのも、日々の思考の習慣からもたらされるのかもしれないですね。

とんだ林:一度そういう風に考え始める思考の癖がつくと、発想が広がると思います。

加賀美:この取材が終わって、みんな帰ったあといきなり僕が「NO WAR」なんてInstagramに投稿したりしないもんね。

とんだ林:それは深読みしちゃいます(笑)。

加賀美:まあそんなこと、当然つねに思ってることなんだけどね。

とんだ林:そういう社会的なメッセージを直接的に発信している人もすごいし偉いなと思っているんですけど、それと同時に、くだらなくて笑っちゃうようなことだってアップされていていいと思います。

加賀美:毎日のように変なニュースがあって、面白いことでも考えないとやっていられないよね。とんださんはSNSに悪口とか書かれたりする?

とんだ林:「何がいいかわからない」とか、書かれたことありますよ。自分のことじゃないですけど、加賀美さんがハンカチを作ったとき(H TOKYOと制作した「ハンカチ落としましたよ」)、「小学生でも作れるじゃん」みたいなことを書かれていたのを見て笑いました。

加賀美:そうそう。「無印でハンカチを買ってきて、マジックで書けばできるよ」とか言われてたね(笑)。エゴサーチして、そういうコメントをリツイートすると、ツイートを消されちゃったりして。

とんだ林:でも「私にもできそう」と思わせるって、すごいことだと思います。

加賀美:(ダウンタウンの)まっちゃんが昔、「『私にもできる』って言った時点で、二番手だからダメなんだ」ってインタビューで言ってたな。

―一番目になることは、もしかしたら自分が世間と完全にずれているかもしれない可能性を引き受けることですよね。それはものを作る人だけじゃなく、受け手として何かを面白いと思うこともそうかもしれません。

加賀美:恥をかくかもしれないしね。

とんだ林:自分がハマっていたり、好きだと思うことがあったら、続けてみるのはいいことだと思うんです。別に、人に自慢できるようなすごいことじゃなくてもいいし、必ずしもそのことを誰かに伝えたり発表しなくてもいいんだけど、自分が楽しいと思うことを突き詰めてみた先に見えてくるものがあるんじゃないかと思います。

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プロフィール

加賀美健(かがみ けん)

現代美術作家。1974年東京都生まれ。東京を拠点に制作活動を行う。国内外の数々の個展・グループ展に参加。ドローイング、スカルプチャー、パフォーマンスまで表現形態は幅広い。アパレルブランドとのコラボレーションも多数手掛ける他、自身の「STRANGE STORE(ストレンジストア)」を構え、店内では自身のコレクションや若手アーティストの展示なども行っている。

とんだ林蘭(とんだばやし らん)

1987年生まれ、東京を拠点に活動。コラージュ、イラスト、ぺインティング、立体、映像など、幅広い手法を用いて作品を制作する。猟奇的でいて可愛らしく、刺激的な表現を得意とし、名付け親である池田貴史(レキシ)をはじめ、幅広い世代の様々な分野から支持を得ている。

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