ゆーみん&きうてぃ、ユーロヴィンテージと北欧ミリタリーの魅力

ゆーみん&きうてぃ、ユーロヴィンテージと北欧ミリタリーの魅力

インタビュー・テキスト・編集
吉田真也(CINRA)
撮影:佐藤翔

北欧のミリタリーはさらっと着るだけで、様になるアイテムが多い

「無骨な男らしさ」を感じるアメカジとは対象的に、柔らかく中性的な雰囲気が漂うユーロヴィンテージ。たしかに、いまの時代にもマッチしているのかもしれない。

とはいえ、「ミリタリー」というジャンルにおいては、男らしくてワイルドなイメージもある。事実、ユーロミリタリーもアメリカ軍のミリタリー同様に、無骨さが魅力的なアイテムは多い。ただし、北欧の各国軍のアイテムに関しては、「柔らかい雰囲気を感じる」と二人は語る。

きうてぃ:他国の軍服と比べても、北欧の各国軍はデザインの細部にこだわりを感じます。曲線的なディテールを採用しているパターンが多く、無骨さを感じさせない。ぼくがいま着ているスウェーデン軍のホスピタルコートも、おそらく戦時中の病院内などで着られていた院内着で、ミリタリーに分類されます。一見、ミリタリーっぽくないですよね。

当時の病人や怪我人の体に負荷を与えないよう、体に優しいデザインを意識してつくられたホスピタルコート(きうてぃさん私物)
当時の病人や怪我人の体に負荷を与えないよう、体に優しいデザインを意識してつくられたホスピタルコート(きうてぃさん私物)

きうてぃ:メタルボタンが使われているので、おそらく40年代のものですが、病院の院内着ですら、現代に私服として着てもかっこいい。北欧のミリタリーはさらっと着るだけで、様になるアイテムが多いと思います。

ゆーみん:北欧って、もともと建築やインテリアのデザイン性が優れている地域じゃないですか。憶測ですが、当時のミリタリーウェアを縫製していたデザイナーたちも「デザインには、こだわるべき」という考えがあったのかなと。そういう土壌が、ミリタリーの服づくりにも表れている気がします。

また、スウェーデン軍は第一次世界大戦のときに「中立」を宣言していたんですよね。そういった意味でも、柔和な価値観がスウェーデン軍の温かみのあるデザイン性につながっているのかも。

語り継がれる名作アウター、M-90。一枚袖でつくられた、デザインのこだわり

軍服から各国の戦争に対する価値観が垣間見えたり、ものづくりへの情熱を考察できたりするのが、ミリタリーの面白さ。なかでもスウェーデン軍のものづくりへのこだわりが、もっとも顕著に表れた名作がある。1990年につくられたM-90のモッズコートだ。

このモッズコートの元ネタは、おそらくアメリカ軍のM-65。1965年につくられ、ベトナム戦争などで重宝されていたモデルである。デザイン性や機能性の高さから、その後、モッズコートの参考元として世界各国に摸倣された。

そのM-65の誕生から、25年の時を経てつくられたのがスウェーデン軍のM-90。2020年になったいまも、ユーロヴィンテージ・ミリタリー好きのあいだで語り継がれる名品だが、その理由は他国にはまねできない裁縫と着心地にある。

M-90の後期モデル。ダブルジップなので、着こなしの選択肢も広がる(ゆーみんさん私物)
M-90の後期モデル。ダブルジップなので、着こなしの選択肢も広がる(ゆーみんさん私物)

ゆーみん:ぼくが思うM-90の最大の特徴は、一枚袖でつくられていること。普通のコートは、袖生地と身頃の生地の縫い目が、肩から脇にかけて入っていますよね。「セットインスリーブ」というのですが、それがない。加えて、背中と袖のつなぎ目がどこにも見当たらないんです。

つまり、ほとんど1枚の生地だけでコートの表地をつくっていることになります。生地も余るし、かなりコスパが悪いはず。それでもこのつくり方を採用したのは、やっぱりデザインにこだわった結果でしょうね。

袖と後身頃の切り替え位置が見当たらないM-90の背中
袖と後身頃の切り替え位置が見当たらないM-90の背中

きうてぃ:一枚袖によって丸みが生まれるから、モッズコートなのに「いかつくない」よね。

ゆーみん:そうそう。しかも、見た目だけじゃなくて、機能面もすごく良くて。北欧の冬を超すためにつくられたコートなので、めちゃくちゃ暖かい。そのうえ、軽くて動きやすいんですよ。

真冬でも過ごせるモッズコートって、重たくて肩が凝るタイプも多いですが、このM-90はそういうストレスがまったくない。デザイン性からも着心地からも、スウェーデン軍ならではの「優しさ」を感じます。

スウェーデン軍「M-90」の魅力を詳しく解説した動画(ゆーみん&きうてぃ official YouTube)

Page 2
前へ 次へ

プロフィール

ゆーみん&きうてぃ

ヴィンテージ古着のオンラインショップ「from_antique」を経営している「ゆーみん」と、高円寺にあるユーロヴィンテージ専門店「militaria」「encore」のショップスタッフ「きうてぃ」の二人組で活動する、ファッションYouTuber。高校時代から友人だった二人は、大学卒業後に入社したそれぞれの会社を退職し、現在の古着業へ。2018年8月にYouTubeチャンネルを開設し、主にヴィンテージ古着の魅力を定期的に発信するようになる。2020年10月現在、チャンネル登録者数は3万3000人を突破。ファッション雑誌やウェブメディアで取り上げられるなど、注目を集めている。

Category カテゴリー

Latest Articles 最新の記事

What's "Fika" ? フィーカとは

「Fika」はCINRA.NETとVOLVOが送る、北欧カルチャーマガジンです。北欧デザインの思想の基盤を「クラフトマンシップ×最先端技術」と捉え、そこに学びながら、これからのカルチャーやライフスタイルにまつわるコンテンツをお届けします。