映画ポスターを作るモチベーション。大島依提亜が開く可能性

映画ポスターを作るモチベーション。大島依提亜が開く可能性

インタビュー・テキスト
矢部紗耶香
撮影:垂水佳菜 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)
2020/08/04
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『アメリカン・アニマルズ』『ミッドサマー』『パターソン』など、エッジーで、洗練された映画ポスターが話題となって映画作品のヒットにもつながっている。それらをデザインしたのが、ご自身も大の映画ファンであるという大島依提亜。

北欧の「クラフトマンシップ×最先端技術」をテーマにした『Fika』では、デザイナー大島依提亜の「クラフトマンシップ」、映画ポスターデザインに対する「こだわり」の姿勢に触れたい。すでに映画作品が存在し、さまざまな制約も多いであろう映画ポスターという分野で、彼はどう自身のクラフトマンシップを注ぎ込んでいるのだろうか。

大島依提亜(おおしま いであ)<br>栃木県生まれ。映画のグラフィックを中心に、展覧会や書籍のデザインを手がける。最近の仕事に、映画『万引き家族』『パターソン』『ミッドサマー』『ブックスマート 』『マティアス&マキシム』展覧会「谷川俊太郎展」「ムーミン展」、書籍「小箱/小川洋子」など。
大島依提亜(おおしま いであ)
栃木県生まれ。映画のグラフィックを中心に、展覧会や書籍のデザインを手がける。最近の仕事に、映画『万引き家族』『パターソン』『ミッドサマー』『ブックスマート 』『マティアス&マキシム』展覧会「谷川俊太郎展」「ムーミン展」、書籍「小箱/小川洋子」など。

必ずしも「かっこいい」が正解ではない、映画ポスターデザイン

―数々の映画ポスターのデザインを手掛けている大島さんですが、いつもどんなところをポイントにデザインを進めているのでしょうか?

大島:案件によってまちまちです。たとえば『アメリカン・アニマルズ』(バート・レイトン監督 / 2018年)のように海外のビジュアルがすごく秀逸だと、日本版にローカライズする、翻訳していくという感じですね。日本にフィットするような形に少しだけ直すという場合もありますし、大きく変えてしまうというケースもあります。

『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』(スチュアート・マードック監督 / 2014年)は、海外版のビジュアルからほぼほぼ変えていません。どのような日本語の書体がフィットするかということを考えたくらいなので、これが自分のデザイン、意匠性とはちょっといえないところはあります。でも、もうこれ以上ないというビジュアルだと思っているので。

『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』ポスター

今回後ろに貼ってある作品のポスター(『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』、『ミッドサマー』、『デッド・ドント・ダイ』)は、日本語も入っていないので少し異質ですが、日本版のビジュアルをつくっていくときは、必ずしもかっこいいものをつくればいいということではないと思っているんです。映画を売りたい層(見せたい層)のことも考えますし、宣伝の売り方やビジョンがあるケースもあるので。必ずしも「こういう風にしたほうがいいのではないか」という僕の提案通りにはいかないケースも、もちろんあります。

取材日、大島が持参したポスター。左から、『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』(2枚)、『ミッドサマー』(2枚)、『デッド・ドント・ダイ』
取材日、大島が持参したポスター。左から、『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』(2枚)、『ミッドサマー』(2枚)、『デッド・ドント・ダイ』

―今年公開された『ミッドサマー』(アリ・アスター監督 / 2019年)のヒットや盛り上がりは、ポスターやビジュアル展開の影響もとても大きかったと思います。

大島:「騙された!」とはいわれましたね(笑)。『ミッドサマー』の場合は、制作会社がA24ということも大きかったです。A24の作品は間口が広く、どの映画もルックがすごく洒落ていて、クリエイティブにすごく力を入れているので、その雰囲気は継承していくべきだと考えていました。

その前に担当した『アメリカン・アニマルズ』のときにもビジュアル重視で進めて成功したので、『ミッドサマー』でも最初から、ヒグチユウコさん(画家、絵本作家)とコラボレーションポスターをつくるという計画は当初からありました。ただし、もちろんコアなビジュアルで宣伝をするとレンジがすごく狭くなってしまう可能性もありました。だからメインビジュアルも必要なんです。

ヒグチユウコとコラボレーションした、『ミッドサマー』アートポスター

『ミッドサマー』アートポスター

―洋画の場合、海外版のビジュアルを参考にされることも多いのでしょうか?

大島:いいデザインはどんどん取り入れています。『アメリカン・アニマルズ』は、海外版の予告編を観ているときから、この映画はポスターのビジュアル込みで面白そうだと感じていたので、はじめから海外版のビジュアルを使って進めていくことを考えていました。

―海外版のポスターがよすぎると、逆に変更しにくい場合もありますか?

大島:映画のポスターはあくまでの宣伝の一部で、映画の宣伝にベストな状態にできるかが大切なので、海外版のポスターがいい場合はほとんど変えないです。デザイナーではあるけれど、自分のデザインが最優先事項ではないので。

大島依提亜
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書籍情報

PATU MOOK 創刊号「大島依提亜と映画パンフ」

発売: 2020年7月11日(土)
価格:1,500円(税込)

プロフィール

大島依提亜(おおしま いであ)

栃木県生まれ。映画のグラフィックを中心に、展覧会や書籍のデザインを手がける。最近の仕事に、映画『万引き家族』『パターソン』『ミッドサマー』『ブックスマート 』『マティアス&マキシム』展覧会「谷川俊太郎展」「ムーミン展」、書籍「小箱/小川洋子」など。

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