子どもの質問、どう答える?天文学者・本間希樹×てぃ先生が語る

子どもの質問、どう答える?天文学者・本間希樹×てぃ先生が語る

インタビュー・テキスト・編集
飯嶋藍子
撮影:前田立

趣味に熱中できるような、それでもちゃんと生きていけるような社会構造に変わったらいい。(本間)

―子どもの無垢な好奇心、わくわくする疑問って、いつの間にか消えてしまっている気がして。それって大人になるにつれて鼻を折られる経験が積み重なっていくからなんでしょうか?

てぃ先生:大人がわくわくを失ってしまいがちなのって、熱中できる時間が少ないからだと思うんです。みんな何かしらにはきっと興味があるはずなんですけど、たとえばこのアーティストが好きって思っていても、その人の曲を聴く時間がなかったら、好きもなにもないじゃないですか。

本間:僕も大人って歳を取るにつれて好奇心を失ってしまうと考えていたんですけど、てぃ先生のお話から考えると、社会構造の問題なのかなと。1日中働いて時間がないことが原因だとすれば、趣味に熱中できるような、それでもちゃんと生きていけるような社会構造に変わったらいいなと思います。わくわくできたほうが幸せな人生なんじゃないかなと思います。

本間の研究の拠点である国立天文台水沢VLBI観測所のオフィスにて / photo by 荒舩良孝
本間の研究の拠点である国立天文台水沢VLBI観測所のオフィスにて / photo by 荒舩良孝

てぃ先生:そうですよね。とは言っても、僕も保育士になりたての時はもう日々を生きていくことだけに必死で、とにかく1日が無事に早く終わらないかなって思ってました(笑)。保育を楽しもうとか1ミリも余裕がなかったです。

保育園で勤務中のてぃ先生
保育園で勤務中のてぃ先生

―いつから楽しもうという意識に変わっていったんですか?

てぃ先生:働き始めて数年経ってからですよ。それまでは子どもたちが早く静かになってくれないかな、早くごはん食べてくれないかなって毎日思っていたんですけど、やっぱり考える時間ができたらこそ、「こうやったら子どもってもっとごはんをおいしく食べられるんじゃないか」とか、考えられるようになりました。

まず大切なのは、自分が一生かけてやってもいいと思えるものを見つけること。(本間)

―てぃ先生もそういう時期があったんですね。でも、「“忙しい”を言い訳にするな」みたいなことも、社会人になるとよく言われてしまいます。

てぃ先生:いかに自分の時間をうまくつくり出すかですよね。仕事でさえ、時間の余裕がなかったらもうとにかく締め切りを守るとか、「今までどおりでいいや」「この形式でやればいいや」ってなっちゃうけど、自分なりに時間があると、もうちょっとおもしろくできないかなって考えられますよね。

左から:本間希樹、てぃ先生

本間:僕も所長業があるので、予算のことを考えたり、人事評価をしたりしなきゃいけない。いわゆるあまりやりたくはないけどやらなければいけない「業務」に終始してしまうと、クリエイティブな研究はまったくできないです。

研究もそうですが、同じ仕事でも人からやらされるのではなくて、自分の意思で「もう少しうまくやるにはどうしたらいいだろう?」「もう少しおもしろくするにはどうしたらいいだろう?」って、やっぱり自分なりのプラスアルファを考えると、そこに新たな付加価値が生まれますよね。

―いわゆる「好きなことをやっている人」って、ある程度自分の時間を確保する努力をした人なんですね。

てぃ先生:そうだと思います。だからこのリモートワークの期間なんかチャンスだと思います。出勤、退勤の時間もないですしね。ここから先はみんな「時間がない」っていうのはただの言い訳になるかもしれないですね。

本間:僕も宇宙が好きで仕事をやっていますし、お金のために好きでないことをするのに比べれば好きなことを仕事にできればそれは幸せだと思います。ただ、そのためにまず大切なのは、自分が一生かけてやってもいいと思えるものを見つけること。それが子どもの頃の体験に基づいているんじゃないかと。だから僕もラジオで子どもと接する時に、そういうきっかけになってくれたらいいなと思っています。

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番組情報

NHKラジオ第一放送『子ども科学電話相談』

毎週日曜10:05~

プロフィール

本間希樹(ほんま まれき)

国立天文台教授・水沢VLBI観測所所長。1971年、テキサス州生まれ、横浜育ち。東京大学大学院理学系研究科天文学専攻博士課程修了。超高分解能電波観測による銀河系天文学、特に銀河系の構造研究と、巨大ブラックホールの研究を行っている。巨大ブラックホールに関するEHTプロジェクトに日本チームの責任者として参加。2019年4月には同プロジェクトチームによってブラックホールの撮影に成功した。

てぃ先生(てぃせんせい)

保育士。子どもの日常をつぶやいたTwitterが人気。著書に『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』(KKベストセラーズ)、Twitter原作のマンガ『てぃ先生』(KADOKAWA/メディアファクトリー)、『きょう、ほいくえんでね…!!』(マガジンハウス)など。
現在は保育士の専門性を生かし、子育ての楽しさや子どもへの向き合い方などをメディアなどで発信。全国での講演活動も年間50本以上。他園で保育内容へのアドバイスを行う「顧問保育士」の創設と就任など、保育士の活躍分野を広げる取り組みにも積極的に参加している。

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