LicaxxxとTEPPEIが語る、性別の枠組みから自由になるファッション

LicaxxxとTEPPEIが語る、性別の枠組みから自由になるファッション

インタビュー・テキスト
松井友里
撮影:玉村敬太 編集:吉田真也(CINRA)
2020/05/12
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女性服でも「かっこ良さそう」と思えば、男性アーティストの衣装に取り入れます(TEPPEI)

―お二人とも性別を問わず、あくまでも自分の好みにあったファッションアイテムを取り入れているんですね。

Licaxxx:そうですね。意識してメンズライクな服を取り入れようとしているのではなく、着たいと思うものを着ています。私が服選びで大前提にしているのは、デザイナーが提唱する概念に共感できるかどうか。似たようなアイテムがたくさんあるなかでも、買いたいと思ったり、愛情が芽生えたりするのは、つくり手の思想や情熱が感じられるものなので。

私の場合、いち消費者目線だけど、TEPPEIさんはスタイリストとして人の服も日頃から選んでいるから、また少し違う目線になりそうですね。

TEPPEI:そうだね。スタイリストという職業も、自身の服選びに大きく関係していると思います。自分は男性アーティストを担当させていただくことが多いのですが、いちばんの目的は作品やアーティストが放つ世界観をスタイリングで引き立てること。服を組み合わせながら、つくり上げたいイメージに近づけていくので、普段から市場にあるすべての服をフラットに見ているんです。

2020年4月にリリースしたOKAMOTO’S『10'S BEST』のジャケットでもTEPPEIがスタイリングを担当。ジャケット写真は、10年前のデビューアルバムをセルフオマージュした

TEPPEI:だから、女性服として売られていても「あの人が着たらかっこ良さそう」と思えば、男性の衣装にも取り入れますよ。あくまで、着る人の個性やキャラクターを重視してスタイリングしています。プライベートで自分の服を選ぶ際も、大前提としてその感覚がありますね。

職業の話でいうと、DJの業界ってすごく男性文化ですよね。女性でDJやっている人のことを「フィメールDJ」と呼んだりすることがあったけど、かっちゃん(Licaxxx)はあまり呼ばれてない気がする。

Licaxxx:いまはもう言われなくなりましたね。

―言われていた時期もありました?

Licaxxx:はい。活動し始めた頃は「フィメールDJ」「女子DJ」とか言われることがありましたね。性別に関係ない部分で勝負したいと思っていたから、ずっと嫌でしたけど。女性のDJの数が少ないから、なかなか男性と同じ土俵で見てもらえないもどかしさはありました。ですが、時代の流れも変わり、遊び方から働き方まで男女の違いがなくなった。それもあって、最近は「女子」とか関係なくDJとして呼んでもらえるようになったんだと思います。

Licaxxx

TEPPEI:時代の流れで男女の違いが薄れつつあるとはいえ、自分がその性別だからこそ、生まれる考え方や特性もあるよね。仕事をするうえで「他者にはできなくて自分にできることってなんだろう」って考えたときに、性別もその要素のひとつになり得る。そういう意味で、DJとして「女性であること」を意識したりする? 

Licaxxx:意識しないですね。私がDJとしていろんなイベントに呼んでもらえる理由がきっと何かあるはずなんですけど、「女性だから」というのは滅多にないはず。「私だからできることがある」と思っています。

ただ、私がイベントに出ることによってクラブにくる女の子が増えたり、知らなかった音楽に触れてもらえたりするのは素直に嬉しいです。意識はせずとも、「女性」であることによって少しでもシーンに貢献できるのは良いこと。DJ以外の活動をしているのも、そうした裾野を広げられる部分が絶対にあると思っているからです。

物心ついたときから、人と違うことを良しとするタイプなんです(Licaxxx)

―今はお二人ともそれぞれ自分のスタイルがあってお洋服を選ばれていると思いますが、それまでの変遷もお聞きしてみたいです。

Licaxxx:中高生の頃は赤文字系の黄金時代で、女子はほぼ全員パンプスを履いていたんですよ。それで私も最初はパンプスを買っていました。でも、途中からしっくりこなくなり、中学2年くらいからスニーカーを履くようになって、必然的にフリフリのワンピとかは着なくなりました。

私はファッションに限らずなんですけど、物心ついたときから人と違うことを良しとするタイプなんです。だから、みんなが履いているパンプスよりも、スニーカーのほうがより魅力的に思えたのかなと。

左から:TEPPEI、Licaxxx

TEPPEI:自分もファッションを意識しはじめたのは、ちょうど中2くらい。服に興味が出てきた最初の頃は、「みんなからかっこよく思われたい」みたいな気持ちもありました。でも、ファッションを突き詰めてモードを好きになると、異性の声とかも徐々に気にならなくなって。次第に「誰も着ていない服ほどかっこ良い」と思うようになっていたんです。

滋賀県の大津市の出身なんですけど、気づいたときには「やばい、この街にこんな格好の人ほかにいない」っていう服装をしていました(笑)。でも、「これだ!」と思えるものってなかなか見つからないから、突き詰めたくなるじゃないですか。自分の場合は、それがモードファッションだった。周りに何を言われようが、服が自分の精神を守ってくれるような感覚でしたね。

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プロフィール

Licaxxx(りかっくす)

東京を拠点に活動するDJ、ビートメイカー、編集者、ラジオパーソナリティ。2010年にDJをスタート。マシーンテクノ / ハウスを基調にしながら、ユースカルチャーの影響を感じさせるテンションを操る。『FUJI ROCK FESTIVAL』など日本国内の大型音楽フェスや、『CIRCOLOCO』などヨーロッパを代表するイベントにも多数出演。日本国内ではPeggy Gou、Randomer、Mall Grab、DJ HAUSらの来日をサポートし、共演している。さらに、NTS RadioやRince Franceなどのローカルなラジオにミックスを提供するなど幅広い活動を行っている。ビデオストリームラジオ「Tokyo Community Radio」の主宰。

TEPPEI(てっぺい)

スタイリスト。1983年生まれ、滋賀県大津市出身。専門学校を卒業後、原宿のヴィンテージショップ「Dog」のプレスに就任するとともに『FRUiTS』、『TUNE』といったスナップ誌の常連として掲載され、国内外でカルト的な存在として注目を集める。2006年公開の映画『間宮兄弟』では、演技未経験にも関わらず俳優デビューを飾る。その後スタイリストとして本格的な活動を開始。RIP SLYME、星野源、OKAMOTO’S、SIRUPなど多くのミュージシャンのスタイリングのほか、数多くのファッションビジュアル、ショーのディレクションなどに携わっている。

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