Ryu Matsuyamaが向き合う、ポップ / オルタナティブ、国籍の境界線

Ryu Matsuyamaが向き合う、ポップ / オルタナティブ、国籍の境界線

インタビュー・テキスト
三宅正一
編集:川浦慧、矢島大地(CINRA.NET編集部)
2020/04/30
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日本の土壌で生まれた音楽を否定せず、いかに洋楽をブレンドさせていけるか。

―サウンドのテクスチャー的にもいろんなレイヤーがあるんだけど、その実、シンプルな聴き応えがある。

Ryu:まさにその通りで。僕にとって一番大きいのはメンバー3人の境界線がいい意味でハッキリしたことなんです。交わるべきところは交わるし、交わらないところは交わらないということがわかった。バンドが6年目にしていい感じの関係性がちょっと見えたかなと思います。その境目もタイトルに表したかったんです。

―以前はもうちょっと、3人の差異を無理やり混ぜようとしていたところがあった?

Ryu:おそらくありましたね。3人でなんとかがんばって混ぜてみよう、みたいな。でも、今作は「僕はこうです」「僕はこう弾きます」という主張をピリピリすることなく浮き彫りにすることができた。それを導いてくれたのもmabanuaさんで。それぞれに違いがあるのはいいことなんだなって思えた。

―そもそも音楽的なルーツもバラバラだし。

Ryu:僕にとってはそれこそ国が違うくらいの感覚ですから。

―ベーシストはJ-POPも好きで、ドラマーはバークリー出身でジャズやブラックミュージックに傾倒していて、RyuくんはSigur RósやBon Iverのように、荘厳で神聖な音楽性やボーカルをまとっている特に北欧出身のアーティストに惹かれてきた。

Ryu:そう。だから僕がワンマンなバンドをやっていたら、Bon IverとかSigur Rósのヨンシーのソロに近いようなバンドという「北欧的」な側面がフィーチャーされていったと思うんですけど、3人が暴れまくっているのがRyu Matsuyamaなので。すごい薄い綱の上に絶妙なバランスで3人が立っていると思うんですよね。

Ryu Matsuyama

―メンバーの違いを認めてるというのはすごく合点がいくことで、6曲目の“Sane Pure Eyes (Alternative Mix)”はLAビートっぽいニュアンスがあるし、8曲目の“Heartbeat”はJ-POP然としていて。

Ryu Matsuyama“Sane Pure Eyes (Alternative Mix)”を聴く(Apple Musicはこちら

Ryu:そう、“Heartbeat”とか“No. One”とか、“Go Through, Grow Through”“愛して、愛され feat. 塩塚モエカ(羊文学)”あたりは、自分自身でけっこうJ-POPに影響されてるんだなと思いましたね。歌い方もだいぶ変わったし。

―ファルセットのイメージが強いけど、4曲目の“愛して、愛され feat. 塩塚モエカ(羊文学)”なんかは特にチェストボイスが印象的で。

Ryu:今作は意識的にファルセットをあまり出さないようにしました。チェストがこれまでに比べてめちゃくちゃ多いですね。それによってけっこう喉をつぶしたアルバムでもあります(笑)。J-POPに影響されていったのは、やっぱり近い先輩たちの存在が大きくて。

あとはBon Iverのライブを観たときに「あ、これは自分には絶対に無理だ」と思ったんですよ。空気とか、生きてるうえで吸ってるものが全然違うなって。住んでる土地の気候も電圧も違うし。

―ポジティブにその違いを受け止められた。

Ryu:そうです。僕はもう日本に住んでいるし、これからも住み続けようと思っているからこそ、日本の土壌で生まれた音楽を否定せず、いかにそこに洋楽をブレンドさせていけるかということと向き合おうと思って。洋楽に無理やりJ-POPをブレンドさせるんじゃなくて、ベースをJ-POPに置いてもいいんじゃないかと思うようになりました。

今の自分たちが鳴らしている音楽そのものがポップミュージックだと思っている。作品でいつもその答えを出しているんだと思います。

―そういう面でのロールモデルっていますか?

Ryu:僕はずっと思ってますけど、やっぱりBase Ball Bearですね。新しいアルバム(『C3』)もすげぇなあと思いましたし。ベボベももう、J-POPを軸にした独自のすごいバンドのレベルに達してると思うんです。メロディラインはすごくJ-POPなんだけど、サウンドにどんどん新しい要素を取り入れようとする感覚が絶妙で。影響を受けてますね。

―編成は違えど同じ3ピースバンドだしね。

Ryu:そうです。先輩ですけど、同じ3ピースバンドとして勝負を仕掛けないといけないなと思うし。

―そのうえであらためて、Sigur Rósやヨンシーのソロ、Bon Iverなどに惹かれる要因はどんなところにあると思いますか?

Ryu:それも育ちにあると思っていて。僕は無宗教ではあるんですけど、イタリアはキリスト教徒が多いので、小さいころに教会に行く習慣があったんです。教会で聴くミサのシンフォニックなメロディラインが美しいなって幼少期のころから思っていて。Bon Iverはシンフォニックなフォークのあり方を更新したり崩したりしていて、その姿勢が大好きなんですよね。ジェイムス・ブレイクにも同じようなことを感じますけど。

―クワイア寄りの音楽を原体験として吸収していたのが大きいと。

Ryu:そうだと思います。無意識レベルで吸収していたと思いますね。で、僕が音楽を能動的に捉えた最初の衝撃がRadioheadの『Kid A』の最後に入ってる“Motion Picture Soundtrack”だったんです。あの曲も結局、オルガンと声によるシンフォニックな音楽しかないと思っていて。

Radiohead“Motion Picture Soundtrack”を聴く(Apple Musicはこちら

―たしかに。

Ryu:聴いた瞬間に感動しちゃって「こういう音楽を作りたい!」って思ったんです。

―『Kid A』って当時の文脈としては先鋭的なオルタナティブロックだったわけじゃないですか。

Ryu:そうなんですよ。それでロックを聴き始めるんですけど、やっぱりRadioheadは「他とは違うな。これロックなんかな?」と思いながらカッコいいと思ってました。とはいえ、OasisもBlurも好きだったのでメロディックなUKロックという共通項もあったとは思います。

―傾向としては儚くて危うい、今にも消え入りそうな声質のボーカリストに惹かれるんでしょうね。

Ryu:好きですね。ジェイムス・ヴィンセント・マクモローもそうだし、アウスゲイルもそう。危うい感覚を美しく歌ってくれるボーカリストが好きだし、それが僕の中でのロックなんですよね。

―それでもRyuくんは、Ryu Matsuyamaは、ポップミュージックであるという指針を持ち続けていると思います。今、あらためてRyu Matsuyamaが創造するポップミュージックとはどのようなものだと思いますか?

Ryu:つねに、今の自分たちが鳴らしている音楽そのものがポップミュージックであると思っているので。作品でいつもその答えを出しているんだと思いますね。

もう細かいジャンルは関係なくなってきてます。僕ら3人の音楽が究極のポップミュージックでありたいと思っているので、3人の中で誰一人も欠けずにそれを追求していきたいなと思います。この3人でできる音楽をやり続けるということが今の答えですね。

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リリース情報

Ryu Matsuyama『Borderland』
Ryu Matsuyama
『Borderland』(CD)

2020年4月29日(水・祝)発売
価格:3,000円(税込)
VPCC-86309

1. Step over
2. Boy
3. Go Through, Grow Through
4. 愛して、愛され feat. 塩塚モエカ(羊文学)
5. Blackout feat. mabanua
6. Sane Pure Eyes (Alternative Mix)
7. No. One
8. Heartbeat
9. Friend

プロフィール

Ryu Matsuyama
Ryu Matsuyama(りゅう まつやま)

ピアノスリーピースバンド。イタリア生まれイタリア育ちの Ryu(Pf,Vo)が2012年に「Ryu Matsuyama」としてバンド活動をスタート。2014年、結成当初からのメンバーであるTsuru(Ba)にJackson(Dr)を加え現メンバーとなる。

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