Ryu Matsuyamaが向き合う、ポップ / オルタナティブ、国籍の境界線

Ryu Matsuyamaが向き合う、ポップ / オルタナティブ、国籍の境界線

インタビュー・テキスト
三宅正一
編集:川浦慧、矢島大地(CINRA.NET編集部)
2020/04/30
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完成した瞬間に、これは絶対に親父にジャケットを描いてもらいたいと思いました。

―お父さんの絵には一貫したテーマがあったりするんですか?

Ryu:親父の絵はいわゆる抽象画の系譜に連なるものだと思うですけど、彼は風景を描いてるつもりはなくて、音を描いてるらしいんですよ。

―あ、そこでもつながるんだ。

Ryu:親父は特に音楽に精通しているわけではないんですけど、なぜかテーマとしてずっと音と向き合ってるみたいで。作品名はどれも「“シン”音」なんですね。「シン」には「心」だったり「森」だったりが当てはめられていて。

―お父さんが描いた絵をこのアルバムのジャットにするのも感慨深いでしょう。

Ryu Matsuyama『Borderland』ジャケット
Ryu Matsuyama『Borderland』ジャケット(Amazonで見る

Ryu:ですね。親父も喜んでくれてます。奇しくもこの(世界中がコロナ禍に見舞われている)タイミングになりましたけど、いつかは、とずっと思っていて。照れくさいけどうれしいです。

『Between Night and Day』(2018年5月リリース)というメジャーデビュー盤が自分にとっては理想に近い作品だったんですね。今作の制作中にあのとき覚えていたワクワク感にすごく近い感触があったんです。初めて外部プロデューサーを招いてるし、いろんな面で不安もあったけど、これは絶対にいいアルバムができるという手応えがあって。

完成した瞬間に、これは絶対に親父にジャケットを描いてもらいたいと思いました。親父はもう70歳近いんですけど、そろそろお願いしないと後悔するだろうなと思ったし。

過去に書いた曲を振り返れたのは大きい。先ばかり見ていたけど、足元を見たらすごくいい曲がいっぱいあって。

―今作はmabanua氏をプロデューサーに迎えたことで「Ryu Matsuyamaのポップミュージックとはなんぞや?」という、これまでも繰り返してきた問いに客観的な視点を入れながら確認できたんじゃないかと思うんですね。音楽的にもそういう奥行きと広がりを持っているなと。

Ryu:それはかなりありますね。もちろん僕らのアルバムですけど、mabanuaさんのアルバムでもあるかなと思うくらいプロデューサーの力は大きかったです。しかも今回選曲するうえで過去曲も含めた40曲を先にmabanuaさんに渡して、その中からチョイスしてもらったんです。

―それでかなり前に作った曲も入ってると。

Ryu:そうなんです。一応、僕ら的な好みに則って「○」、「△」、「×」と印をつけてmabanuaさんに送ったんですけど、けっこう僕らが「×」をつけた曲をmabanuaさんは採用してくれて(笑)。

―面白い(笑)。

Ryu:それは不安でもありましたけど、客観的にこれをなぜmabanuaさんはいい曲だと思ってくれているのかという他者の視点を確認することができて。結局、僕らに凝り固まっていた感覚がかなりあったんだなと思いました。いい曲をいい曲だと思えなくなってしまっている状態にあった。まだ何も確立してないのに既存のRyu Matsuyamaっぽさを求めすぎちゃって、自分たちの目の前にある本来のポップさを見失っていたような気がします。

Ryu Matsuyama
Ryu Matsuyama

―自分が書いたいろんな時期の曲を編めたことは、お父さんにジャケットを描いてもらったことにも『Borderland』というタイトルにもつながっているのかなと思います。

Ryu:過去に書いた曲と向き合って振り返れたのは本当に大きいです。先ばかり見ていましたけど、足元を見たらすごくいい曲がいっぱいあって。それをmabanuaさんが気づかせてくれた。タイトルに関しては誰も気づいてくれないんですけど(笑)、メジャーデビュー以降は「Bとand」の法則できていて。『Between Night and Day』と、配信限定EPの『back & forth』(2019年9月リリース)もそう。

―なるほど。

Ryu:で、今作は一つの文字に「Bとand」が入ってるという仕掛けができて。それで自分の首を絞めてるような気もするんですけど(笑)、前にGARAGEの先輩のパスピエが作品タイトルを回文で作っていたことに対する憧れもあったりして。「Bとand」の法則の中に『Borderland』=「国境」という文字がバンッ! と出てきたときに「これしかない!」と思いました。

―いろいろ深堀りできるしね。日本とイタリアだったり、ポップミュージックとオルタナティブ、あるいはアートであったり。

Ryu:はい、まさに。

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リリース情報

Ryu Matsuyama『Borderland』
Ryu Matsuyama
『Borderland』(CD)

2020年4月29日(水・祝)発売
価格:3,000円(税込)
VPCC-86309

1. Step over
2. Boy
3. Go Through, Grow Through
4. 愛して、愛され feat. 塩塚モエカ(羊文学)
5. Blackout feat. mabanua
6. Sane Pure Eyes (Alternative Mix)
7. No. One
8. Heartbeat
9. Friend

プロフィール

Ryu Matsuyama
Ryu Matsuyama(りゅう まつやま)

ピアノスリーピースバンド。イタリア生まれイタリア育ちの Ryu(Pf,Vo)が2012年に「Ryu Matsuyama」としてバンド活動をスタート。2014年、結成当初からのメンバーであるTsuru(Ba)にJackson(Dr)を加え現メンバーとなる。

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