Ryu Matsuyamaが向き合う、ポップ / オルタナティブ、国籍の境界線

Ryu Matsuyamaが向き合う、ポップ / オルタナティブ、国籍の境界線

インタビュー・テキスト
三宅正一
編集:川浦慧、矢島大地(CINRA.NET編集部)
2020/04/30
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日本人の両親のもとに生まれイタリアで育ち、ハタチのときに東京へ一人でやってきたRyu。ソングライターであり鍵盤奏者である彼の名前がそのまま冠された3ピースバンド、Ryu Matsuyamaが2ndフルアルバム『Borderland』を完成させた。ルーツの異なるメンバーがそれぞれの美学をぶつけ合いながら真新しいポップミュージックとしての調和を目指してきたこのバンドの音楽は、ポストロックからいわゆるインディR&Bの系譜に連なるアンビエント、そしてクワイアなどの要素を重層的に取り入れながら静謐かつスケールの大きなサウンドデザインが施されている。

今作にはバンドにとって初の外部プロデューサーとなるmabanuaを、またやはり初となる客演のボーカリストとして羊文学の塩塚モエカを迎えている。「Ryu Matsuyamaのポップミュージックとは?」という、これまでも繰り返してきた問いに客観的な視点を導入しながら、3人のアンサンブルの精度をさらに高めると同時に、かつてないほど自由な様相で音楽的な幅を広げている。

そして、ジャケットにはRyuの実父でありイタリア在住の画家、松山修平の絵画を使用している。イタリアと日本、ポップミュージックとオルタナティブ、あるいはアートなど、つねに自分の中にあるさまざまなボーダーラインと向き合ってきたRyuが、本作に『Borderland』と名付けたのはなぜか? 北欧出身のアーティストの歌に惹かれてきたルーツも含め、あらためて彼のバックグラウンドをひも解きながらその理由を探った。

Ryu Matsuyama(りゅう まつやま)<br>ピアノスリーピースバンド。イタリア生まれイタリア育ちのRyu(Pf,Vo)が2012年に「Ryu Matsuyama」としてバンド活動をスタート。2014年、結成当初からのメンバーであるTsuru(Ba)にJackson(Dr)を加え現メンバーとなる。
Ryu Matsuyama(りゅう まつやま)
ピアノスリーピースバンド。イタリア生まれイタリア育ちのRyu(Pf,Vo)が2012年に「Ryu Matsuyama」としてバンド活動をスタート。2014年、結成当初からのメンバーであるTsuru(Ba)にJackson(Dr)を加え現メンバーとなる。

イタリア人はこうしてオンラインで会話しても、ストレス解消にはそれほどならないと思うんですよね。

―今のイタリアの状況を、家族や友人から聞いたりしてますか?

Ryu:連絡を取って聞いてますけど、あまり実感が湧かないんですよね。でも、もし僕がまだイタリアに住んでいたら日本にいるよりも大きなストレスを感じていたとは思います。イタリアは、人とのコミュニケーションのあり方がより密なものだから。

―日常的な抱擁であったりコミュニケーションの濃密さが感染の急速的な広がりの要因になったという見方もありますよね。

Ryu:それは絶対にあると思いますよ。いつもと同じコミュニケーションを取れなくなったことに一番のストレスを感じているらしいので。

その点、日本はよくも悪くも上辺の関係性が多いじゃないですか。そこに日本人の気質としての美しさを感じたりもするんですけど。でも、イタリア人はこうしてオンラインで会話しても、ストレス解消にはそれほどならないと思うんですよね。そういう意味でも、うちの親はマンションに住んでたのがよかったなと。

―というのは?

Ryu:マンション内では非感染の人たち同士で会ってるらしくて。もちろん、外出はほとんどしてないらしいですけど。買い物ですら大変だと言ってましたから。家族は全員無事なんですけど、オーストリアとロンドンにいる兄弟もいるのでみんな大変だし心配ですね。

Ryu
Ryu

どんなにラブソングを書いたとしても「自分は何者なんだろう?」という歌になる。

―あらためて、Ryuくんがイタリアで生まれ育ったことで音楽家としての自分に影響を与えてるところがあるとすれば、どんなことだと思いますか?

Ryu:たぶん前のインタビュー(参考記事:バンド・Ryu Matsuyamaに取材。そのルーツにある「痛み」の正体)でもお話させてもらったと思うんですけど、自分のアイデンティティはイタリアなのか、日本なのか、どこに属しているかわからないおかげで今の自分があると思っていて。それが歌詞のテーマにもなっていると思います。

―歌詞は本当に一貫してますよね。ずっと人の成長について歌っているなと。

Ryu:そうですね。ラブソングを書こうと思ってもそっちに帰ってきちゃうなと毎回思います。何も変わってないですね。アイデンティティを探しまくる旅を続けてる人、みたいな。どんなにラブソングを書いたとしても「自分は何者なんだろう?」という歌になる。

―そのテーマは今後も不変だと思う?

Ryu:イタリアから日本に来て10年経ったんですよ。それでも変わってないから変わらないんだと思います。日本にいる外国人みたいな自分の一面も自覚しているし、イタリア人がいたら話しかけたくなりますし、懐かしい感覚になります。あとは自分の愛情表現は人に驚かれますよね(笑)。

―たとえば?(笑)

Ryu:好きな人に対して「Oh! I love you!」という状態がずっと続いてるみたいな感覚があって。そこはイタリア人っぽくてよかったなって思います(笑)。

―でも、複数人でいるときのRyuくんは気遣いの人で、日本人っぽいなと思いますけどね。だからイタリアサイドのRyuくんがちょっと想像しづらいというか(笑)。

Ryu:集団になるともしかしたら「日本人といる」という感覚に自分をアジャストしているかもしれないですね。日本人であるべきなんじゃないか、という。でも、それは自分にとって自然だし、いいことだと思ってます。

僕は先輩後輩の礼儀みたいなことをBase Ball Bearのホリさん(堀之内大介)から教えてもらったんですけど。それが身についてるんだと思います。ホリさんとは日本に来てすぐに出会ったんですけど、すごくいい意味で僕をイタリア人として捉えてくれてると思うんですよ。そのうえで「日本ではこうだよ」って教えてくれる。でも、GARAGE(Ryu Matsuyamaのホームグラウンドであるライブハウス、下北沢GARAGE)でいろんなミュージシャンとダベってるときはイタリア人でいられる感じがあるんですよね(笑)。

Ryu Matsuyama『Borderland』を聴く(Apple Musicはこちら

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リリース情報

Ryu Matsuyama『Borderland』
Ryu Matsuyama
『Borderland』(CD)

2020年4月29日(水・祝)発売
価格:3,000円(税込)
VPCC-86309

1. Step over
2. Boy
3. Go Through, Grow Through
4. 愛して、愛され feat. 塩塚モエカ(羊文学)
5. Blackout feat. mabanua
6. Sane Pure Eyes (Alternative Mix)
7. No. One
8. Heartbeat
9. Friend

プロフィール

Ryu Matsuyama
Ryu Matsuyama(りゅう まつやま)

ピアノスリーピースバンド。イタリア生まれイタリア育ちの Ryu(Pf,Vo)が2012年に「Ryu Matsuyama」としてバンド活動をスタート。2014年、結成当初からのメンバーであるTsuru(Ba)にJackson(Dr)を加え現メンバーとなる。

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