退職代行の生みの親・新野俊幸が肯定「幸せのために辞めていい」

退職代行の生みの親・新野俊幸が肯定「幸せのために辞めていい」

インタビュー・テキスト・編集
石澤萌(CINRA.NET編集部)
野村由芽(She is編集部)
撮影:鈴木渉

2017年5月にはじめて世の中に登場してから、「会社に行かずに辞められる」という画期的なサービス内容で話題になった退職代行サービス。事業者も今では30社ほどに増え、利用者数は推定3万人とも言われているほどの規模となったが、誕生のきっかけはひとりの男性が抱いた「働くこと」への絶望だった。

今回、退職代行の生みの親であり、退職代行会社「EXIT」を営む新野俊幸にインタビューを敢行。長時間労働、過労死、セクハラ、パワハラ……今日に至ってもさまざまな労働問題が生まれる日本で、この2年半、すべての働く人に寄り添いつづけてきた新野は、働くこと、そして辞めることをどう捉えているのか? 本当に幸せな働き方とは何なのか考えた。

自分は「辞めます」って言えたけど、言えない人もいるかもしれない。逆に、言えた僕は幸せだったんじゃないかな。

―まずは、退職代行サービスをはじめたきっかけを教えていただけますか?

新野:自分自身、辞めることが本当につらかった経験から思いつきました。新卒で入社した会社で、毎日のように怒鳴る上司の下につくことになったんです。その人は40歳くらいで、たぶん僕がはじめての部下だったというのもあって教育のために怒鳴っていたんですけど、それがきつかった。

実は、僕は家庭環境がそんなによくなくて、食卓で母親が毎日叫ぶような感じだったんです。いつも父に対して「あんたなんか出て行きなよ!」ってすごい形相で怒っていた。今考えたら、母にも事情があったのかもしれないけど……そうした経験から、だれかが怒鳴ったり叫んでいるのがトラウマで。働いていても怒られれば怒られるほど何もできなくなるし、仕事も成果が出ないし、「自分は何にもできない無価値な人間なんだな」という精神状態になってしまったんです。朝も、会社が近づくたびに吐き気を催してしまうので、新卒1年目にして毎朝グリーン車で通勤してました(笑)。

新野俊幸(にいの としゆき)<br>平成元年、神奈川県鎌倉市に生誕。大学卒業後、とりあえず大手に就職するも1年で退職。暗黒のニート時代を経て、また大手に就職するが、やはり1年で退職。会社をやめる際、両親や上司に猛反対され精神的な苦労を味わったことから、日本独特の「やめる=悪」という空気感に問題意識を持ち、「退職代行」を発明。日本中で大流行させる。この世から退職できずに悩む人をなくしたい。
新野俊幸(にいの としゆき)
平成元年、神奈川県鎌倉市に生誕。大学卒業後、とりあえず大手に就職するも1年で退職。暗黒のニート時代を経て、また大手に就職するが、やはり1年で退職。会社をやめる際、両親や上司に猛反対され精神的な苦労を味わったことから、日本独特の「やめる=悪」という空気感に問題意識を持ち、「退職代行」を発明。日本中で大流行させる。この世から退職できずに悩む人をなくしたい。

―自己肯定感も下がってしまって、かなりつらい経験だったんですね……。

新野:ただ、自分の家庭環境も理由のひとつだけど、会社という組織が引き起こしてしまう部分もあると思っていたんです。会社の同僚と居酒屋で話すときも、吐きながら頑張っている人もいて。吐きながら働くってどういうことだ? と思うんですけど、それでもみんな「辞める」という行動に移せない。

自分はぎりぎりの状態でも何とか「辞めます」って言えたけど、言えない人もいるかもしれない。逆に、言えた僕は幸せだったんじゃないかなと。その頃は実家暮らしで、会社を辞めても生きていける環境で、給料も悪くなかったので貯金もあった。じゃあ、ひとり暮らしをしていて給料も低い人は仕事がつらくても辞められないと考えたら、極端な話、中には自殺を考えてしまう人もいるし、見過ごせないと思いました。そういう人をサポートしたいと思って始めたのが、退職代行です。

―新野さん自身が当事者となって生まれたサービスなんですね。退職代行を利用するユーザーは、どういう方が多いんですか?

新野:辞めたことがないから、不安すぎるっていう人が多いです。中には想像を絶する経験をしている人もいて、聞いてる側からしたら「どう考えても辞めたほうがいいでしょ!」と思うけど、相談の時点では本人も迷っている。だからこそ僕らが「大丈夫ですよ」と支えてあげる。退職代行ってメンタル面のケアも含んでいるんですよね。とくにEXITはそこを重要視しています。

―転職未経験者が多い?

新野:メインユーザーは20代前半の男性で、1社目の方が多いです。男性のほうが多いのは、上司からの当たりが強く、追い詰められやすいのかもしれません。

新野俊幸

―印象的だった退職の理由、辞めた人の声はありますか?

新野:たとえば、小さなミスでも必要以上に怒られるから、やりたい仕事ではあったけど身動きが取れなくなってしまった方や、建設現場で親方にクレーンで吊るされた方とか。現場では、殴る蹴るは当たり前で。

―クレーンですか!?

新野:そういった現場仕事の方もたくさん利用していただいてますね。あとは、部署の課長にセクハラをされていた女性が、そのことを部長に相談したら真摯に聞いてくれたけど、いざ部長と1対1で面談するときに部長にキスされてしまって……相談した人にセクハラされるっていう地獄のような話もありました。

―人としての尊厳が失われてしまうような、絶望的なお話ですね……。

新野:聞いていてもつらかったですね。しかもそういう会社って、同僚に相談したりすると、だいたい同僚もチクったりするじゃないですか。「あの人、セクハラされたって言ってましたよ」って。それでさらに厳しく当たられて。でも、そういう本当につらいときに利用してもらえるのがありがたいんです。「よくぞ連絡してくれました、今すぐ辞めましょう!」って言えるので。

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新野俊幸(にいの としゆき)

平成元年、神奈川県鎌倉市に生誕。大学卒業後、とりあえず大手に就職するも1年で退職。暗黒のニート時代を経て、また大手に就職するが、やはり1年で退職。会社をやめる際、両親や上司に猛反対され精神的な苦労を味わったことから、日本独特の「やめる=悪」という空気感に問題意識を持ち、「退職代行」を発明。日本中で大流行させる。この世から退職できずに悩む人をなくしたい。

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