グラミー賞ノミネートも話題に 名門を虜にした挾間美帆の能力

グラミー賞ノミネートも話題に 名門を虜にした挾間美帆の能力

テキスト
小室敬幸
編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

クラシックやジャズの枠で括れない。狭間の豊穣な音楽性

彼女はニューヨークを拠点にしつつ、ヨーロッパ各国、そしてもちろん日本をはじめとするアジアにも活躍の場を広げている。しかも仕事先はビッグバンドだけではない。日本を代表する吹奏楽団シエナ・ウインド・オーケストラや、地方オーケストラの雄オーケストラ・アンサンブル金沢(2019年度)では「座付き作曲家」とも訳されるコンポーザー・イン・レジデンスを務め、クラシック音楽の演奏家から作曲依頼も絶えない。昨年8月からは、「シンフォニック・ジャズ(オーケストラが演奏するジャズ)」をテーマにしたコンサートシリーズもプロデュースし、ここでも「過去」「現在」「未来」という視座をもった企画をおこなっている。

だからこそ、グラミー賞の「最優秀ラージ・ジャズ・アンサンブル・アルバム部門」にノミネートされたアルバム『ダンサー・イン・ノーホエア』も、メディアに取り上げられた際には「ジャズとクラシックの融合」という側面が強調されていた。もちろん、それも挾間の音楽およびこのアルバムの魅力の1つではあるが、なにもクラシック音楽的な要素だけが前面にあらわれたジャズではないことも強調しておく必要があるだろう。

挾間美帆『ダンサー・イン・ノーホエア』を聴く(Spotifyを開く

わかりやすい例だけを挙げても6曲目の“マジャール・ダンス”のようなハンガリーの民族音楽からインスパイアされた楽曲もあれば、映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムズの手掛けた名曲“ロサンゼルス・オリンピック・ファンファーレ&テーマ”をミニマルミュージックのように再構築した音楽もある。そうした多種多様な異なる要素が、喧嘩することなく共存。統一感をもった1つのアルバムとして昇華されていることにこそ、挾間美帆という作曲家の凄みがあるような気がしてならない。そして、だからこそジャズやクラシックという枠組みだけで捉えてしまうのがもったいない。ぜひ、この豊穣な世界をジャズやクラシックに興味がないという方にもお楽しみいただきたい。実は誰よりもそう願っているのは、挾間自身なのである。

『ダンサー・イン・ノーホエア』ジャケット
『ダンサー・イン・ノーホエア』ジャケット(Amazonで購入する
Page 2
前へ

リリース情報

挾間美帆『ダンサー・イン・ノーホエア』
挾間美帆
『ダンサー・イン・ノーホエア』(CD)

2018年11月21日(水)発売
価格:3,300円(税込)
UCCJ-2162

1. トゥディ、ノット・トゥディ
2. ザ・サイクリック・ナンバー
3. ラン
4. ソムナンビュラント
5. イル・パラディーゾ・デル・ブルース
6. マジャール・ダンス
7. ロサンゼルス・オリンピック・ファンファーレ&テーマ
8. ダンサー・イン・ノーホエア

プロフィール

挾間美帆
挾間美帆(はざま みほ)

国立音楽大学(クラシック作曲専攻)在学中より作編曲活動を行ない、これまでに山下洋輔、モルゴーア・クァルテット、東京フィルハーモニー交響楽団、シエナウインドオーケストラ、ヤマハ吹奏楽団、NHKドラマ「ランチのアッコちゃん」、大西順子、須川展也などに作曲作品を提供。また、坂本龍一、鷺巣詩郎、グラミー賞受賞音楽家であるヴィンス・メンドーサ、メトロポール・オーケストラ、NHK「歌謡チャリティコンサート」など多岐にわたり編曲作品を提供する。そして、テレビ朝日系「題名のない音楽会」出演や、ニューヨーク・ジャズハーモニックのアシスタント・アーティスティック・ディレクター就任など、国内外を問わず幅広く活動している。

Category カテゴリー

Latest Articles 最新の記事

What's "Fika" ? フィーカとは

「Fika」はCINRA.NETとVOLVOが送る、北欧カルチャーマガジンです。北欧デザインの思想の基盤を「クラフトマンシップ×最先端技術」と捉え、そこに学びながら、これからのカルチャーやライフスタイルにまつわるコンテンツをお届けします。